出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/06/06 15:25:09」(JST)
モレキュラーシーブは溶媒等の乾燥に用いられる乾燥剤の一種。商品名である。俗称で「モレシー」と呼ばれたりもする。
一般的な事柄に関しては、分子篩(molecular sieve)およびゼオライトを参照のこと。
ゼオライトの一種で、多孔質の空孔に分子を吸着する。特に水分子を強く吸着するため、溶媒や気体の乾燥に用いられる。粉末状やペレット状に成型したものが市販されており、原料のゼオライトの種類によって3A、4A、5A、13Xと表記される。数字は空孔のおおよその直径(オングストローム)を、大文字のアルファベットはゼオライトの種類を表しており(AはLTA型ゼオライト、XはFAU型ゼオライトを表す)、乾燥する溶媒分子の大きさを考慮して適切なものを用いる必要がある。
用いられることの多い4Aは3Aよりも乾燥力が大きいが、アセトニトリルやエタノールはモレキュラーシーブの空孔に吸着されて発熱するうえ、顆粒が崩壊して細かい粉を生ずるので3Aの使用が適当である。メタノールは3Aでも不具合が発生するため、金属マグネシウムを用いるのが一般的である。5Aは芳香族化合物等に、13Xは長鎖三級アミンなどの大きな分子に対して用いられる。
市販品はすでにある程度は水を吸着しているので脱水能力はそれほど高くはなく、水を吸着しすぎたモレキュラーシーブは逆に溶媒に水分を放出する。理想的には真空ポンプで減圧したまま300~400度で数時間加熱することで活性化すると、モレキュラーシーブは高い脱水能力を持つ。吸着された水は加熱だけでもある程度は脱着するため、ゼオライトをフラスコに入れて電子レンジで加熱後、冷めないうちに減圧するだけでも実用に耐えるだけの脱水能力は得られる。ただし、長時間電子レンジで加熱すると過熱したモレキュラーシーブが溶融する場合があるので、10秒前後加熱する度に取り出して軽く振る、という操作を数回繰り返すとよい。
溶媒中を拡散する水を捕捉するので、ビンの底にモレキュラーシーブを静置しておいても乾燥の速度は大きくない。カラムに詰めて溶媒をゆっくり流すと、迅速に乾燥が可能である。(モレキュラーシーブの外面を流れてくる最初の流分は捨てるのが望ましい)
また、脱水反応の際に生成する水分子を取り除き、反応を進行させるのに用いられることもある。
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