出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2018/03/20 03:37:29」(JST)
化学的酸素要求量(かがくてきさんそようきゅうりょう、COD, Chemical Oxygen Demand)とは、水中の被酸化性物質を酸化するために必要とする酸素量で示したものである。代表的な水質の指標の一つであり、酸素消費量とも呼ばれる。
CODは排水基準に用いられ、海域と湖沼の環境基準に用いられている[1]。CODの値は、試料水中の被酸化性物質量を一定の条件下で酸化剤により酸化し、その際使用した酸化剤の量から酸化に必要な酸素量を求めて換算したものであり、単位は ppmまたはmg/Lを使用する。被酸化物質には、各種の有機物と亜硝酸塩、硫化物などの無機物があるが、おもな被酸化物は有機物である。そのため、CODが高いほど有機物量が多いといえる。類似した指標にBODがあるが、BODとの違いは、CODが有機物と無機物、両方の要求酸素量であるのに対し、BODは生物分解性有機物のみの酸素要求量であるという点である。また、CODは30分~2時間程度の短期間で求められるのに対し、BODは長い時間(20度の暗所に5日間保存)を要するため、CODがBODの代替指標として用いられることもある。
有機物が多く水質が悪化した水ほどCODは高くなるが、還元性の無機物によってもCODは高くなるため一概に水質が悪いとは言い切れない。また、酸化剤の種類と濃度、酸化時の温度や時間、有機物の種類や濃度によっても測定値が異なることがあるため、一義的にCODを比較することは難しい。
日本の環境基準等において使用される酸化剤は、測定に長時間を要するBODの代替指標との意味合いから、比較的酸化力が弱く生物分解性有機物の酸化に近い過マンガン酸カリウムによる酸性高温過マンガン酸法(CODMn)が採用されている。
これに対して、有機物全量を推定するものとして、強力な酸化剤である二クロム酸カリウムによるCODCrがある(ちなみに二クロムの冒頭の二は数字の2の漢字表記。かつては、重クロム酸カリウムと呼ばれた)。
日本においてCODMnを採用したことには、生物分解不可能な有機物質は「酸素消費」という環境問題の原因物質でないことから、環境基準をはじめとして環境規制の対象としなかったとの経緯がある。また、典型的な環境問題、公害問題として六価クロム汚染があるなか、この六価クロム(二クロム酸カリウムはその一つ)を使用する測定方法を採用しにくかったこともCODMn採用の消極的理由とされる。このように、様々な解釈や評価のあるCODMnであるが、特にCODMnと長期間BOD(例えばBOD20)などとの間には、その水中の物質、物質構成によってはその測定値に相当の開きがあることもあり、その代替指標性について疑問が呈せられる場合がある。
また、有機炭素を簡易に測定できるTOCが普及したことにより、CODCrに替わり特に学術的にはTOCが全有機物を表す指標として採用される状況にある。
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