- 英
- sorivudine
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/25 23:19:32」(JST)
[Wiki ja表示]
|
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
ソリブジン
|
IUPAC命名法による物質名 |
5-[(E)-2-bromoethenyl]-1- [(2R,3S,4S,5R)-3,4-dihydroxy-5-(hydroxymethyl)oxolan-2-yl] pyrimidine-2,4-dione |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
? |
法的規制 |
? |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
代謝 |
Viral thymidine kinase |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
77181-69-2 |
ATCコード |
J05AB15 |
PubChem |
CID 5282192 |
KEGG |
D01734 |
別名 |
BV-araU,Bromovinyl araU,5-Bromovinyl-araU |
化学的データ |
化学式 |
C11H13BrN2O6 |
分子量 |
349.14 g/mol |
ソリブジン (sorivudine) は、ウイルス感染症の治療薬で、特に単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルスに有効である。1979年(昭和54年)にヤマサ醤油により合成され、1993年(平成5年)9月3日に日本商事(現・アルフレッサ)より商品名ユースビル錠が上市された。
エーザイが販売提携していた。なお、ブリストル・マイヤーズ スクイブが海外での販売権を持っていた(商品名Brovavir)。
目次
- 1 効果・効能
- 2 特徴
- 3 薬理
- 4 副作用
- 5 5-FUとの併用
- 6 参考資料
- 7 関連項目
|
効果・効能
- ソリブジンは単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1)、水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV)、EBウイルスに効果のある抗ヘルペスウイルス剤で、当時のヘルペス治療の第一選択薬だったアシクロビル (Zovirax、Activir) よりVZVへのウイルス活性が強い。また、有効な治療方法がないEBウイルスにも効果がある。
- 消化管吸収に優れ、消化管から吸収された後は大半が分解されることなく尿として排出される。
- 帯状疱疹に対する服用量は成人1日50mg3回で、アシクロビル内服(1日4g)の20分の1以下である。
特徴
ソリブジンがアシクロビルよりHSV-1、VZV、EBウイルスに強い活性を示すのは、ソリブジンはチミジンのアナログであり、アシクロビルは非環状グアニンヌクレオシドであり構造を異にすることと、アシクロビルの活性化とは異なり、ソリブジン一リン酸は細胞のキナーゼでは更にリン酸化されず、ソリブジンの2段階目のリン酸化もウイルスのチミジンキナーゼにより行われることによる。 HSV-2のチミジンキナーゼはチミジル酸キナーゼ活性が微弱なためソリブジンのHSV-2に対する作用は著しく弱い。
薬理
ソリブジンはチミジンキナーゼでリン酸化されて活性体となりウイルスのDNAに取り込まれ、ウイルスのDNAポリメラーゼを阻害しDNAの複製を失敗させることでウイルスの増殖を阻害する。
副作用
副作用発現率は3.5%で内訳は発熱、悪心・嘔気、嘔吐、食欲不振、上腹部痛、発疹となっている。しかし、このデータには後述する5-FU系代謝拮抗薬との相互作用による副作用は含まれていない。日本国内では治験段階で3人、1993年9月の発売後1年間に15人の死者を出している。
5-FUとの併用
ソリブジンは体内でブロモビニルウラシルに代謝される。このブロモビニルウラシルはフルオロウラシル (5-FU) の代謝酵素であるDPD (dihydropyrimidine dehydrogenase) と結合して不可逆的に阻害し、5-FUの血中濃度を上げ、5-FUの副作用である白血球減少、血小板減少などの血液障害を引き起こす。後述する薬害事件の生じる原因であるが、相互作用の生じることは構造式からも予測可能であり、治験設定段階で5-FU系代謝拮抗薬を併用禁忌にすれば薬害事件を防ぐことができた。
ソリブジン薬害事件
- 1979年(昭和54年)、ヤマサ醤油が「ソリブジン」を合成し、1985年(昭和60年)から日本商事と共同開発を進めた。
- 1993年(平成5年)9月3日、抗ウイルス剤の商品名「ユースビル」を発売。
- しかし、発売後1ヶ月足らずでフルオロウラシル系抗癌剤との併用で重篤な副作用が発生する(エーザイ側から市販後1例目の副作用情報が寄せられたとされている)。
- 10月8日に中央薬事審議会の副作用報告調査会が開催され、厚生省(現・厚生労働省)から医療機関に対する「緊急安全性情報(ドクターレター)」の配布指示がある。10月2日に「相互作用で7人が重い副作用、うち3人が死亡」と報道機関へ発表。
- 10月3日、大阪証券記者クラブにて重篤な副作用の発現と製品の一時出荷停止を発表。代理店に対して一時出荷停止を指示。
- 12日に「自主的安全性情報」、13日に「緊急安全性情報」を医療機関に配布し、11月19日より自主回収を実施。結果23例で副作用発現(うち死亡14例)となった。
- 1994年(平成6年)3月5日、「ソリブジン」による同社株のインサイダー取引疑惑が持ち上がる。「ソリブジン」の相互作用による副作用で死亡事故が発生したことが公表されるまでに、日本商事の役職員・社員と、ユースビルに関わったエーザイ社員、さらには取引先の医師やその家族がそれぞれ自己保有している日本商事やエーザイの株式を売却し株価下落の損失を回避したことが証券取引法違反(インサイダー取引禁止)に問われた。この為、日本商事社長の服部孝一が辞任する。
なお、「ユースビル」は薬害と言われながらも日本商事とエーザイの自主回収レベルであり、当時の厚生省から承認取り消しはされなかった。つまり、併用禁忌の徹底や安全性情報の提供など方策を練れば再発売が可能な道筋をつけていたのである。しかし、1995年に製品在庫や原薬を処分し、日本商事側が自主的に承認を取り下げてソリブジンは市場から完全に抹消されると共に、長きに亘って日本での帯状疱疹治療薬はアシクロビル系統のみとなっている。
