出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/05/22 08:34:37」(JST)
ヤエヤマサソリ | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Liocheles australasiae (Fabricius, 1775) |
ヤエヤマサソリ Liocheles australasiae (Fabricius,1775) は、クモ綱サソリ目に属する動物である。日本に産するサソリ2種のうちの1つで、人に対する危険はない。
ヤエヤマサソリは主に森林に生息するサソリで、朽ち木の中などに生息し、小型節足動物などを捕食する。
サソリといえば毒が有名であるが、この種は人家に侵入することもなく、人間と触れる機会がほとんどない上、人に対する毒性もほとんどない。
他方で、単為生殖をするサソリとしても有名で、世界のサソリの中でも特異なものとして知られている。
雌は体長は30-35mm。全身はほぼ暗褐色で、鋏状の触肢は褐色。尾の先端の毒嚢の部分は黄色。
体は幅広く、やや平らになっている。頭胸部を覆う背甲の前方両側面にはそれぞれ3個、中央には1対2個の単眼がある。その腹側を覆う胸板は前が尖ったはっきりした五角形。腹部の腹面前方にある櫛板は、その歯が太短い円柱状で4-8と数が少ない。
尾になっている後腹部は細く、先端の毒針は下に曲がる。毒針に相対する棘はない[1]。
なお、岡田(1967)は雄の特徴として腹部が小さく、触肢の鋏の形状が異なるとしている。
日本では八重山諸島にのみ分布する。まれに、荷物などに紛れて本土の港湾などで発見された例がある。ペットとして飼われたものが逃げたと思われる例もある。
世界的には東南アジアからオーストラリア北部、ポリネシアなどの広い範囲で報告されている。
枯れ木や朽ち木の隙間や樹皮下、倒木の下などから発見される。飼育下ではシロアリをよく食べる。
ヤエヤマサソリは胎生で、直接に幼生を産む。これは多くのサソリに見られるものである。
孵化した幼生は、すぐに雌成虫の背中に登り、ここで約1週間をなにも食べずに過ごす。それから母親の背中から降り、それ以降は自立して生活を始める。
ヤエヤマサソリは単為生殖によって雌だけで繁殖が可能であることが分かっている。少なくとも一部の個体群に於いては単為生殖だけで繁殖しており、雄が存在しない。
これは、先ず牧岡俊樹らが1984年頃より、西表島とマレーシアのカメロン高原に於いて、この種で年間を通じて雄が出現しないことを発見したことに始まる。これを元に、西表島の個体群から雌の単独飼育による複数回の出産や単独飼育で三代までを得たことでこの可能性が強まった。山崎はさらにこれを徹底し、単独飼育で五代目までを得ることに成功し、さらにその単為発生の仕組みについても研究をした[2]。
世界のサソリのうち、同様の単為生殖を行うとされているのは本種を含めて7種のみである。同属の他種で性比を調べられた例では、雌雄がほぼ1:1で存在するとみられる。また、本種についても地域によっては少数の雄が出現するとの報告もあり、部分的には通常の生殖も行われている可能性がある[3]。
サソリは毒性が恐ろしいと必要以上に警戒されるが、この種の場合、刺された例を聞くことすらほとんどない。刺された場合にも軽く痛みを感じる程度[4]とされている。
なお、これは毒を持たないという意味ではなく、人間に対する毒性がごく弱いことを意味するだけである。サソリの毒は大型の天敵に対する防護にも使われるが、餌となる昆虫等を捕殺するためのものでもあり、実際にこの種の毒からは昆虫に特異的に効果を持つ成分が複数発見されている[5]。
日本のサソリとしてはもう1種、マダラサソリがあり、小笠原諸島と、それに八重山諸島にも分布する。しかし全体に細長く、鋏や尾も長い上、体色が淡褐色にまだら模様なので、区別はたやすい。毒性はヤエヤマサソリよりは強いが、やはり大したことはないとされる[6]。
オーストラリアからフィリピン等にいる近縁種であるニイムラサソリとは、櫛板の歯の数等で異なる[7]。
.