出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/09/09 22:43:36」(JST)
パルスオキシメーター(pulse oximeter)とは、プローブを指先や耳などに付けて、侵襲せずに脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)をモニターする医療機器である。モニター結果を内蔵メモリーに記録できるものや腕時計のような小型のものもある。
動脈血の酸素飽和度を簡便に計測できるため、麻酔管理や手術中、ICUでの患者のモニタのために用いられるほか、在宅酸素療法の患者指導などにも用いられている。体に針を刺したり切ったりすること無くSpO2の測定を行う事が可能で、これにより心肺機能が常時正常であるかを知る事ができるため、予備的な健康診断手法として利用する事も可能である。小型・腕時計型のものでは、運動の健康的な範疇にあるものか、過度に負担を掛けていないかを判断するのに利用する向きもある。
近年では登山者が高度順化の目安として携帯型パルスオキシメータを利用する例もある。また、睡眠時を通して観測(データの記録)できる機器では、就寝中に呼吸が停止してSpO2が低下してしまう睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング診断にも利用される。
国際標準化機構(ISO)では、パルスオキシメータの標準規格として、ISO 80601-2-61:2011「Medical electrical equipment -- Part 2-61: Particular requirements for basic safety and essential performance of pulse oximeter equipment 医用電気機器 - パート2-61:パルスオキシメータ機器の基礎安全および基本性能の個別要求事項」を規定している。
日本光電工業株式会社の青柳卓雄、岸道男によって1974年に発明されたものである。 1974年3月29日、日本光電工業株式会社の青柳卓雄らにより、パルスオキシメーターの原理に関する特許「光学式血液測定装置」が出願され、それに遅れること1ヶ月弱の1974年4月24日、パルスオキシメーターの開発を独自に進めていたミノルタカメラ(現コニカミノルタ)より、「オキシメーター」の特許出願がなされた。
プローブは発光部と受光部(センサー)で構成されている。発光部は赤色光と赤外光を発し、これらの光が指先等を透過したもの(または反射したもの)を受光部(センサー)で測定する。
血液中のヘモグロビンは酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なるので、センサーで透過光や反射光を測定して分析することによりSpO2を測定することができる。(透過光・反射光全体のうち動脈血を透過したものと静脈血や軟部組織を透過したものの区別は、拍動のある成分が動脈血によるものであることを利用する。)
また、拍動のある脈波成分より脈拍数を計数している。
1977年にミノルタカメラ社(現:コニカミノルタセンシング社)の山西昭夫らによって、世界初の指先測定タイプのパルスオキシメータが商品化された。ミノルタカメラがアメリカにパルスオキシメーターを持ち込み、アメリカのバイオクス社・ネルコア社がその技術を改良し、麻酔中のモニターとしてパルスオキシメーターがまずアメリカで1980年代に定着した。初期のパルスオキシメーターは据え置き型(スタンドアローン)で、患者のベッドサイドでモニタリングできるものが主流であった。1990年代になって、ヨーロッパで小型でハンドヘルドタイプのものが開発された。日本ではミノルタカメラが1992年のハンドヘルドタイプのPULSOX-5を発売している。1993年に、久保田博南により小型化・ポータブルタイプの必要性が提唱された[1]。1997年に、日本のコニカミノルタセンシング社で腕時計タイプのものが商品化され、同時期以降、センサと本体を一体化して指につけられる超小型の装置が主流となった。
同機器では、プローブの取り付けも簡単で、また無侵襲であるため、近年ではコンビニエンスストア等に、診断と同機器の貸し出しを求める申込書が置かれ、自宅に機器を宅配便にて配達してもらい、同封の説明書に従って機器を取り付けて測定、これを所定の医院に宅配便で返送する事で診断を行う有料サービスも一部地域で始まっている。2000年頃より、睡眠時無呼吸症候群による電車の操作ミス事故や交通事故の報道により、同症状が社会的に認知されるにつれ、気にはなっているが検査入院をしている暇が無い人に利用されている模様である。また、酸素の少ない高地や航空機内での有用性が認識されつつあり、高山病予防などに役立つ機器として期待を集めている。(他の病状に対する検査キットも開発・提供されている)
拍動を感知することで飽和度を測定する動脈血とそうでないものを判別するため、拍動の検知ができない極度の低血圧、極度の末梢の血流低下、無拍動型の人工心肺装置使用時には正確な測定ができない。また光の透過率で飽和度を測定するこの装置の原理上一酸化炭素中毒、メトヘモグロビン血症などの場合も、SpO2を正確に測定できない。
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