硝酸イソソルビド
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/11/15 11:14:29」(JST)
[Wiki ja表示]
硝酸イソソルビド(しょうさんイソソルビド)は狭心症の治療薬として用いられる硝酸エステル製剤である。一般名として、ヒドロキシ基の1つが硝酸エステルとなっている誘導体を含む製剤である一硝酸イソソルビドと2つとも硝酸エステル化されている二硝酸イソソルビドがあり、単に一般名で硝酸イソソルビドといった場合は後者(ビス硝酸エステル)を指す。
前者、後者ともに勃起不全治療薬のクエン酸シルデナフィル(商品名バイアグラ)、塩酸バルデナフィル(商品名レビトラ)との併用は、過度の血圧降下となることがあり禁忌である。
一硝酸イソソルビド
一硝酸イソソルビド
|
IUPAC命名法による物質名 |
8-nitrooxy-2,6-dioxabicyclo[3.3.0]octan-4-ol |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C (USA) |
法的規制 |
? |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
>95% |
血漿タンパク結合 |
<5% |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
5時間 |
排泄 |
Renal: 93% |
識別 |
CAS登録番号 |
16051-77-7 |
ATCコード |
C01DA14 |
PubChem |
CID 27661 |
DrugBank |
APRD00528 |
KEGG |
D00630 |
化学的データ |
化学式 |
C6H9NO6 |
分子量 |
191.139 g/mol |
一硝酸イソソルビド(いちしょうさんイソソルビド、英: isosorbide mononitrate, ISMN)はイソソルビドのヒドロキシ基の1つが硝酸エステルとなっている誘導体。 各種の後発医薬品も利用でき、日本国内では次に示す商品名で販売されている。
- アイスラール錠、アイトロール錠、アイロクール錠、イソニトール錠、イソモニット錠、ソプレロール錠、タイシロール錠
肝初回通過効果 (first pass effect) による化学的修飾を受けにくい。生体内利用率が100%に近い。生体内利用率 (bioavailability)、薬物動態 (pharmacokinetics) に優れており、欧米市場ではマーケットシェアを伸ばしてきた。
重大な副作用は肝機能障害、黄疸などである。
二硝酸イソソルビド
二硝酸イソソルビド
|
IUPAC命名法による物質名 |
1,4:3,6-dianhydro-2,5-di-O-nitro-D-glucitol |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C(US) |
法的規制 |
℞ Prescription only |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
10–90%, average 25% |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
1時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
87-33-2 |
ATCコード |
C01DA08 D03AX08 |
PubChem |
CID 3780 |
DrugBank |
APRD00455 |
別名 |
(3R,3aS,6S,6aS)-hexahydrofuro[3,2-b]furan-3,6-diyl dinitrate |
化学的データ |
化学式 |
C6H8N2O8 |
分子量 |
236.136 g/mol |
SMILES
- [O-][N+](=O)O[C@H]1CO[C@@H]2[C@H](O[N+]([O-])=O)CO[C@H]12
|
二硝酸イソソルビド(にしょうさんイソソルビド、英: isosorbide dinitrate, ISDN)は、イソソルビドのヒドロキシ基が2つとも硝酸エステルとなっている誘導体。
各種の後発医薬品も利用でき、日本国内では次に示す商品名で販売されている。
- アパティアテープ、アンタップR、イソコロナールRカプセル、イソピット、L-オーネスゲン錠、カリアント錠、カリアントTPカプセル、コンスピット錠、サークレス注、サワドールL錠、サワドールテープS、ジアセラL錠、硝酸イソソルビド錠(ツルハラ) 、 硝酸イソソルビドテープ「EMEC」 、ニトラステープ、ニトロバイド錠、ニトロフィックス、ニトロール錠、ニトロールRカプセル、ニトロール注、ニトロールスプレー、フランドル、フランドルテープS、ヘルピニン-Rカプセル、リファタックL錠、リファタックテープS
経口剤としては初回通過効果を受けるため、徐放化や貼付剤として開発され、臨床の場で用いられている。
関連項目
- ニトログリセリン
- イソソルビド
- 製品情報 ニトロール錠5mg(エーザイ)
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Related Links
- 使用制限等. 1. 重篤な低血圧、心原性ショック、Eisenmenger症候群、原発性肺 高血圧症、右室梗塞、脱水症状、神経循環無力症、閉塞隅角緑内障、類薬で過敏症の 既往歴、本剤成分又は含有成分で過敏症の既往歴、頭部外傷、脳出血、 ...
- 用法/用量, 1.急性心不全:本剤を注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖 注射液等で希釈して0.05~0.001%溶液とし、硝酸イソソルビドとして1時間あたり1 .5~8mgを点滴静注する。投与量は、患者の病態に応じて適宜増減するが、増量は1 ...
