出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/02/22 17:45:21」(JST)
不登校(ふとうこう)は、学校に登校していない状態のことである。日本における「不登校」の語については、研究者、専門家、教育関係者らの間に全国的に統一した定義がなくきわめて多義的である。
なお、「統計法」に基づく「学校基本調査」における「不登校」、および行政用語である「不登校児童生徒」については、不登校 (理由別長期欠席者数)の項目を参照のこと。また、在学者の不登校問題については、長期欠席の項目を、非在学者の不登校問題については、「不就学」の項目を参照のこと。
目次
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「不登校」とは、登校していないという意味であるが、「欠席」という用語が1日単位で用いられるのに対し、不登校という語は、ある任意(不特定)の時期について使われることが多い。
ただしこれらは、学校の通学課程(全日制の課程・定時制の課程など)の場合で、通信制の課程においては、一ヶ月から一週間に一日程度の面接指導日(出席日)が設定されているような例が多く、日常的に登校する課程ではないので、長期的なものであって、かつ、二者択一とした「登校・欠席」の類型には、当てはめにくい。
かつては不登校は小中学校を対象に使われていたが、現在では高校、大学についても使われるようになってきている。
『「不登校」は学校に登校しない状態のこと』と定義されるが、以下のように分類される。
2のうち、さらに一部が日本政府の公式用語としての「不登校 (理由別長期欠席者数)」にあたる。これを受けて、マスメディアにおいては、不登校全体のうち、「理由別長期欠席者数統計における不登校区分」に当たるもののみに限定して、「不登校」と表記し、それ以外の長期欠席を含めていないことも多いため、注意が必要である。
「就学」とは学校に在籍していることを指し、不登校であっても就学と呼ぶ。なお「非就学」のうち、小学校就学の始期に達していないために就学していない場合は「未就学」と呼ぶ。
状態 | 学籍 | 処理 | 出欠 |
---|---|---|---|
不登校 | 非就学 (学籍なし) |
学籍を得るまで正規の出席はできない。 | |
就学 (学籍あり) |
出席停止 | 欠席とも出席ともみなされない。 | |
欠席 | 連続的な長期欠席 | ||
不登校気味 | 断続的な長期欠席 | ||
登校 | 一過性の欠席(短期欠席) | ||
出席 |
学校制度がない時代は、一生就学しないままの例が大多数だった。学校はあっても、貴族や富裕層など、一部の人しか通えなかった。日本では寺子屋など、欧米では日曜学校など、類似機関はあったが、現代の学校のようなタイプの施設ではなかった。
日本では明治初期に学制が施行され、学齢児童の就学が望ましいこととされた。この時期から徐々に、まったく学校に通わないのこどもの方が少数派となってくる。ただし、就学率は少しずつ上昇したものの、やはり貧困などにより就学できなかったり、途中で学校に通わなくなったりすることが多かった。終戦直後も、混乱により就学できない場合があり、学籍があっても登校できない場合が多かった。これに前後して、A.M.ジョンソンが1941年に論文にて「学校恐怖症」という言い方をした。
しかし高度経済成長期以降は就学率が100%に近くなった。それ以降の日本社会では、6歳ごろに就学し、15歳から25歳ごろに学校生活を終える例が多くなっている。多くの人は、就職するまでは長い期間登校し、就職と共に非就学になる(ただし、大学進学経験者の場合、高校卒業から大学入学までに1年以上の非在学期間があることは珍しくなく、これは過年度生(浪人)と呼ばれる)。しかし1990年代に入ると、就学率は高いままであるものの欠席率が高くなった。
これらの現象は、日本では当初1950年代から報告され、「学校嫌い」や、1960年代ごろからは「登校拒否」とも呼ばれ、その後、折衷的な語を選択して「不登校」と呼ばれるようになった。また非就学者が学校教育を受けられない問題も並行して存在する。これらは次の段落で詳述している。
障害を持つ人の就学については、時代とともに改善されつつあり、現代では重度の障害があっても就学できるようになっている。1979年の養護学校の就学義務化を境に、就学猶予・免除される障害児は激減し、就学率は大幅に向上した。また、一般学校での特別支援教育の力も高まっており、以前なら養護学校(現在の特別支援学校の一部に相当)に通っていたレベルの障害でも、小学校・中学校に通うケースが多くなっている。また、院内学級の制度により、入院中でも教育を受けられるようになったり、場合によっては病院内に学校を設置して、こどもが教育を受けられるようになったりしてきている。発達障害がある生徒の場合、通常より長い教育期間のニーズがあるが、「高等学校」や「特別支援学校の高等部」などの後期中等教育の課程への進学率も高い。
