ローブレナ
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ロルラチニブ
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IUPAC命名法による物質名 |
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IUPAC名 (10R)-7-Amino-12-fluoro-2,10,16-trimethyl-15-oxo-10,15,16,17-tetrahydro-2H-4,8-methenopyrazolo[4,3-h][2,5,11]benzoxadiazacyclotetradecine-3-carbonitrile |
臨床データ |
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販売名 |
ローブレナ |
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法的規制 |
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投与方法 |
PO |
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識別 |
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CAS番号
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1454846-35-5 |
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ChemSpider |
32813339 |
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KEGG |
D11012 |
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化学的データ |
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化学式 |
C22H20FN5O2 |
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分子量 |
405.43 g·mol−1 |
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SMILES
C[C@H]1Oc2cc(cnc2N)c3c(CN(C)C(=O)c4ccc(F)cc14)nn(C)c3C#N
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InChI
InChI=1S/C21H19FN6O2/c1-11-15-7-13(22)4-5-14(15)21(29)27(2)10-16-19(17(8-23)28(3)26-16)12-6-18(30-11)20(24)25-9-12/h4-7,9,11H,10H2,1-3H3,(H2,24,25)/t11-/m1/s1 Key:IIXWYSCJSQVBQM-LLVKDONJSA-N
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ロルラチニブ, Lorlatinib (PF-6463922)とは、ファイザー社により開発された抗がん剤の1つである。低分子の分子標的治療薬で、ROS1とALKを阻害する。
薬物動態
ロルラチニブは脳血液関門のバリアを通過する[1]。
歴史
アメリカ合衆国では、2015年にFDAが非小細胞肺癌に対する希少疾患用医薬品としてファイザー社のロルラチニブを認めた[2]。2018年には、FDAはALK陽性の転移性非小細胞肺癌に対する2次または3次の治療としてロルラチニブを認可した[3]。
日本では2018年11月20日に、製品名「ローブレナ」(ファイザー社製造販売)として発売された。日本での効能・効果は、ALKチロシンキナーゼの阻害剤に抵抗性、又は、不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌とされている。
臨床研究
複数の臨床試験が行われている。第II相試験である avelumab 単剤と、アベルマブとロルラチニブまたは crizotinib との組み合わせとの、非小細胞肺癌の比較は、2017年後半の終了予定であった。第II相試験のロルラチニブとクリゾチニブとの比較は2018年半ばに終了予定である[4]。第II相臨床試験である、ALK陽性またはROS1陽性の非小細胞肺がんの中枢神経系への転移病変に対する治療については、2023年まで終了しない[5]。前臨床研究が 神経芽腫での治療に対して行われている。
2017年には、ファイザー社は、ALKまたはROS1陽性の進行非小細胞肺癌患者において、肺および脳病変に効果が見られたと発表した[6]。
参考文献
- ^ “NCI Drug Dictionary”. National Cancer Institute. 20181126閲覧。
- ^ http://drugspider.com/drug/lorlatinib
- ^ “FDA approves lorlatinib for second- or third-line treatment of ALK-positive metastatic NSCLC”. 20181126閲覧。
- ^ “A Study Of PF-06463922 An ALK/ROS1 Inhibitor In Patients With Advanced Non Small Cell Lung Cancer With Specific Molecular Alterations - Full Text View - ClinicalTrials.gov”. 20181126閲覧。
- ^ “A Study of Lorlatinib in Advanced ALK and ROS1 Rearranged Lung Cancer With CNS Metastasis in the Absence of Measurable Extracranial Lesions - Full Text View - ClinicalTrials.gov”. 20181126閲覧。
- ^ http://www.ascopost.com/News/58148
UpToDate Contents
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- 1. 未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合癌遺伝子陽性非小細胞肺癌anaplastic lymphoma kinase alk fusion oncogene positive non small cell lung cancer [show details]
…identify patients who are more likely to benefit from lorlatinib . The intracranial efficacy of lorlatinib is discussed elsewhere. Although lorlatinib has not been compared with chemotherapy in the setting …
