出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/10/08 12:49:55」(JST)
ロシア語 |
|
---|---|
русский язык | |
発音 | IPA: [ˈru.skʲɪj jɪ.ˈzɨk] |
話される国 | ロシアアゼルバイジャンリトアニア |
地域 | 東ヨーロッパ・アジア |
話者数 | 約1億8000万人 |
話者数の順位 | 5-6 |
言語系統 |
インド・ヨーロッパ語族
|
表記体系 | キリル文字 |
公的地位 | |
公用語 | ロシア ベラルーシ 沿ドニエストル共和国国際連合 |
統制機関 | ロシア科学アカデミー[1] |
言語コード | |
ISO 639-1 | ru |
ISO 639-2 | rus |
ISO 639-3 | rus |
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ロシア語(ロシアご、露西亜語、русский язык)はインド・ヨーロッパ語族のスラヴ語派東スラヴ語群に属する言語。露語とも略される。ロシア連邦の公用語。ロシア連邦の国語表記には、キリル文字を使用する。近縁の言語にウクライナ語とベラルーシ語がある。
ロシア語はヨーロッパで最も母語話者が多い言語であり、母語話者数では世界で8番目に多く、第二言語の話者数も含めると世界で4番目に多い。国際連合においては、英語、フランス語、中国語、スペイン語、アラビア語と並ぶ、6つの公用語の1つである。
詳細は「ロシア語の歴史(英語版)」を参照
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詳細は「スラヴ祖語」を参照
詳細は「:en:Saints Cyril and Methodius」を参照
詳細は「古ロシア語」を参照
ロシア語の起源については諸説あるが、東スラヴ人が使っていた古東スラヴ語(10世紀 - 15世紀)から発展したという説が最もよく知られている。13世紀にキエフ大公国が崩壊した後、ルーシの地はモンゴル帝国に支配(タタールのくびき)されており、現代ロシア語にも財政や金融に関わる単語を中心に、タタール語などのテュルク諸語やモンゴル語の影響が残っている。その後、北東ルーシの辺境(現在のヨーロッパ・ロシア)でモスクワ大公国が成立し、この国の公用語がロシア語として独自に発展していった。
ロシア帝国の時代には、1708年にピョートル1世によってアルファベットが単純化されたのを皮切りに、ロシア語の改革が盛んとなった。18世紀後半にはミハイル・ロモノーソフが初めてロシア語の文法書を著し、標準語の形成に大きく寄与した。19世紀初頭にはアレクサンドル・プーシキンによって近代的な文語が確立した。また、宮廷は西欧諸国を模範として近代化を進めたことから、大量の専門語彙がオランダ語、フランス語、ドイツ語などから取り入れられた。その一方で、当時の上流階級はフランス語を日常的に使用しており[1]、19世紀の小説(レフ・トルストイの『戦争と平和』など)はフランス語を交えて書かれた作品が多い。
ソビエト連邦には公用語は存在しなかった。すなわちロシア語はソ連の公用語ではなかった。レーニンがオーストロ・マルキシズムやカウツキーの影響のもと、1914年の論文『強制的な国家語は必要か?』において国家語の制定を批判し、スターリンも民族問題の専門家として民族語奨励政策を採用した結果、ソ連はロシア語をその崩壊にいたるまで公用語の地位につけることはついになかった(ちなみに、オットー・バウアーから借用した「形式は民族的、内容は社会主義的な文化の建設」というスターリンのテーゼはまず言語問題にまつわる1925年の演説『母語による教育』において現れた)。それゆえ、ロシア語がソ連における事実上の公用語であったが、公的に国家語化したのはロシア連邦成立後である[2]。
1918年には、アレクセイ・シャフマトフが準備していたアルファベット改革案がボリシェヴィキによって実行に移され、現在のロシア語の正書法が成立した。ただし、Ёはこの時点でまだ正式なアルファベットとして認められておらず、正式に組み入れられたのは1942年のことである。なお、1964年にもソ連科学アカデミーによって正書法の改革案が作られたが、こちらは実施されなかった。
1991年末のソ連崩壊で、ソ連を構成していた各共和国はそれぞれ独立し、それまでロシア語との併用という形を採っていたそれぞれの民族語が第一の公用語へと昇格したが、その後の言語状況に関しては様々である。
