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熱傷 | |
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分類及び外部参照情報 | |
手に出来た、天ぷら油による熱傷
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ICD-10 | T20-T31 |
ICD-9 | 940-949 |
MeSH | D002056 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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熱傷学会 | |
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日本 | 日本熱傷学会 |
世界 | International Society for Burn Injuries |
熱傷(ねっしょう)とは、お湯や油などの熱により生じる損傷を言う。通称はやけど(火傷)。 化学薬品・放射線などが原因で生じる組織の損傷は化学損傷という。
化学熱傷(chemical burn)・化学損傷(chemical injury)は、薬傷とも称され、酸、アルカリなどの化学薬品による損傷。数時間にわたって徐々に組織が壊疽(gangrene)するのが特徴。
人体を含め多細胞生物の細胞はごく限られた環境でしか生存できないので、化学物質に晒されて体表の細胞の機能が損なわれると結果として熱傷と同じ状況になる。粘膜以外の皮膚表面では角質層に覆われている為、付着した量や角質層に対する透過性の差が化学的腐食の強度の差として現れる。
電撃傷(electrical injury)は、電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。また、組織が出す水蒸気により、内部からの水蒸気爆発により損傷する。
重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右される。交流電源は直流電源より危険度が高い。筋損傷、血管損傷、心停止(心室細動)のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。
放射線熱傷(radiation burn)は、放射線被曝による損傷。高線量の放射線により皮膚を構成する細胞や血管が傷害され、熱傷に類似した症状を呈する。「核焼け」とも言われ、チェルノブイリ原子力発電所事故で消火活動に当たった消防士に見られた。
日焼けも厳密に言えば熱傷である。太陽光線に含まれる紫外線(UVA、UVB)に被曝すると、皮膚組織の破壊が起こる。日焼けといえども、照射時間・範囲のいかんによっては重態になりかねない。
また放射線の熱傷は染色体破壊など遺伝子レベルで損傷を受けていることがしばしば見られる。
温熱熱傷の1つ。低温熱源による熱傷。長時間の低温熱源の直接接触により受傷する。
接触部の温度が44℃だと約6 - 10時間で受傷する。
また44 - 51℃までのあいだは接触する温度が高くなるにつれて受傷する時間が短縮される場合もある。低温熱源とは湯たんぽ、懐炉、ストーブ、ホットカーペットなどおもに暖房器具。受傷者側の要因としては、熟睡していたり体が不自由であったり、知覚麻痺、泥酔、一酸化炭素中毒、糖尿病による循環不良、などの状態にあると受傷しやすい。
また、ホットカーペットに幼児を寝かせ毛布をかぶせると熱中症にかかりやすいなど、暖房器具によるけがは多い。ノートパソコンの使用に伴い、ひざに乗せることで本体底面部からの放熱でひざが、またキーボードやパームレスト部からの放熱で手のひらが、低温熱傷にかかる報告がある。
低温熱傷は極端に熱源の接触時間が長いため、発赤や水疱形成だけに見えても深部に深い損傷を負っていることが多い。睡眠時は痛みに気づかないため深達性II度(DDB)まで傷を負い、さらに進行性に深くなりIII度(DB)まで達することもまれにはある。深くなる理由としては、皮膚の血流量より脂肪層の血流量が少なく、皮膚の血流で受傷した創が冷やされて軽症に見えても脂肪層では血流により冷却されないことが挙げられる。
熱傷の重症度は、その深さと面積で決定される。
皮膚は表皮と真皮からなる。熱傷の深さは皮膚のどの層まで損傷が及んでいるかで表される。
深度 | 傷害組織 | 外見 | 症状 | 治癒期間 | 瘢痕 |
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I度 (EB:epidermal burn) |
表皮・角質層まで | 発赤、充血 | 痛み、熱感 | 数日 | 残らない |
浅達性II度 (SDB:superficial dermal burn) |
表皮・有棘層、基底層まで | 水疱、発赤、腫れ、湿潤 | 強い痛み、灼熱感、知覚鈍麻 | 約10日間 | 残りにくい |
深達性II度 (DDB:deep dermal burn) |
