出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/08/17 23:21:37」(JST)
出入国管理(しゅつにゅうこくかんり)とは、国境や空港、港など、人が異なる国家間を出入りする場合に、当該国(政府)がその出入国を管理・情報把握することをいう。物品の出入りについては手荷物検査などが出入国検査に付随して行われるが、貿易など物品の出入りのみを目的とする場合は「出入国」とはいわず「輸出入」というのが普通である。
英語ではImmigration ControlもしくはImmigrationと呼び、これをそのまま読んだ「イミグレーション」、それを略した「イミグレ」はこのまま日本語化している。
現代では地球の裏側など生態系の大きく違う地域間で人や物資の移動が可能になったため、生態系を大いに擾乱する可能性のある生物(特に病原体)の移動を水際で阻止することは、出入国管理の重要な目的の一つである。特定の感染症が流行している地域との間では、渡航制限が敷かれたり、感染の疑いがある場合は上陸不許可となったりすることがある。
国家間で経済格差が大きい場合、大量の移民希望者が生じることがある。しかしその数が多い場合、渡航先国民の失業や住宅不足などの問題を引き起こすことがあり、この観点から移民を一定数に制限する国が多い。
上記の必要項目3つをCIQ(Customs・Immigration・Quarantineの略)と呼ぶ。
この節はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点からの説明がされていない可能性があります。ノートでの議論と記事の発展への協力をお願いします。(2013年12月) |
日本では、在日米軍将兵は、日米地位協定により、米軍施設(空軍の飛行場、海軍や海兵隊の軍港)を通じてであれば軍人IDカードのみで以下の手続きを経ることなく自由に出入国できる。また、日本を含む一部の国では空港の制限区域から出ない限り国際線航空機同士を入国手続無しで乗り継ぐことができる。
旅券(パスポート)は旅行者の国籍のある国の政府が発行する出入国管理の際に提示を要求される国籍・身分証明書であり、出入国管理記録帳としての性格ももつ。ほぼ全ての国において旅券の所持は出入国の際に必須である。日本国においては、旅券は各都道府県の旅券窓口又は在外公館で申請して取得する。 また、区役所のパスポートカウンターでも可能である。
なお、国際条約などに明文があるわけではなく、したがって、すべての国で適用されるとはいえないものの、国際的な慣例として、おおむね国家元首(原則各国1人)は出入国審査の対象外(国王はもともと旅券を作成しておらず、大統領は旅券を携行するが使わない)とされている。しかし、王族や閣僚(首相も含む。)の場合は、元首でないため、公用渡航であっても旅券への許可記載等の手続を必要とする例が多いとされる(本人はいわゆるVIPルート、つまりターミナルに入らずに済む道を通る。また、日本の首相の公用渡航の場合は、通常、羽田空港から政府専用機が使われ、同行の官吏が事後に代理申請する)。日本国においても天皇以外の皇后を含む皇族は旅券の発給を得て渡航している。
査証は渡航先の国に入国する際に必要となる証明書で、渡航前に渡航先の国の在外公館に申請して取得する。査証は、通常、旅券に押印または貼付される。査証を事実上の入国許可とみなして入国審査時にほとんど拒否処分をしない制度の国(出入国管理の法令をいわゆる大陸法方式で定めた国に多い)と、査証を入国の「推薦文書」に過ぎないとして改めて厳格な入国審査を行う制度の国(出入国管理の法令をいわゆる英米法方式で定めた国に多い。日本国はこちらに含まれる)があり、後者の国に渡航する者にとっては、査証取得はかならずしも入国の保証とはならない。
入国審査の許否は建前上は法令に基づいて行われるが、現実には、「挙動が不審である」などそのときに担当した審査官の心証がきっかけとなって、不法入国や不法就労が目的であると判明、入国不許可処分により国外退去となるような例も少なくない。
国際的な往来が増えた現代にあっては、各国間で査証相互免除協定が結ばれる例が増えており、その場合は、前もって渡航予定先国の在外公館で査証を取得していなくても、(入国審査まで免除とはならないが)短期間の滞在希望者に限り入国許可が可能となる。
入国(入境)する前に審査を行い、許可を認められた者が入国できる。国籍を有する者が外国から帰国する際にも入国審査を通過する必要がある。入国審査では入国目的や滞在期間などの試問が行われる(ここで目的や滞在先が曖昧であるなどによって不法入国しようとしていると発覚することもある)。また、税関審査や検疫を受ける。