バルト三国と呼ばれるエストニア・ラトビア・リトアニアでは、ソ連からの独立以降急速に各民族語(エストニア語・ラトビア語・リトアニア語)が使用される機会が増えている。もちろんソ連崩壊後20年程しか経過しておらず、またロシア系住民が多い地域などではロシア語が今でも使われるが、ソ連時代と比べるとロシア語はそれほど使われなくなっていると言える。特にこの3カ国が2004年にEUに加盟してからは、英語やドイツ語がより広く学ばれるようになっている。ただし、ソ連時代後期にロシア語人口がラトビア語人口を逆転するのではないかと言われたラトビアでは、独立回復後に制定した国籍法で国籍取得要件にラトビア語の習得を義務付けたという経緯がある。これによって多くのロシア系住民をロシアへ移住させる事に成功したが、国籍を与えられない残留ロシア人の権利が阻害されているとするロシア政府からの抗議を受け、さらに欧州委員会からもこの言語規定が市民の平等を定める欧州憲法に違反しているという指摘を受けた。その結果、ラトビア政府によるロシア語排除策は沈静化している。
また、ロシア影響圏からの離脱を模索するウクライナやグルジアでも、ロシア語ではなくウクライナ語やグルジア語がより広範に使われている。ウクライナでは、西部を中心に従来よりほとんどウクライナ語のみが使用されている地域がある一方で、ウクライナ語とロシア語両方が使われている地域もあり、また東部やクリミア半島ではロシア語の使用者が大勢である地域もあり、地域によっては将来的にもロシア語は当分使われ続けると推定されている。一方で、都市部を中心に伝統的にウクライナ語とロシア語の混交が起こっていたが、ソ連の崩壊以降、それまでロシア語が優勢であった地域を中心にウクライナ語にロシア語の要素が混じった「スールジク(混血)」と呼ばれる混交言語が広まりを見せている。現在でも、ウクライナ西部を除く広範囲でロシア語は使用、理解されており、ロシア語をウクライナ語に次ぐ第二公用語に加える動きもあるなど、今までのロシア語排除の動きから転換点を迎えようとしている。
グルジアもまた長年ロシア語による支配を受けてきた国であった。グルジア政府はロシア語教育を廃止し、ロシア語読みに基づいた国名である日本語の「グルジア」を英語読みの「ジョージア」に変更してほしいとも申し出ている(グルジア語名では「サカルトヴェロ」である)が、日本政府からの回答は今の所ない。また、ロシアに多くのグルジア人が住んでいることなどからロシア語は今でもよく使われている。
それ以外の地域に関しては、今でもロシア語が幅広く使われ続けている。ベラルーシやカザフスタン・キルギス・ウズベキスタン・トルクメニスタンなどでは非ロシア人でもロシア語しか喋れない人も多く、また多民族が入り混じって生活する中央アジア諸国では、ロシア語が民族を超えた共通語として使われている。カフカース地域、及びモルドバでも、現地人同士の日常会話には現地語が用いられることが増えてきたものの、ロシア語で会話する人々は少なくない。なお、ロシアとの統合に積極的なアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の独裁体制が続くベラルーシでは、ベラルーシ語とロシア語が公用語に指定されているが、隣国ウクライナとは逆にロシア語使用が奨励され、本来の民族語であるベラルーシ語が軽視される傾向にある。
ポーランドやブルガリアなど旧共産圏諸国では、共産主義体制ではロシア語が広く学習されていたが、民主化後は英語やドイツ語(歴史的にはチェコやハンガリーなど、オーストリア帝国の支配下にあった国も少なくない)など西欧の言語に押されて、ロシア語学習は下火になった。またバルト三国や東側諸国はハンガリー動乱やプラハの春などでソ連軍による民主化弾圧などがあったために、かつて第一外国語だったロシア語を使う事も拒んでいる者もいる。
一方、ウラジーミル・プーチン政権で経済の立て直しに成功したロシアがBRICsと呼ばれる経済成長地域の一つに加わり、天然資源を核にした諸外国との経済関係が再び拡大すると共に、ロシア語の需要は再び高まりつつある。バルト三国などでもロシア語に対するマイナスイメージもソ連時代を経験していない若い世代を中心に徐々に薄れてきており、ロシア語は英語やドイツ語などと共に、ビジネスなどで必要な言語ととらえる人も増えてきている。また、宇宙開発においては国際宇宙ステーションの公用語になるなど、英語と並んで必要不可欠な言語の1つとなっている。