- 2. 分子標的薬と生物学的製剤を用いたがん治療における神経学的合併症neurologic complications of cancer treatment with molecularly targeted and biologic agents [show details]
…based on severity; if the drug is withheld, the dose should be reduced when treatment is resumed. Lorlatinib is a third-generation inhibitor of anaplastic lymphoma kinase (ALK) and ROS1 tyrosine kinases that …
- 3. 非小細胞肺癌の脳転移brain metastases in non small cell lung cancer [show details]
…preceding phase I trial of lorlatinib, the mean ratio of cerebrospinal fluid (CSF) to plasma lorlatinib concentrations was 0.75, confirming the significant CNS penetrability of lorlatinib . In that trial, among …
- 4. 抗腫瘍療法関連肺毒性:分子標的剤pulmonary toxicity associated with antineoplastic therapy molecularly targeted agents [show details]
…six months after dasatinib was discontinued. Crizotinib, ceritinib, alectinib, brigatinib, and lorlatinib are orally active inhibitors of the anaplastic lymphoma kinase (ALK); all are approved for treatment …
- 5. 肝疾患を有する患者における化学療法による肝毒性および用量調整chemotherapy hepatotoxicity and dose modification in patients with liver disease [show details]
…ULN. Lorlatinib – Severe hepatotoxicity has occurred when lorlatinib is administered concurrently with strong inducers of CYP3A (eg, rifampin ). In the concurrent administration of lorlatinib and strong …
Japanese Journal
- 金田 裕靖
- 日本病院薬剤師会雑誌 = Journal of Japanese Society of Hospital Pharmacists 55(9), 1096-1099, 2019-09
- NAID 40022015489
- 審査報告書から見る 新薬の裏側(第29回)ローブレナ錠25mg,100mg(ロルラチニブ)(Part 2)
- 大野 能之
- 月刊薬事 = The pharmaceuticals monthly 61(8), 1492-1495, 2019-06
- NAID 40021938091
- 新薬の紹介 抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤 ロルラチニブ錠(ローブレナ錠25mg/ローブレナ錠100mg)
- 兼安 健太郎
- 日本病院薬剤師会雑誌 = Journal of Japanese Society of Hospital Pharmacists 55(6), 683-685, 2019-06
- NAID 40021936701
Related Links
- 「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性または不耐性のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とするローブレナ錠25mg及び同錠100mg(一般名:ロルラチニブ)が201
- 今年1月に製造販売承認を申請していた、第三世代のALK阻害薬、ファイザー製薬の「ロルラチニブ」が6月8日、厚労省の優先審査の対象になったとの通達があったそうです。
- 非小細胞肺がんの新薬ロルラチニブについて ALK陽性進行非小細胞肺がんの治療成績はALK阻害剤であるザーコリ(クリゾチニブ)が2012年3月30日に承認されたことを機に、劇的に向上しました。 ALK陽性とはALK
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ローブレナ錠25mg
組成
1錠中:
有効成分
添加物
- 結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、トリアセチン、黒酸化鉄、三二酸化鉄
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- リファンピシンを投与中の患者[「相互作用」及び「薬物動態」の項参照]
効能または効果
- ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- 本剤の一次治療における有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
- 「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと。
- 通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
- 本剤投与により副作用が発現した場合には、以下の基準を考慮して、休薬・減量・中止すること。[「慎重投与」、「重要な基本的注意」及び「重大な副作用」の項参照]
減量・中止する場合の投与量
減量レベル:通常投与量
減量レベル:一次減量
減量レベル:二次減量
減量レベル:中止
- 投与量:50mg/日で忍容性が得られない場合は投与を中止すること
副作用に対する休薬、減量及び中止基準
副作用:膵炎
- 程度注1):アミラーゼ及びリパーゼの増加がGrade2以下で、画像検査で膵炎の所見を認める場合
処置:アミラーゼ及びリパーゼの増加がGrade2以下で、画像検査でベースラインに回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:膵炎
- 程度注1):Grade3又は4の場合
処置:投与を中止する。
副作用:間質性肺疾患
- 程度注1):Grade1で、症候性の場合
処置:・ベースラインに回復するまで休薬し、回復後、同一用量で投与再開する。
・再発又は適切な治療を行っても6週間の休薬期間を超えて回復が認められない場合は投与中止する。
副作用:間質性肺疾患
- 程度注1):Grade2の場合
処置:・ベースラインに回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する。
・再発又は適切な治療を行っても6週間の休薬期間を超えて回復が認められない場合は投与中止する。
副作用:間質性肺疾患
- 程度注1):Grade3又は4の場合