欧米においては、19世紀ごろになると義務教育制度が作られ、就学率が上昇していった。しかし日本と違って、家庭教育(ホームスクーリング)のみで育つ例もそれなりにあった(代表的な例ではトーマス・エジソンなど)。そのため、就学義務ではなく、教育義務を履行するという選択肢がある程度市民権を得ていた。現在は欧米でも、学校制度の発達により、日本ほどではないが、大多数の人が学齢期に学校に通っている。
世界的に生涯学習の時代に入り、就職することと学校に在籍しないことが同一ではなくなり、また成年に達することと学校に在籍しないことも同一ではなくなりつつある。このため、就職中、あるいは高年齢になっても、学校に在籍する選択肢が検討されやすくなっている。
「不登校 (理由別長期欠席者数)」も参照
日本においては義務教育制度が発達しているため、住民票がある学齢期の子女の場合は、自動的に小中学校などの学籍を得られ、就学できる。しかし、その場合でも長期欠席が急増するなど、いわゆる「不登校問題」が拡大し、大きな課題となっている。
理由としては、病気や停学などの物理的要因以外にも、いじめ、学業不振や浮きこぼれなどの教育問題や、家庭の貧困、学校価値の絶対的・相対的な低下に伴う魅力減少、いわゆる統合教育で世話係を無理矢理命じられた結果などがある。
これらのうち、直接的な原因のない長期欠席について、文部科学省は狭義の「不登校」という用語を付与し、それ以外のものと区別している。これについては、「長期欠席」、「不登校 (理由別長期欠席者数)」で詳述している。
とりわけ、従来から知られている、病気や精神的な原因による不登校の他に、「家庭の貧困」による不登校が広く存在することが明らかになってきている。
例えば、東京都板橋区が2009年に公表した調査によると、区立中学校の2006年度の全生徒のうち、不登校の生徒は127人で、発生率は2.41%であった。しかし、生活保護を受ける中学生は、不登校の生徒が52人、発生率は11.58%であり、これは、生活保護を受けない子どもの4.8倍の発生率である。[1]
また、東京都杉並区が2008年に行った調査では、生活保護を受ける中学生70人を調査したところ、不登校の発生率は8.6%であり、前年同期の区全体の不登校発生率2.19%の約4倍であった[2]。
これらの結果は、「中流以上の豊かな家庭の子どもに起こる精神的な問題」という、不登校のステレオタイプに対して、見直しを迫るものである。
一方、日本国籍を持たない子女の場合、自動的には学籍を得られないので、そのまま就学せず、学校に行かないケースが見られる。古くから定住している在日韓国・朝鮮人などの場合は、一条校や民族学校に通う場合も多いが、日本に出稼ぎに来る外国人の場合、子女を学校に入れようとしないケースも多く、また地方公共団体によっては就学に積極的でない場合もある。こちらは、学齢期の外国人の非就学問題といわれるが、あまりマスメディアで取り上げられることはない。
また、日本の初中等教育の課程では年齢主義の影響が強いため、学齢を超過すると小学校・中学校に通うことが難しくなり(特に小学校)、高等学校も「全日制の課程」の場合は、年齢によっては入学しにくくなる。
そのため、長期欠席をした人が学校を卒業してからは、復学サポートの対象にならない上、統計にも表れず(就学率は学齢期のみであり、それ以降は計算されない)、問題の把握がしにくくなっている。
これは学齢超過者の入学拒否問題といわれるが、学齢期の外国人の非就学問題と同様に、あまりマスメディアには注目されない。
不登校の子どもの受け入れ先として、教育委員会の運営する教育支援センター(適応指導教室)が知られている。その他には、一部地域にある夜間中学や、民間のフリースクールが、補助的な形で受け皿となっている。
また高等学校の場合、義務教育でないため不登校が問題にされにくい。たとえば、中途退学という形で、学校からドロップアウトする例があるが、その後の生活にプラスになっていない例もある[要出典]。
また、欠席が多くてもあまり復学支援はないし、小中学校ほどではないが同様に年齢が高くなると入学が難しくなる例もあり、そういった理由での不登校も問題にされにくい。
それらの理由もあって、休学・退学後に復学・再入学しない例が多い。これらの現象は、外国で「教育のウェステージ(損耗)」と呼ばれるものに当たる。
上記のように、就学者の不登校は大きな問題になっているのに対し、非就学者の不登校はほとんど問題視されない傾向がある。学籍がないと、学校側の目が届かないため、行政の対応が難しくなるのである。
派生的な意味であるが、「教師の不登校」も存在する。
学校現場では早期対応、家庭訪問、個別指導などの対応が行われる。 不登校問題が深刻化して以降、学校毎にスクールカウンセラーが配置されるなど専門家による対応が実施されている。 また教室に入れない児童生徒は保健室登校や、教育支援センター(適応指導教室)など学校以外(一部は学校内に設置されるものもある)の教育環境が提供され学習指導などが行われる。
