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フェノール樹脂(フェノールじゅし、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ベークライト、石炭酸樹脂)は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。
電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つ。耐油、耐薬品性も高いが、アルカリに弱い。また、これらの性能の割に比較的安価である。
ベークライトの一般名はポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド (polyoxybenzylmethylenglycolanhydride)。
フェノールとホルムアルデヒド (HCHO) を原料として触媒下において合成を行う。原料にはフェノールの他に、クレゾールなどのフェノール類に属する有機化合物を用いても同様の樹脂を合成できる。これらフェノール類の原料を用いたものを含めてフェノール樹脂と称する場合もある。
フェノール樹脂は合成時の触媒が酸性であるかアルカリ性であるかにより反応が異なり、用途により触媒が選択される。
酸触媒下で縮合重合させると、ノボラックと呼ばれる熱可塑性樹脂が得られる。ほとんどの場合は固形の樹脂である。ノボラック樹脂自身は加熱しても硬化しないため、硬化させて使用する場合にはヘキサメチレンテトラミンなどの硬化剤を用いる必要がある。
アルカリ触媒下で合成を行うとレゾール樹脂が得られる。通常、液状であることが多いが、高分子量化させた固形タイプのものもある。レゾール樹脂は自己反応性の官能基を有するため、加熱することによりそのまま硬化させることができる。
樹脂そのものを製品として成型することはまれで、通常はフィラーや繊維の連結材(バインダー)として用いられる。例えばパーティクルボードや、高圧メラミン化粧板のコアー層を構成するフェノールバッカー(クラフト紙にフェノール樹脂を含浸させたもの) [1] [2] 等である。この他、耐熱性が要求される自動車部品や、基板等に用いる絶縁体などとして電気製品に利用されている。イギリス軍の認識票としても採用されている。
住宅用途では、ポリスチレン系の住宅用断熱材に代わる素材として、旭化成が発泡フェノールフォームを開発し、ネオマフォームの商品名で販売している。しかし、ポリスチレン系と比べて耐火性能が優れている一方、(1) 吸水性が高く、(2) 高価であること、また (3) 水に弱く、 (4) 素材自体が酸性であるなど、使用にはある程度の知識が必要なようである。
また、レゾール樹脂は接着剤や塗料などの主成分として用いられる。
耐熱温度こそ150 - 180度[3]と高いが、フェノール樹脂製の容器は電子レンジには使えない。これはユリア樹脂やメラミン樹脂と同様、樹脂そのものがマイクロ波を吸収し発熱する[4]ためである。
フェノール樹脂を木質材料に含浸させ真空高温で焼成することで多孔性炭素材料のウッドセラミックスを製造することが出来る[5]。木質材料(廃材やおが屑など)に限らず従来であれば廃棄されていた搾りかすなど植物性のものも原料に使え、様々な性質を持つため環境的な素材としても期待されている。同様の手法で脱脂した米ぬかから作られたものはRBセラミックス[6]として実用化・製品化されている。
熱防御特性により大気圏再突入機のアブレータとしても使用される[7]。
ベルギー生まれのアメリカ人化学者、レオ・ヘンドリック・ベークランドが1907年にベークライト (Bakelite) を発明、フェノール(石炭酸)とホルマリンによって作り出された。フェノールとホルマリンの反応によってできる樹脂をフェノール樹脂と呼ぶ。この樹脂の発見は1872年まで遡るが、工業化に成功したのはベークランドである。1910年、生産を目的にベークライト社を設立し、そのフェノール樹脂をベークライトと命名した。
日本ではベークランド博士の親友であった高峰譲吉が特許権実施の承諾を受け、三共株式会社品川工場内に日本ベークライト株式会社の前身となる工場を大正3年に建設、ベークライトの試作を開始した。ベークライトは日本ベークライト株式会社の登録商標名であるが、標準規格品として石炭酸樹脂を指すフェノール樹脂の一般代名詞となった[8]。
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