参考資料
関連項目
- 抗ウイルス薬
- アシクロビル - 抗ヘルペスウイルス薬
- バラシクロビル - 抗ヘルペスウイルス薬。アシクロビルのプロドラッグ。
- ペンシクロビル - 抗ヘルペスウイルス薬
- ファムシクロビル - 抗ヘルペスウイルス薬。ペンシクロビルのプロドラッグ。
- ブリブジン - 抗ヘルペスウイルス薬。ブロモビニルウラシルのデオキシヌクレオシド
- フルオロウラシル
Japanese Journal
- 実例から学ぶ・医薬品のライフサイクルマネジメント(第11回)ソリブジンと5-FU系抗がん剤併用による重篤な骨髄抑制(2)
- 実例から学ぶ・医薬品のライフサイクルマネジメント(第10回)ソリブジンと5-FU系抗がん剤併用による重篤な骨髄抑制(1)
Related Links
- ソリブジン物語:この世から消えた有用な医薬品 ソリブジン事件とは、帯状疱疹治療薬ソリブジンと抗がん剤フルオロウラシルを併用した患者さんで、白血球や血小板が激減するなどの重篤な血液障害が発生した薬害事件のことです。
- 1993年10月にソリブジン薬害事件の最初の症例が報告されました。 ウィルス感染症の治療薬であるソリブジンは、単純ヘルペスウィルス、水痘、帯状疱疹ウィルス、EBウィルスなどの有効とされています。
- ソリブジン事件とは、ソリブジンと5-フルオロウラシルを併用することによって、重篤な副作用を生じ、最終的に日本で10数名の患者さんが亡くなられた事件である。 出典:Wikipedia「ソリブジン」 出典:Wikipedia「フルオロウラシル ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- sorivudine incident
- 関
- ソリブジン
- 参考1
- 1993年に日本で起こった薬害。
- 抗ウイルス薬の新薬として市販されたソリブジン(sorivudine, 1-b-D-arabinofuranosyl-(E)-5-(2-bromovinyl)uracilは水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス作用が高く、帯状疱疹の治療薬として期待されていた。
- 5-フルオロウラシル(5-FU)との併用により副反応が出現し、死亡を出すに至った。
- 副作用の発現機序は、ソリブジンの代謝産物であるBVUにより5-FUの代謝がブロックされ、血中5-FU濃度が致死量を上回ることによる。
参考
- 1. [free PDF][Molecular toxicological mechanism of the lethal interactions of the new antiviral drug, sorivudine, with 5-fluorouracil prodrugs and genetic deficiency of dihydropyrimidine dehydrogenase].
- Watabe T, Ogura K, Nishiyama T.SourceDepartment of Drug Metabolism and Molecular Toxicology, School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Science, 1432-1 Horinouchi, Hachioji City, Tokyo 192-0392, Japan. watabet@ps.toyaku.ac.jp
- Yakugaku zasshi : Journal of the Pharmaceutical Society of Japan.Yakugaku Zasshi.2002 Aug;122(8):527-35.
- In 1993, there were 18 acute deaths in Japanese patients who had the viral disease herpes zoster and were treated with the new antiviral drug sorivudine (SRV, 1-beta-D-arabinofuranosyl-(E)-5-(2-bromovinyl)uracil). All the dead patients had received a 5-fluorouracil (5-FU) prodrug as anticancer chemo
- PMID 12187768
- 2. [free PDF]Lethal drug interactions of sorivudine, a new antiviral drug, with oral 5-fluorouracil prodrugs.
- Okuda H, Nishiyama T, Ogura K, Nagayama S, Ikeda K, Yamaguchi S, Nakamura Y, Kawaguchi Y, Watabe T.SourceDepartment of Drug Metabolism and Molecular Toxicology, School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Science, Japan.
- Drug metabolism and disposition: the biological fate of chemicals.Drug Metab Dispos.1997 May;25(5):270-3.
- Rats were orally co-administered sorivudine (SRV: 1-beta-D-arabinofuranosyl-(E)-5-(2-bromovinyl)uracil), a new oral antiviral drug for herpes zoster, with the oral anticancer drug tegafur (FT: 1-(2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil as a prodrug of 5-fluorouracil (5-FU) once daily to investigate a toxi
- PMID 9152608
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%96%E3%82%B8%E3%83%B3