出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/08/16 15:40:10」(JST)
同名の楽曲については「地図 (あえかの曲)」をご覧ください。 |
「マップ」はこの項目へ転送されています。アップルが開発したiOS対応の地図サービスアプリケーションについては「マップ (アップルのアプリケーション)」をご覧ください。 |
地図(ちず)とは、地球などの地表、あるいは架空の世界の全部または特定の一部分を縮小表現したものである。「文化の総合的産物」ともいわれ[1]、「文字よりも古いコミュニケーション手段」と称されることがあるように、表現手法として人類に重宝されてきた[2]。
地図の具備すべき条件として、(1)距離、(2)面積、(3)角、(4)形の正確さと、(5)明白さ・理解しやすさ等の要素があるとされる[3]。実用の地図は測量の結果を紙上に展開して地形・地物・説明文字を付して完成させた実測図と、実測図の成果や各種資料により編集原図を作製し製図・製版・印刷を経て出版される編纂図に大別される[3]。ただ、地球は回転楕円体(扁球)である。平面的な小地域を図化した実測図においては上の条件を実用的な程度にまで満足させることができるが、球面の影響の出る大地域を図化した編纂図においては投影法や縮尺などの点から上の条件を満たしきれないため読む際に注意を必要とする場合がある[3]。
地図の製作と収集能力を買われ、アメリカ合衆国連邦政府に登用された[4]イザイア・ボウマンは「地図は地理的ないろいろの象徴の中で最も普遍性のある、また最も目立ったものである」と述べ、地理学における地図の重要性を説くと同時に、地理学は単なる「分布の科学」ではないとし、地理学における地図の限界にも言及している[5]。ボウマンの指摘した地図の役割を要約すれば、分布の明示・測定の具象化・関連し合うものを同時に表現することの3点となる[6]。
地図では情報の多くが地図記号で表されているが、地図の種類または国ごとに統一され決められている。ただし地形図以外のもの(道路地図やガイドマップなど)においてはこのような規格には沿っていないものが多い。さらに鉄道路線図のように接続関係のみを重視し幾何学的正確性を無視したものもある[7]。
現在では、地図のデジタル化が進み地図上に多くの情報をあわせて持つことができるようになっている(地理情報システム(=GIS)参照)。
詳細は「初期の世界地図」、「江戸幕府の地図事業」、および「マッパ・ムンディ」を参照
地図は、文字よりも古くから人類に使われていたと考えられている。また、文字が存在しない文化でも、地図に類するものが使われている場合がある。
原始時代の地図は残存してはいないものの、その名残とされるものとしてはタヒチの先住民による木片を用いた立体図やマーシャル諸島の先住民によるヤシの繊維とタカラガイを用いた航海用図といったものがある[8]。
社会が発展して国家が誕生すると、土地の耕作や用水路の建設など、行政のために地図は欠かせないものとなった。また、戦争ともなると地の利を活かす必要があり、軍事面でも自国や敵国の地形を把握することが重要となっていった。そのため、古今東西を問わず、為政者は正確な地図を作るために力を入れ、様々な地図が各地で作られた。
現在、発見されているものの中で、最も古いと考えられている世界地図はバビロニアの世界地図である。紀元前600年ごろに作成されたと考えられている。ただ、世界地図とは言っても、想像や伝聞情報によると思われる箇所が多く、正確に描けているのはバビロンと周辺都市に限られている。
日本地図の項目ではないのだから、それ以後の世界的な地図の歴史の記述が必要。
日本では、平安時代初期の弘仁5年6月23日付官符に引用されている「天平10年5月28日格」に「国図」の語があり、『続日本紀』の天平10年8月の記事に「天下の諸国をして国郡図を造進させる」と見えているので、この頃には日本地図が存在していたことは間違いない。ただし、地図そのものは残っておらず、これの詳細は不明である。現在確認されている中で、日本の最も古い地図は奈良時代の行基が作ったとされる行基図である。これは、正確性に欠けるものの広く流通し、いくつかの修正は入ったものの一般庶民には江戸時代まで使われていた。