ロシア国内では急速な資本主義化や新技術の導入に伴い、今まで存在しなかった概念や用語が大量に導入された。これにロシア語の造語能力が追いつかず、特に英語を中心とした外来語がそのままロシア語に導入される例が多くなっている。
ロシア連邦及び旧ソ連構成国のベラルーシ、カザフスタン、キルギスで公用語となっているほか、モルドバから独立宣言した沿ドニエストル共和国、グルジアから独立宣言したアブハジア共和国と南オセチア共和国においても公用語となっている。ウクライナ等その他の旧ソ連諸国でも、公用語にこそなっていないもののロシア系住民を中心に広く使われている。旧ソ連以外でも移民の多いイスラエル、ドイツ、カナダ、米国で使用される。1999年のデータではイスラエルへの旧ソ連からの移民は75万人にのぼり、ロシア語のテレビ・ラジオ放送局もある。国際連合の公用語の1つでもある。ヨーロッパ連合加盟国のラトビア、エストニア、リトアニアには大規模なロシア語母語人口を抱えるものの、EUの公用語には制定されていない。
【事実上独立した地域】
【国際機関】
ロシア語では以下の33個のキリル文字が用いられている。
大文字 | 小文字 | 文字の名称 (ロシア語) |
文字の名称 (ラテン文字転写) |
文字の名称 (読み) |
音価 (IPA) |
発音上の注意 |
---|---|---|---|---|---|---|
А | а | а | a | アー | /a/ | |
Б | б | бэ | be | ベー | /b/ | |
В | в | вэ | ve | ヴェー | /v/ | |
Г | г | гэ | ge | ゲー | /g/ | |
Д | д | дэ | de | デー | /d/ | |
Е | е | е | je | イェー | /je/ | 「イェ」に近い |
Ё | ё | ё | jo | ヨー | /jo/ | 「ヨ」に近い |
Ж | ж | жэ | zhe | ジェー | /ʐ/ | そり舌気味 |
З | з | зэ | ze | ゼー | /z/ | |
И | и | и | i | イー | /i/ | |
Й | й | и краткое | i kratkoje | イークラトコエ | /j/ | 半母音の[j](短い「イ」)[3] |
К | к | ка | ka | カー | /k/ | |
Л | л | эль (или эл) | el, elj | エル | /l/ | |
М | м | эм | em | エム | /m/ | |
Н | н | эн | en | エン | /n/ | |
О | о | о | o | オー | /o/ | |
П | п | пэ | pe | ペー | /p/ | |
Р | р | эр | er | エル | /r/ | 巻き舌 |
С | с | эс | es | エス | /s/ | |
Т | т | тэ | te | テー | /t/ | |
У | у | у | u | ウー | /u/ | |
Ф | ф | эф | ef | エフ | /f/ | |
Х | х | ха | kha | ハー | /x/ | 喉の奥から出す「ハ」 |
Ц | ц | цэ | tse | ツェー | /ʦ/ | 「ツァ」「ツ」「ツォ」 |
Ч | ч | че | che | チェー | /ʨ/ | 「チャ」「チュ」「チョ」 |
Ш | ш | ша | sha | シャー | /ʂ/ | 「シャ」「シュ」「ショ」(そり舌気味で発音される [s]) |
Щ | щ | ща | shcha | シシャー(シチャー) | /ɕː/ | 「ッシ」(「シ」の子音 [ɕ] に似ているが、やや長め) |
Ъ | ъ | твёрдый знак | tvjordɨj znak | トヴョールドゥイズナーク | - | 硬音記号、非口蓋化する[4][5] |
Ы | ы | ы | ɨ | ウィー | /ɨ/ | 「ウイ」 |
Ь | ь | мягкий знак | mjakhkij znak | ミャーフキーズナーク | - | 軟音記号、口蓋化する[4][6] |
Э | э | э (э оборотное) | e | エー | /e/ | 「エ」 |
Ю | ю | ю | ju | ユー | /ju/ | 「ユ」 |