島国である日本に外国人が入国する場合は入国審査官によって上陸審査を受け、上陸拒否事由に当たらないことを確認した上で上陸許可を得なければならない(通常は旅券に上陸許可シールが貼付される)。2007年11月20日よりJ-VISが導入された。
アメリカ国土安全保障省は、2009年1月12日より、航空機又は船舶で入国する査証免除プログラム対象国からのアメリカ入国者に対しても、出発72時間前までにインターネットを用いて氏名・パスポート番号・国内での滞在先を申告させ、手数料を徴収する「ESTA」を義務付けた。申告内容はI-94W審査カードと同一。
入国前に事前審査を行う場合もあり、ガルーダインドネシア航空では、搭乗者に対して機内においてインドネシアの事前入国審査を、かつては大韓航空、アシアナ航空が搭乗者に対して、成田空港で韓国の事前入国審査を行っていた。事前入国審査を行った場合、到着時専用の入国レーン(主に、クルー、外交官用レーン)を通過することができる。いずれも希望者のみで、事前審査を受けずに、到着後に通常の入国審査を受けることもできる。
アメリカ同時多発テロ事件以後、現在に至るまで世界各国の入国審査が厳しくなる傾向が続いている。2012年現在においては、アメリカや日本国、韓国、マレーシア[1]で、入国審査時に生体情報の取得(顔写真撮影や指紋採取とデータベースへの登録)が行われるようになっている。これら顔写真や指紋などの生体情報を入国審査時に取得する国家では、過去の犯罪歴や要注意人物の生体情報データベースと照合を行った上で、厳格な審査によって入国許可の可否が決定されている。
国を出国する際にも同様の審査が行われる場合がある。出国する人物の把握および確認のために、有効な旅券や各種様式の書類の提示が求められる。犯罪歴の有無や係争中の裁判の被告人、あるいはその他の理由などで出国の制限を受ける場合があり、それらの判断基準は国によって異なる。
日本国の場合、出国する際には、日本人・外国人に関わらず出国審査を受ける必要がある。
入国審査官に有効な旅券(パスポート)あるいは上陸許可証を提示したうえで、入国審査官から出国の確認を受け、パスポートにそのことを証明する捺印を受けなければ出国してはならないとされている。なお、出国審査を経ずに日本国を出国する行為は“密出国”で刑事罰の対象となる(出入国管理及び難民認定法71条)。
以前は、パスポート以外に出・帰国記録(EDカード)に住所・氏名や渡航先などを記入し、審査の際に提出する必要があったが、日本人については平成13年7月1日以降不要となっている[2]。なお、外国人の場合は、現在でも出入国の際にEDカードへの記入・提示が必要である。
なお、学校の修学旅行など団体旅行の場合、事前出国審査を受けることが可能である。この場合、あらかじめパスポートに出国日の日付のある出国審査印が押印され、出国当日は職員専用通路で事前に渡される「事前出国審査済み証」を入国審査官に渡せばよい。また、海外にある一部CAT(シティエアターミナル)では、併設された出入国管理事務所において事前に出国審査を受けることが出来る。
滞在許可はほとんどの国でいくつかの種類に区分されている。
手続きの簡素化、迅速化を目的に、従来有人で行っていた出入国審査を自動で行う、自動化ゲートの設置が各国で進んでいる。利用には、事前に指紋や顔写真等の個人情報を登録する場合(出入国管理局のデータベースに登録される)と、ICパスポートのICチップに登録された情報を利用する場合がある(前者の場合、ICパスポートでなくても利用可能)。日本(J-BIS)や香港(e-道)、マカオ、韓国、台湾、タイ、オーストラリアやニュージーランド(Smartgate)などで、空港や陸路のチェックポイントに設置されている。通常、自国民であれば原則的に利用することができるが、外国人については、各国ごとに対応が異なっている。(タイは自国民のみ。日本や台湾などは、外国人登録済みの外国人であれば利用可能。韓国は永住権所持者など一部のみ。香港は条件を満たした非居住外国人も利用可能)
また一部では、相手国の自動化ゲート登録者を対象に、自国の自動化ゲートの利用を可能にする相互協定が結ばれており、現在、米韓、韓港間で行われている(Smart Entry Service)。ただし、自動化ゲート登録手続きは、各々行う必要がある(各国でデータは共有されていないため)。
ほとんどの国において出入国審査場は撮影禁止である。また、携帯電話の利用も禁止されている。理由として、密入国するための参考資料にされることを防ぐためだとされている。
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