日本人が自国の正確な形を知ったのは、伊能忠敬らが作り上げた大日本沿海輿地全図によってである。これはそれまでの地図を凌駕する正確なものであり、見たものを大いに驚かせた。
アブラハム・オルテリウスが描いた世界地図(1570年)
ポセイドニオスが描いたとされる世界地図(画像は1628年に書かれた複製品)
1154年、イドリースィーが描いたとされる世界地図。北が下になっている。
鴨緑江会戦において、日本軍の第一軍が所有していた地図。
鴨緑江会戦の、ロシア軍の地図。日本軍の位置などが書きこまれている。
地図学上の分類である一般図と主題図については「地図学#地図の種類」を参照。
地図には広義の測量の直接的な成果として得られる実測図とこれを編集して作製される編纂図がある[9]。
このうち実測図はさらに基準点測量を基礎として細部を地形測量で測図した地形図と、単に地形測量や特殊測量のみによって測図される略測図に分けられる[9]。
書店等で一般的に入手可能な地形図は、東西南北や緯度、経度が指し示されて、等高線による土地の高低差、海、湖、河川のような水域、行政区画、道路や建物の位置などの多くの情報が網羅されている。地形図について日本では国土地理院により測量が行われている。従来使われてきた測地系(座標を決める基礎情報)が、GPSなどで使われるものと大きく異なっていたため、測量法の改正により2002年4月1日に「日本測地系」を「世界測地系」に変更した。その前後の緯度、経度は座標変換が必要になる。
また、編纂図も実測図をもとに実地調査・統計・文献調査の成果を取り入れ編纂・図化した一般編纂図(地勢図や地方図など)と、特定の事象についてのみ表現を目的とする特殊編纂図(土地利用図や人口分布図など)に分けられる[9]。
地図は縮尺によって、縮尺100万分の1より小さい小縮尺図、縮尺100万分の1から10万分の1の中縮尺図、縮尺100万分の1より大きい大縮尺図に分けられる[9]。
地図には目的に応じた投影法が用いられる。地図は投影面の種類によって、平面図法、円錐図法、円筒図法、便宜図法に分類される[9]。また、正しく表現する対象により、正主距離図(正距図)、正積図、正角図に分類される[9]。
詳細は「投影法 (地図)」を参照
地図は収容地域によって、世界地図(世界全図)、半球図、日本地図(日本全図)のような各国の地図、市町村図などに分類される[9]。
地図はその様式により、調製地域となる範囲を画した上で一定の経緯度で分割し一区画ごとに作製した切図(地形図や地勢図など)、用途に応じて一葉の形式あるいは折本や掛図とした全図(世界全図や日本全図など)、地勢図などを規格を統一して一冊の形式にまとめた地図帳に分類される[9]。
地図は一般図と特殊図に分けられ、一般図は基本図と編纂図、特殊図は地籍図(土地事業用図、都市計画図、地質図など)と土地利用図(人口密度図、交通図、統計図など)に分けられる[9]。
地図の要素には(1)距離・面積、(2)位置・方向、(3)高さ、(4)地形・地物・地名などがある[10]。
地図上の距離・面積は縮尺によって定まる[11]。
地図上の位置・方向は投影法によって定まる[11]。
地図上の高さは水準測量によって定まる[11]。
地形は水平曲線(等高線、等深線)あるいはボカシ・ケバ・段彩などによって表現される[11]。
地物には都市・集落・鉄道・道路・河川など縮尺化して地図上で真形を表すことのできる骨格地物と、縮尺化しても地図上では真形を表すことのできない記号地物がある[11]。記号地物はさらに、独立樹や井戸などの小物体、学校など建物の性質を示す副記号、水田や森林など地類の状況を示す地類記号などに分類される[11]。
地図上の地名とは国名、地理的地名、路線名など図形で表現することが困難なもので、日本の地図では漢字、かな、数字などで記載される[11]。
立体地図(りったいちず)、あるいは3次元地図(さんじげんちず)とは、地形の起伏(大縮尺の場合は建築物の高低を含む)を見る人に感じさせる地図の総称であり、大別すると平面の紙に記したもの、模型で起伏を表したもの、コンピュータのデータで高さの情報を持っているものがある。
隣接した視点からとった2枚の平面状の図を見ることによって、人間は脳内に立体的な像を再現することができるという立体視の技術によって作成された地図で、ステレオグラムとも称する。裸眼で見たり、赤色・青色の色眼鏡をかけて見る。この原理は写真測量法においては、標高が不明な2枚の航空写真から、写真内の地点の標高を求める際にも用いられる。