Я | я | я | ja | ヤー | /ja/ | 「ヤ」 |
詳細は「ロシア語の文法(英語版)」を参照
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名詞は、男性、中性、女性の3つの性に分かれている。ロシア語の名詞は、例外はあるものの総じて、男性名詞(単数)は子音、-й, ьで、女性名詞は-а, -я, -ь で、中性名詞は-о, -е, -мяで終わる。そのため、名詞の性の判別が比較的容易である。これに加えて名詞は言葉の意味によって、人や動物を表す活動体とそれ以外のものを表す不活動体に分けられる。
数は、複数形の場合、男性及び女性名詞は語尾の硬・軟で-ыと-иで終わり、中性名詞は-аと-яで終わる。歴史的には、他にハサミやズボンなど、二つ一組のものに用いられる組数(双数)があったが、現在は数詞との結合の中にその痕跡を残すのみである。
名詞の格は主格、生格、与格、対格、造格、前置格の6種類である。一部には呼格(例:Боже! 神よ!)、処格、物主格(притяжательный падеж)、分離格(разделительный падеж)が残る。格変化は語尾によって表され、性・数・体に合わせて変化を見せる。例外的に語尾が変化しない名詞もあるが、ほとんどは語順で格を示す必要がないため、語順は比較的自由に変えられる。
他にも大きな特徴として出没母音がある。これは語形変化に合わせて出現あるいは消滅する母音であり、主にо, еが用いられる。例えば、пирожок(ピロシキ)を複数形にすると、最後のоが消滅してпирожкиになる。
数詞とそれに関連する名詞は特殊な変化をみせる。1 は単数主格だが、2-4 は単数生格、5以上が複数生格をとる。2-4 の単数生格は古い双数形の名残である。
単数 | 複数 | 再帰 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
一人称 | 二人称 | 三人称 | 一人称 | 二人称 | 三人称 | ||||||||
男性 | 女性 | 中性 | |||||||||||
(日本語) | 私 | 君 | 彼 | 彼女 | それ | 私たち | あなた、あなたたち | 彼ら、彼女ら、それら | 自分自身 | ||||
主格 | я | ты | он | она | оно | мы | вы | они | |||||
生格 | меня | тебя | его | её | его | нас | вас | их | себя | ||||
与格 | мне | тебе | ему | ей | ему | нам | вам | им | себе | ||||
対格 | меня | тебя | его | её | его | нас | вас | их | себя | ||||
造格 | мной (мною) |
тобой (тобою) |
им | ей (ею) |
им | нами | вами | ими | собой (собою) |
||||
前置格 | мне | тебе | нём | ней | нём | наc | вас | них | себе |
敬称としての「вы」は、文中でも「Вы」のように大文字で書き始めることがある。なお、ロシア語ではほとんどの動詞が語尾から人称と数がわかるため、特に必要がなければ主格人称代名詞は省略できる(例:Читаю книгу.「(私は)本を読む」)。
動詞は1回限りの動作や、その開始と終了がはっきりと意識できる一まとまりの動作など(日本語で言えば「食べてしまう」「読み切る」のような)を表す完了体と、進行・継続・反復する動作、動作そのものなど(「食べている」「読む」のような)を表す不完了体(未完了体とも)の2つの体(相 (言語学)参照)に分類され、多くの動詞で対になっている。一部には対になる体を持たないものや、完了体でもあり不完了体でもあるものなど、変則的な動詞も存在しているが、いずれにも属さない動詞は存在しない。
時制は過去・現在・未来の3つのみと単純である。基本的に全ての動詞は過去と現在しか持たない(唯一の例外が、be動詞に当たる быть で、過去形・現在形・未来形の3形態を持つ)。現在形は主語の人称・数により、過去形は性・数によって変化する。未来形は完了体と不完了体で表現の方法が異なり、完了体の場合は、その現在形がそのまま意味上の未来を表すのに対し、不完了体では助動詞 быть の未来形との結合で表される。