処置:投与を中止する。
副作用:QT間隔延長
- 程度注1):Grade3の場合
処置:Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:QT間隔延長
- 程度注1):Grade4の場合
処置:投与を中止する。
副作用:左室駆出率低下
- 程度注1):Grade3又は4の場合
処置:投与を中止する。
副作用:房室ブロック
- 程度注1):第1度房室ブロック
処置:症候性の場合:無症候性に回復するまで休薬し、回復後、同一用量又は1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:房室ブロック
- 程度注1):第2度房室ブロック
処置:・無症候性の場合:第2度房室ブロックが回復するまで休薬し、回復後、同一用量又は1用量レベル減量して投与再開する。
・症候性の場合:無症候性かつ第1度房室ブロック以下に回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する注2)。
副作用:房室ブロック
- 程度注1):完全房室ブロック
処置:無症候性かつPR間隔が200msec未満に回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する注2)。
副作用:中枢神経系障害
(言語障害、記憶障害、睡眠障害及び認知障害を含む)、視覚障害
- 程度注1):Grade1の場合
処置:同一用量で投与継続する又はベースラインに回復するまで休薬し、回復後、同一用量又は1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:中枢神経系障害
(言語障害、記憶障害、睡眠障害及び認知障害を含む)、視覚障害
- 程度注1):Grade2又は3の場合
処置:Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:中枢神経系障害
(言語障害、記憶障害、睡眠障害及び認知障害を含む)、視覚障害
- 程度注1):Grade4の場合
処置:投与を中止する。
副作用:高脂血症
(総コレステロール又はトリグリセリドの増加)
- 程度注1):Grade3の場合
処置:同一用量で投与継続する又はGrade2以下に回復するまで休薬し、回復後、同一用量で投与再開する。
副作用:高脂血症
(総コレステロール又はトリグリセリドの増加)
- 程度注1):Grade4の場合
処置:Grade2以下に回復するまで休薬し、回復後、同一用量又は1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:その他の非血液学的毒性
- 程度注1):Grade3の場合
処置:Grade1以下又はベースラインに回復するまで休薬注3)し、回復後、1用量レベル減量又は同一用量にて投与再開する。
副作用:その他の非血液学的毒性
- 程度注1):Grade4の場合
処置:Grade1以下又はベースラインに回復するまで休薬注3)し、回復後、1用量レベル減量して投与再開又は投与中止する。
副作用:リンパ球減少症
- 程度注1):Grade3又は4の場合
処置:同一用量で投与継続する注4)又はGrade1以下もしくはベースライン値に回復するまで休薬し、回復後、同一用量又は1用量レベル減量して投与再開する。
副作用:その他の血液学的毒性
- 程度注1):Grade3又は4の場合
処置:Grade1以下又はベースライン値に回復するまで休薬し、回復後、1用量レベル減量又は同一用量にて投与再開する。
- 注1):GradeはNCI−CTCAE ver 4.03に準じる。
- 注2):ペースメーカーを留置した場合は、同一用量で投与再開する。
- 注3):無症候性のGrade4の高尿酸血症又はGrade3の低リン酸血症は投与継続可とする。また、適切な治療を行ってもGrade3又は4の悪心、嘔吐又は下痢が持続する場合は、用量調節を行う。
- 注4):感染又はその他の臨床的に重大な毒性所見がない場合。
慎重投与
- 間質性肺疾患のある患者又はその既往歴のある患者[間質性肺疾患が発現又は増悪するおそれがある。「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「重大な副作用」の項参照]
- 中等度以上の肝機能障害のある患者[安全性は確立していない。]
- QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者[QT間隔延長が発現するおそれがある。「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「重大な副作用」の項参照]
重大な副作用
間質性肺疾患(0.7%)
- 間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「慎重投与」及び「重要な基本的注意」の項参照]
QT間隔延長(6.5%)
- QT間隔延長があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「慎重投与」及び「重要な基本的注意」の項参照]
中枢神経系障害(29.8%)
- 認知障害(記憶障害、健忘、注意力障害等)(17.8%)、言語障害(構語障害、言語緩慢、会話障害)(7.3%)等の中枢神経系障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照]
膵炎(9.5%)
- 膵炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照]
肝機能障害(12.7%)
- ALT(GPT)、AST(GOT)等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗腫瘍作用16,17)
- ロルラチニブは、既存のALKチロシンキナーゼ阻害剤(クリゾチニブ、アレクチニブ及びセリチニブ)に対して耐性となるL1196M、G1269A、I1171T及びG1202R変異を有するALK融合タンパクを発現させたヒト非小細胞肺癌由来NCI-H3122細胞株及びマウス線維芽細胞由来NIH3T3細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて腫瘍増殖抑制作用を示した。
作用機序18)
- ロルラチニブはALK融合タンパクのチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- (10R)-7-Amino-12-fluoro-2,10,16-trimethyl-15-oxo-10,15,16,17-tetrahydro-2H-4,8-methenopyrazolo[4,3-h][2,5,11]benzoxadiazacyclotetradecine-3-carbonitrile
分子式
分子量
性状
- ロルラチニブは白色の粉末である。N, N−ジメチルアセトアミドに溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、水に極めて溶けにくい。
分配係数(log P)
★リンクテーブル★
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商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
- ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を効能・効果とする新有効成分含有医薬品
【条件付き早期承認】