工作物で高さを表す。「浮き彫り」のことをレリーフと呼ぶことから、レリーフ地図ともいう。また、ジオラマと称することもある。児童・生徒の工作の場合など、等高線の形に切り取った厚紙を重ねて作成することもある。なお、地球儀を立体地図の一種として扱う場合もある。
コンピュータ内のデータとして3次元情報を持ち、これを3次元コンピュータグラフィックスの技術によって画面上に地図として表示する。コンピュータ地図の一般として拡大・縮小・移動(スクロール)ができるほか、立体視特有の操作として空中の一点を「目」の位置として、ここから視線を上下左右に移動して見ることができる場合が多い。
データは、離散的な点の3次元座標を数値標高モデル(DEM)の形式で持ち、ここから地表面をポリゴンで表すようにソフトウェア処理する場合と、はじめからポリゴン形式で持つ場合がある。カーナビゲーション用の地図などで都市の建物の3次元情報を持つ場合はポリゴン形式が多い。
インターネットによる地図配信は、ウェブサイトで閲覧するタイプと、専用ソフトウェアで閲覧するタイプに分けられる。
2006年のGoogle日本語版検索ランキングの1位は「地図」であり、インターネットにおいて最も主要なコンテンツとなった。
初期の地図配信サイトは、地図の閲覧に主を置いており、縮尺変更やスクロールの度に画面遷移が行われるなど操作性が優れたものは見受けられなかった。しかし、Google Mapsの登場以降、画面遷移のないスムーズな操作性の新世代地図サイトが登場し始めた。なお、Google Mapsの日本進出以前にMapionが実験サービス「マピオンラボ code:guriguri」としてスクロール地図の提供を行っている。新世代地図サイトは地図に属性を結びつけて表現されているものが多く、高い技術が要求されるためか、そのほとんどがベータ版である。
画面遷移のない地図配信の技術には主にAjaxや、Flashが使われる。特に、Flashによる地図配信はFlash 8・Flex 2がGIF・PNGの外部画像をサポートするまでは、一部の例外を除き登場していない。最近、呼称としてスクロール地図という言葉が定着してきた。
一部の地図サイトで、縮尺を表記していない場合があるが、これは基本的に誤りである。
使用される地図の形式は主に3つに分けられる。
ラスター形式の地図をそのまま配信する方法。サーバにほとんど負荷がかからない。
最も簡単でスピーディーな方法に思えるが、地図のデータ量が膨大になる・決められた縮尺の地図しか表示できない・座標計算が難しい・減色時に隣り合う地図と色合いが変わらないようにしなければならない・等、簡単ではない。
空中写真(衛星写真や航空写真)はこの形式になる。
ベクター形式の地図をサーバでラスター地図に変換[12]し配信する方法。ハイスペックなサーバでも変換に時間がかかる。
変換用のソフトをサーバにインストールする必要があるが、座標と縮尺を指定するだけで地図が表示できる。
地図サイト構築用ソフトとして販売されているものはこの形式が多い。
ベクター形式の地図をそのまま配信する方法。サーバにほとんど負荷がかからない。ラスター形式と異なり、一般的なWebブラウザのための共通のベクターグラフィックスデータ形式が未だ確立していないため、ブラウザ毎に個別の実装が必要になる。実装方法としては、ブラウザがネイティブでサポートしている個別の形式(一般的にはSVGとVML)を用いる方法と、専用のプラグインを用いる方法とがある。 レイヤ合成、レイヤ切り替え、クリッカブルマップ、拡大・縮小・回転表示の実現が比較的容易に可能で、印刷が最もきれいに行える形式であり、その標準的な配信手法の確立が待たれる。
国土地理院では電子国土背景地図を元にSVG形式の地図データを作成し、これを社会実験に用いることができるよう一般に公開している[1]。
地図のデータ部分をインターネットでダウンロードして地図を表示する。携帯電話においては地図を保存する容量が無いためアプリケーション地図ソフトは基本的にこの形式となる。
ウィキメディア・コモンズには、地図に関連するメディアおよびカテゴリがあります。 |
リンク元 | 「位置」「map」「位置づけ」「地図」「地図で表す」 |
拡張検索 | 「代謝マップ」「制限酵素マップ作成」 |
.