コピュラ動詞(…である)быть の現在形は基本的には明示されない(例:Я чайка.「私はかもめ」)。かつては、主語の人称と数に一致した быть が用いられていたが、そのような機能は現在の быть からはほぼ完全に失われており、現在形が用いられる局面は、所有を表す場合に限定されると言っても過言ではない。その際には、所有される側が文法的な主語に当たるため быть の三人称単数形 есть(例:У меня есть сын.「私には息子がいる(私の許には息子がいる)」)を用いることになる。所有される側が複数の場合、以前はбытьの三人称複数形に当たる суть を使用していたが、現在では数に関係なく есть を使う傾向にあるようである。
さらに言うと、この есть は存在の有無のみを問題としているため、存在することが前提となっている場合は不要になる(例:У меня маленький сын.「私には小さな息子がいる」→息子の有無についてではなく、それがどのような息子なのかが問題となっている)。
なお、否定の表現(…がない…がいない)は нет を使い、存在を否定する名詞を生格にかえる(例:У меня нет сына.「私に息子はいない」)。ちなみに、この нет は、не есть の音便形であり、"Да(はい)"、"Нет(いいえ)" の "Нет" とは、別物である。
また動詞が変化したものとして形動詞(西欧語の分詞のように形容詞の働きをする)や副動詞(副詞の働き)がある。ся動詞と呼ばれる一群の動詞(語尾に再帰代名詞сяがつく)はフランス語などの再帰動詞と同様に用いられ、また相互の動作や受動表現にも用いられる。
形容詞は名詞と同様に性・数・格によって変化し、限定的用法(名詞につく場合)はそれらが一致する。叙述的用法では語尾が短い「短語尾形」も用いられる。
形容詞の格変化の基本形は以下の通りである。なお、ロシア人の形容詞型の姓(チャイコフスキー、トルストイなど)も同じ格変化になる。
単数 | 複数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 中性 | ||||
主格 | -ый | -ая | -ое | -ые | ||
生格 | -ого | -ой | -ого | -ых | ||
与格 | -ому | -ой | -ому | -ым | ||
対格 | -ыйまたは-ого | -ую | -ое | -ыеまたは-ых | ||
造格 | -ым | -ой | -ым | -ыми | ||
前置格 | -ом | -ой | -ом | -ых |
単数 | 複数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 中性 | ||||
主格 | -ий | -яя | -ее | -ие | ||
生格 | -его | -ей | -его | -их | ||
与格 | -ему | -ей | -ему | -им | ||
対格 | -ийまたは-его | -юю | -ее | -иеまたは-их | ||
造格 | -им | -ей | -им | -ими | ||
前置格 | -ем | -ей | -ем | -их |
18世紀には、すでに「北槎聞略」という書物があり、「大黒屋光太夫」の口述による、キリル文字、一部のロシア語の単語、文などの記載も見られる[8]。一方、現代では ソ連崩壊後でも使用話者が多いためか、今でも日本の多くの大学の第二外国語でロシア語を学ぶことができるものの、日本人でロシア語を学ぶ人々は少ない。1960年代までは、日本でも共産主義を支持する人々を中心にロシア文化への関心は比較的高かったが、1970年代以降は共産主義の退潮、ブレジネフ体制下でのソ連文化の硬直化などを背景にロシアへの関心は低下した。ソ連崩壊後も、ロシアとの交流は北海道や日本海側の一部の地域を除くと盛んには行われておらず、経済的なつながりも中国や韓国、アメリカ合衆国より薄い。その為、日本においてロシア語の重要性は低い。英語や中国語、朝鮮語に比べて語学教材も恵まれておらず、改訂も進まない結果、内容がソ連時代のままである教材も少なくない。