ただし、いじめなどで不登校になった場合、その原因となった人間関係があるために保健室等であっても登校することができないケースやそもそも自宅から外へ出ることができないケースがある。これらの場合は家庭訪問等で対応がなされるが、保健室や教育支援センターでの指導に比べ十分な時間や内容が確保しにくい。
保護者の対応としては、不登校に詳しい臨床心理士、精神科医、学校や行政の担当者などと相談しつつ、専門的に解決していくことになる。
保護者が適切な登校刺激を与えれば、早期の再登校につながる場合もあるが、不適切な登校刺激が事態の深刻化を招く場合もある。 一方で、一見すると不適切とも思える登校刺激により再登校に至った事例もあれば、放置により不登校の長期化する可能性もある。 このように、登校刺激への反応は、生徒によってケース・バイ・ケースであり、複雑である。場合によっては、必ずしも再登校を目標としない選択も考えられる。
保護者などによる暴力的な登校圧力は、教育行政の進歩や、世論の理解、「更生施設」において死者が出たこと等により、現在では推奨されていない。
うつ病、統合失調症、パニック障害などの精神疾患が不登校の原因となっているか、または不登校の過程で精神疾患を併発している場合がある。攻撃的な徴候のある言動をしている場合、精神疾患の疑いで、神経科や心療内科、精神科などへ、出来る限り速やかに通院、または入院させなければならない。
医療機関での対応は、薬物療法や認知行動療法が中心となる。認知行動療法の一環として、ソーシャル・スキル・トレーニング(社会性訓練)を取り入れている医療機関もある。これは、不登校児にしばしば不足しがちな、コミュニケーション技術の向上を図るものである。
とくに、うつ状態は自殺につながるリスクがあり、医療機関での治療をせずに放置することは危険である。
本人に病識が無く、医療機関の受診を拒否することもある。本人の意思を無視した強制的な通院・入院は、新たなトラブルとなる可能性がある。しかし一方で、本人の状態によっては、医療保護入院や措置入院が必要となるかもしれない。いずれにせよ、まずは医師や臨床心理士など、専門家による助言を求めることが不可欠である。
注意欠陥・多動性障害(AD/HD)やアスペルガー症候群などの発達障害、さらには軽度の精神遅滞(知的障害)もまた、不登校に関係している場合がある。これらの疑われる場合もまた、医療機関、専門機関と相談することが望ましい。
進学面での対応としては、とくに小・中学校において、不登校となった生徒を、出席日数と関係なく、学校側が進級および卒業させることが一般化している。
ただし、学校側の対応によっては、不登校により、進級または卒業が認められない事例も、ごく稀ではあるが、起こり得る。この場合、転校するか、留年して通学するか、中学校卒業程度認定試験(中卒認定)や夜間中学校などを経て、高校進学または就職することになる。また、現在では、高認(後述)に合格すれば、中学校を卒業していなくても大学受験は可能である。
不登校の生徒の高等学校進学では、中学校への出席日数の不足を理由に不合格とする高校は、公立、私立ともに(とくに公立高校では)、少なくなってきている[要出典]。
加えて、文部科学省の通知により、現在では、調査書(内申書)の代わりに、自己申告書を用いることが可能となっている。また、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールなど学校外の施設への通所・入所や、自宅においてIT等を活用した学習活動を、要件付きで「出席」扱いとすることが、やはり文科省の通知で認められている。このような措置により、不登校児の入学できる高校の選択肢は、それ以前より広がっている[要出典]。
さらに、調査書(内申書)を必要としないか、調査書を重視しない高校も存在する。単位制高等学校、通信制高等学校、その他支援教育を行う普通学校などが、それである。これらは一般的に、無学年、無学級であり、登校日時も柔軟なため、不登校児童にとって比較的、登校しやすい。また、編入学や高認(後述)の単位認定も容易である。
高等学校卒業程度認定試験(高認)は、その取得により、高等学校を卒業しないまま、大学や短期大学、専門学校の受験が可能になる。しかし高認は、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験」であり、「高等学校卒業の資格」を与えるものではない。このため、就職の際に不利になるケースもあり得る。
また、高校に在学しながらの高認取得も可能である。高校で必要単位を修得した科目は免除されるため、高認を受験する場合でも、何らかの高校に在籍したほうが有利である。高校の全課程を修了すれば、大学への推薦入学も可能になる。これは高認のみでも不可能ではないが、容易さが異なる。
