出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/04/20 01:48:54」(JST)
ナフタレン | |
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IUPAC名 | ナフタレン |
別名 | ナフタリン |
分子式 | C10H8 |
分子量 | 128.18 |
CAS登録番号 | [91-20-3] |
形状 | 白色結晶 |
密度と相 | 1.16 g/cm3, 固体 |
相対蒸気密度 | 4.4(空気 = 1) |
融点 | 80 °C |
沸点 | 218 °C(昇華性あり) |
SMILES | c1ccc2ccccc2c1 |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
ナフタレン(ナフタリン、naphthalene)は、2個のベンゼン環が1辺を共有した構造を持つ多環芳香族炭化水素である。無色で昇華性を持つ白色結晶である。アセン類として最も単純な化合物。構造異性体として、7員環と5員環からなるアズレンがある。 ナフタリンの2008年度日本国内生産量は 197,828t、消費量は 114,075t である[1]。
目次
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ナフタレンはモノ置換体が2種類、ジ置換体は10種類あり、そのうち2種、9種については置換位置を示す接頭辞がつけられている。接頭辞はナフタレンまたはそのヘテロ置換複素環化合物で使用されることがあるが、IUPAC命名法では接頭辞ではなく位置番号を使う方法が推奨されている。
接頭辞 | 読み | 位置番号 |
---|---|---|
α- | アルファ | 1 or 4 or 5 or 8位 |
β- | ベータ | 2 or 3 or 6 or 7位 |
接頭辞 | 読み | 位置番号 |
---|---|---|
o- | オルト | 1,2位 |
m- | メタ | 1,3位 |
p- | パラ | 1,4位 |
ana- | アナ | 1,5位 |
ε- | エピ | 1,6位 |
kata- | カタ | 1,7位 |
peri- | ペリ | 1,8位 |
pros- | プロス | 2,3位 |
amphi- | アンフィ | 2,6位 |
ナフタレンはベンゼンよりもはるかに求電子置換反応を受けやすく、得られる化合物には染料の中間体として重要なものが多い。
ナフタレンはパラジクロロベンゼンと同様に、防虫剤として利用される。また現像済みの写真フィルムは化学反応を起こして退色・変色を起こすことがあるので、ナフタレンを成分とする防虫剤から離して保管する必要がある。
殺虫剤として1954年1月25日、忌避剤として同年8月2日に農薬登録を受けたが、殺虫剤としては1957年1月25日、忌避剤としては1971年11月18日に登録失効した。
ベンゼン上で起こる通常の反応はナフタレンでも起こる。芳香族求電子置換反応の位置選択性は反応によって異なるが、α位の置換は速度論的に、β位の置換は熱力学的に有利とされる。ニトロ化など、加熱を必要としない求電子反応はもっぱら α位で起こる。スルホン化など、加熱下に起こる可逆的な求電子置換反応については β-置換体を優位に与える場合がある。これは、立体障害の低い β-置換体のほうが熱力学的に安定であることによる。
ナフタレンを適切な条件で酸化するとナフトキノンを生成する。水素化によりテトラリンやデカリンを与える。
ナフタレンから水素をひとつ取り去った1価の置換基は ナフチル基 (naphthyl group) と呼ばれる。取り去られた水素の位置により 1-ナフチル基と 2-ナフチル基がある。
ナフタレンにさらされると、赤血球が障害を受け破壊される。赤血球の再生は可能だが、子供が誤ってナフタレンを含んだ防虫剤や防臭剤を口に入れた場合に問題になりやすい。極端な疲労感、食欲不振、不眠、チアノーゼといった症状が現れる。大量のナフタレンに暴露されると、吐き気、嘔吐、下痢、血尿、黄疸を引き起こす。万一、誤食があった場合は、病院に行くこと。よく有毒物質を飲んだとき牛乳を飲ませる応急処置をするが、ナフタレンの場合は牛乳を飲ませてはいけない。ナフタレンは脂溶性のため体内に吸収され易くなってしまい危険である。
アメリカ合衆国では、国家毒性プログラム (NTP) がラットとマウスを用いたナフタレンの毒性試験を実施、1992年と2000年に結果が公表された。試験期間は2年間、土日を除く日にナフタレンの蒸気を雌雄のラットとマウスに暴露した、結果、雌雄のラットに於て鼻の腺腫と神経芽細胞腫の発生の増加を根拠として発癌性の活動の証拠を示したとした、またメスのマウスに於て肺の肺胞と細気管支の腺腫の発生の増加を根拠とし発癌性の活動の証拠を幾らか示したとした。オスのマウスに於ては発癌性の活動の証拠は得られなかった。最大濃度30ppm(純度99%以上)のナフタレン蒸気に1週間に5日、1日6時間暴露したところ、オスのマウスに対して10ppm未満では発がん性を示す証拠は得られなかった。性別とは無関係に10ppmと30ppmでマウスに肺胞腺腫と気管支腺腫の増加が見られた。ラットでは性別とは無関係に呼吸器の腺腫と 嗅神経の上皮性神経芽細胞腫の発生率が増加した。いずれのケースにおいても、がんに起因しない呼吸器の炎症が高頻度かつ広範囲の濃度で見られた[2]。 またアメリカ国立衛生研究所(NTPの上部組織)は2005年の11回発癌性物質報告書(11th Report on Carcinogens)からナフタリンを「人間に対する発癌性物質と正当に予測される(Reasonably anticipated to be a human carcinogen)」物質としてリストしている。
国際癌研究機構 (IARC) は、2002年にナフタレンをヒトに対する発癌性の疑いがある物質(Group2B)として位置づけた[3]。同機構ではナフタレンに対する急性暴露は、ヒト、ラット、ウサギ、マウスにおいて白内障の原因となること、成体以外では経口暴露、吸入暴露、胎児期の間接暴露により、溶血性貧血が起こることを指摘している。
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