しかし自衛隊では、中国語・朝鮮語と並びロシア語が学ばれているほか、北海道の一部の高校では、地理的に近いということもあり、ロシア語の授業が行われている。さらに稚内や根室、紋別ではロシア語表記の看板が見られるなど、隣国としてのロシアの姿が実感できる。同様に、新潟東港を通じての対ロ貿易の日本海側拠点である新潟市でも日本語の他英語とロシア語を併記した看板を見ることができる。新潟市ではこれ以外にもロシア語スピーチコンテストを行うなどしている。
詳細は「日本語のキリル文字表記」を参照
以下に日本語かなのキリル文字表記を示す[9]。
あ а | い и | う у | え э | お о | ゃ я | ゅ ю | ょ ё | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
あ行 - | あ а | い и | う у | え э | お о | - | - | - |
か行 к | か ка | き ки | く ку | け кэ | こ ко | きゃ кя | きゅ кю | きょ кё |
さ行 с | さ са | し си | す су | せ сэ | そ со | しゃ ся | しゅ сю | しょ сё |
た行 т | た та | ち ти | つ цу | て тэ | と то | ちゃ тя | ちゅ тю | ちょ тё |
な行 н | な на | に ни | ぬ ну | ね нэ | の но | にゃ ня | にゅ ню | にょ нё |
は行 х | は ха | ひ хи | ふ фу | へ хэ | ほ хо | ひゃ хя | ひゅ хю | ひょ хё |
ま行 м | ま ма | み ми | む му | め мэ | も мо | みゃ мя | みゅ мю | みょ мё |
や行 - | や я | - | ゆ ю | - | よ ё (йо) | - | - | - |
ら行 р | ら ра | り ри | る ру | れ рэ | ろ ро | りゃ ря | りゅ рю | りょ рё |
わ行 - | わ ва | - | - | - | を о | - | - | - |
が行 г | が га | ぎ ги | ぐ гу | げ гэ | ご го | ぎゃ гя | ぎゅ гю | ぎょ гё |
ざ行 дз | ざ дза | じ дзи | ず дзу | ぜ дзэ | ぞ дзо | じゃ дзя | じゅ дзю | じょ дзё |
だ行 д | だ да | ぢ дзи | づ дзу | で дэ | ど до | ぢゃ дзя | ぢゅ дзю | ぢょ дзё |
ば行 б | ば ба | び би | ぶ бу | べ бэ | ぼ бо | びゃ бя | びゅ бю | びょ бё |
ぱ行 п | ぱ па | ぴ пи | ぷ пу | ぺ пэ | ぽ по | ぴゃ пя | ぴゅ пю | ぴょ пё |
撥音 | ん н | - | - | - | - | - | - | - |
()内は、ロシア語での本来の意味である。
ロシア語から日本語に入った単語は、18世紀以降の両国間の接触によりロシアの文物が日本に紹介された物と、1917年のロシア革命とその後のソビエト体制の成立により、社会主義(共産主義)思想と共に日本に導入された物の2種類が多い。前者は日常生活の中で使用されている例があるが(イクラなど)、後者はむしろソ連・ロシア社会の特定の組織や現象を指す固有名詞としてとらえられる物が多い(コルホーズ、ペレストロイカなど)。ただし後者にもロシアから離れ、日本社会の事象を説明する時に使われる用語もある(コンビナート、ノルマなど)。в[v]は古くから入った外来語の場合「ウィ・ウ・ウェ・ウォ」と転写し、比較的新しいものは「ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」と転写する。ただし、"ва"に関しては現在でも「ワ」と転写する慣用が残っている(例:マリア・シャラポワ)。
日本語からロシア語への単語移入は、日本文化の文物がロシアで紹介された時に単語が使われる場合が多く、技術用語や学術用語では例が少ない。
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ウィキメディア・コモンズには、ロシア語に関連するカテゴリがあります。 |
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