新しい環境を求めて転校を希望する児童生徒もいる。公立学校の場合、いじめなど転校するだけの特別な事由があれば、教育委員会の裁量により、学区外または区域外の越境通学が認められている。
他の自治体の小・中学校へ転校する区域外就学は、居住する自治体と受け入れ先自治体の、それぞれの教育委員会の協議と合意が必要であるが、実際には、受け入れ先の教育委員会が承諾すれば可能である。
私立学校の場合は、特別の事由が無くとも転校が可能だが、全ての学校が不登校理由の転校を理解してくれるわけではない。このため、不登校への十分なサポートの有無も含めて、学校の選定が重要になる。
八王子市立高尾山学園小学部・中学部、京都市立洛風中学校、湘南ライナス学園、星槎中学校、東京シューレ葛飾中学校などは、不登校の児童生徒を対象としており、その実態に配慮した特別の教育課程を編成している[3]。また、このうち、湘南ライナス学園は、LDやAD/HDなどの児童生徒を対象にしている。
自然に囲まれた環境や少人数学級での指導に期待し、山村留学の制度を活用して転校する児童生徒もいる。また、不登校の子どもを積極的に受け入れる山村留学施設もある。
より開放的な教育環境を求めて、中学・高校段階から、主に英語圏への海外留学を選択する不登校児童もいる。
その他、夜間中学校や通信制中学校の利用も考えられる。
学力面での対応では、保健室登校や、教育支援センター以外には、学習塾・予備校や、家庭教師、学習参考書・問題集などを活用し、心身に無理のない範囲で、出来るだけ基礎学力の遅れを取り戻す、または遅れを生じさせないことが望ましい。
ただし、検定教科書は、教師による授業での使用を前提としているため、独学に用いる場合、教科書ガイドなどで解説を補う必要がある。また、サポート校が中等部などを設けていることもあるが、これは、同じサポート校の高等部への進学を前提としている場合もある。
自宅を拠点とした学習は、ホームスクーリング(在宅学習)と呼ばれ、近年、アメリカを中心に、世界的に増加の傾向にある。日本でも、ホームスクーリングを支援する団体等が設立されている。
中学卒業後に、通信制高校への進学や高認受験を選択した場合、広い範囲の自学自習を求められる。このため、卒業または合格の前に、学習を放棄または先延ばししてしまう危険も比較的大きい[要出典]。
したがって、その場合には、単位制高校などへ入学・編入学するか、またはサポート校や学習塾・予備校などに通うことで、そうした危険をより少ないものに出来る。
さらに、大学受験を希望する場合、高認や通信制高校の内容と、平均的な大学受験で必要とされる内容の格差が大きいことに、注意する必要がある。また、高認に限らず、通信制高校(一部を除く)では、数学III・数学Cなど、理系学部の受験で求められることの多い科目が受講できない。
学業や進学についての問題(親の期待, 学業不振など)が不登校の契機となっている場合もあり、そのような事例では、焦って勉学を促すことが逆効果ともなり得る。保護者は、子どもの成人後の自立にとって必要最低限の提案をしながらも、最終的には子ども本人の意思で決めさせることが望ましい。
不登校児の学業結果は、保護者にとって、必ずしも満足できるものではないかもしれない。しかし、他の子どもとの比較で本人を評価するよりも、たとえ些細なことであれ、本人の努力を評価することが、本人のモチベーション(やる気)を保つためには必要である。
全ての不登校が、心身の障害や学校での人間関係、家庭の貧困を原因とする訳ではない。
子どもへの虐待など、不登校が明らかに家庭に起因する場合には、原因となっている家庭環境を改善することが、解決の前提となる。その過程で、行政により、子どもを家庭から引き離す措置が採られることもある。
外国人の子弟で、日本語能力の不足が不登校の原因となっている場合もある。例えば、日系人労働者の多い自治体では、日系人児童の不登校が問題化している。学校による日本語や基礎学力のケア、いじめ対策などが十分に期待できない事例では、ブラジル学校など、外国人学校への入学・編入学も検討される。
ウィクショナリーに不登校の項目があります。 |
この「不登校」は、教育に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆、訂正などして下さる協力者を求めています(P:教育)。 |
この項目は、学校に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(P:教育/PJ学校)。 |
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国試過去問 | 「113E027」「096I050」「100H031」「107F002」「104G035」 |
リンク元 | 「登校拒否」「persistent non-attendanceat school」 |
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