真皮・乳頭層、乳頭下層まで | 浅達性II度とほぼ同じだが、やや白くなる。 | 浅達性II度とほぼ同じだが、知覚鈍麻が著しい | 2週以上 | 残りやすい |
III度 (DB:deep burn) |
真皮全層、皮下組織 | 壊死、炭化、乾燥、白い | 無痛、知覚なし | 1ヵ月以上 | 残る |
SDB、DDBは水疱を作る点で共通であるが瘢痕を残すか残さないかの点で予後が異なる。皮膚が薄い場合、初期の判定が困難で、受傷後数日から2週で判別するケースもある。通常、ピンセットなどで患部を圧迫し、ピンセットを離した時白くなった部位が元に戻ったらSDB、そのまま血流が滞り白かったらDDBである。また一般論としてDDBから植皮を治療法として検討するが、救命や感染対策以外の目的で手術をおこなう場合は、年齢・部位・面積・社会的背景などを考慮する。
DDBとの見極めは受傷後数日あるいは手術時に判明するケースもある。 日本熱傷学会では熱傷深度をI・II・III度と分類する。日本熱傷学会でいうIII度熱傷をIII・IV・V度と細分化して表記する場合もみられる。
熱傷面積にI度熱傷は含めない。熱傷面積はII・III度熱傷で計測する。単位は%BSA。BSA:body surface areaでburn surface areaではない。
熱傷面積を大まかに計測する方法として以下の法則がよく知られている。
II度以上の熱傷面積が成人の場合20%、小児の場合10%を超えると重症化するため、速やかに医師の処置を受けねばならない。
精密な熱傷面積の計測にはLund&Browderの法則が使用される。
火災などで高温の気体やススを吸い込んだ場合、上気道や気管に熱傷を負うことがあり、これを気道熱傷、気道損傷 (Inhalation Injury) と称する。熱傷を負った気道は徐々に浮腫を起こして狭窄し、呼吸ができなくなるため非常に危険である。気道の熱傷は外見からはわかりにくいので特に注意が必要である。気道熱傷のおそれがある場合は一見全身状態が良くてもあとから気道狭窄を起こす場合があるため挿管の必要がある。狭窄を起こしてからでは挿管は困難もしくは不可能となるためである。
気道熱傷の可能性を示す徴候として、口腔・鼻腔のススの付着が挙げられる。
患部を1秒でも早く、水で、冷やすことが推奨される。 手近にあるコップの水でもお茶でもまずかけること。その後も流水(水道水)で冷やし続けることが望まれるが、それができないときは濡れタオルで冷やしても良い。15分ほど冷やしたら速やかに医師の診察を受けること。自己判断の治療(ジャガイモやアロエなど)は以後の治療の妨げになるので避ける。
消毒・洗浄・温浴を施しながら、経過を診る。
鎮痛処置(クーリング指導や消炎鎮痛剤処方)と熱傷創の保護をおこなう。抗生剤含有ステロイド軟膏を塗布あるいは処方することもある。数日で治癒する。
患部を湿潤環境で保護し、上皮化(皮膚の再生)を待つ。具体的にはハイドロコロイドなどの被覆材を貼る。幼児では熱傷創の状態に関係なく被覆材で熱傷創を密封した場合、発熱をみる頻度が高い。
基本的にSDBと同じであるが、広範囲にわたる場合は植皮を考慮する。全周性のDDBには減張切開をおこなう。
デブリードマン(壊死組織を除去する)が第一選択である。広範囲であれば植皮の適応となるが、小範囲であれば湿潤環境で保護し周囲からの上皮化を待ってもよい。全周性のIII度熱傷には減張切開をおこなう。
また、III度以上の真っ黒に炭化した熱傷をIV度、V度と呼ぶ医師もいる。広範囲重症熱傷における植皮については、自分の別の部位の皮膚を使う自家皮膚移植が最も勧められるが、それでも熱傷部分をカバーしきれない部分はスキンバンクから取り寄せた凍結同種皮膚移植により創部の保護・感染予防を行なうこともある。
II度以上の熱傷面積が成人の場合20%、小児の場合10%を超えると全身状態が悪化するため、入院治療が必要である。
広範囲熱傷では細胞外液が急速に喪失し、脱水による低容量性ショックが起こる。これに対し乳酸リンゲル液の大量輸液が行われる。 必要輸液量は患者の体重を元に計算する公式が用いられ、 代表的なものにはParkland法などがある。急速なサイトカインの流出による浸透圧の変化に対応するべく コロイド溶液、アルブミン製剤を用いる輸液法もある。
また、広範囲熱傷では全身性炎症反応症候群(SIRS)や創感染が起きやすく、遷延すると多臓器不全を引き起こすため、これらの制御を目標とした集中治療が行われる。
II度熱傷面積が小児で15%以上、成人で30%以上のことを言う。一般に輸液療法の絶対的適応である。
体表が化学的腐食を受けた場合、初めになすことは水で15分以上洗い流すことである[2]。水溶性が低くても連続的に洗い流されることによって、付着物の濃度が下がり熱傷の拡大をふせぐことができる。中和などの試みは、まず効果を上げることは無く、かえって熱傷を拡大させる。
呼吸器が冒された場合は、直後には症状が現れなくとも、数時間後に肺水腫となり致命的になる場合があるので、軽度でも医療機関の治療を受けるべきである。
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