Related Pictures
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
サークレス注0.05%(5mg)
組成
成分・分量(1管(10mL)中)
添加物
- D-マンニトール(0.5g)、クエン酸水和物、リン酸水素ナトリウム水和物
禁忌
- 重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用により、更に血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。]
- Eisenmenger症候群又は原発性肺高血圧症の患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
- 右室梗塞の患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
- 脱水症状のある患者[血圧低下によりショックを起こすことがある。]
- 神経循環無力症の患者[本剤の効果がなく、本剤投与により血圧低下等があらわれることがある。]
- 閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
- 硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。]
- ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)を投与中の患者[併用により降圧作用が増強され、過度に血圧を低下させることがある。](「相互作用」の項参照)
効能または効果
- 通常、成人には、本剤を注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖注射液等で希釈して0.1〜0.001%(ただし、0.05%注の場合は0.05〜0.001%)溶液とし、硝酸イソソルビドとして1時間あたり1.5〜8mgを点滴静注する。投与量は、患者の病態に応じて適宜増減するが、増量は1時間あたり10mgまでとする。
- ○不安定狭心症
- 通常、成人には、本剤を注射液そのまま、又は生理食塩液、5%ブドウ糖注射液等で希釈して0.1〜0.001%(ただし、0.05%注の場合は0.05〜0.001%)溶液とし、硝酸イソソルビドとして1時間あたり2〜5mgを点滴静注する。投与量は患者の病態に応じて適宜増減する。
- ○冠動脈造影時の冠攣縮寛解
- 通常、成人には、冠動脈造影時に本剤を注射液そのまま、硝酸イソソルビドとして5mgをカテーテルを通し、バルサルバ洞内に1分以内に注入する。なお、投与量は患者の症状に応じて適宜増減するが、投与量の上限は10mgまでとする。
- 冠動脈造影時に冠攣縮を誘発した場合は、迅速に攣縮寛解のための処置を行うこと。また、まれに完全閉塞寛解時にreperfusion injuryによると考えられる心室細動などの危険な不整脈や血圧低下を起こすことがあるので、電気的除細動などの適切な処置を行うこと。
慎重投与
- 低血圧の患者[更に血圧を低下させるおそれがある。]
- 左室充満圧の低い患者[血圧低下及び心拍出量低下のおそれがある。]
重大な副作用
ショック
頻度不明
- ショックがあらわれることがあるので、このような場合には、投与を中止し、昇圧剤投与等の適切な処置を行うこと。
心室細動、心室頻拍
頻度不明
- 冠動脈造影時の冠攣縮寛解に際し、reperfusion injuryによると考えられる心室細動などの危険な不整脈があらわれることがある。このような場合には、電気的除細動などの適切な処置を行うこと。
薬効薬理
薬理作用
- 静脈(容量血管)を拡張することにより、静脈還流の減少、肺動脈楔入圧及び左室拡張終期圧の低下(前負荷の軽減)をもたらし、同時に末梢動脈を拡張して、総末梢血管抵抗を減少(後負荷の軽減)させることにより、心筋の酸素需要を軽減させる。7)
- 急性心筋梗塞等に伴う急性心不全に対して速やかに血行動態を改善し、肺うっ血や呼吸困難等を軽減、消失させることが認められている。8)
- 冠動脈を拡張し冠血管抵抗を減少させるとともに側副血行路も拡張し、虚血部心筋への酸素供給を増加させる。その効果はニトログリセリンより弱いが、持続時間は長い。9)
作用機序
- 血管平滑筋に直接作用して血管を拡張する。9)
- cGMP産生作用が認められている。10)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- 硝酸イソソルビド(Isosorbide Dinitrate)
化学名
- 1,4:3,6-Dianhydro-D-glucitol dinitrate
分子式
分子量
性状
- 白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはないか、又はわずかに硝酸ようのにおいがある。
N,N-ジメチルホルムアミド又はアセトンに極めて溶けやすく、クロロホルム又はトルエンに溶けやすく、メタノール、エタノール(95)又はジエチルエーテルにやや溶けやすく、水にほとんど溶けない。
急速に熱するか又は衝撃を与えると爆発する。
分配係数
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- vasodilator、vasodilatator
- 関
- 血管拡張薬
商品
[★]
- 英
- isosorbide dinitrate
- 同
- 二硝酸イソソルビド
- 商
- 硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビドテープ、ニトラステープ、イソコロナールR、イソピットテープ、カリアントSR、ニトロールR、ニトロールスプレー、ニトロール、フランドルテープ、フランドル (2020/5/9)
- L-オーネスゲン、アパティア、アンタップ、イソコロナール、イソピット、カリアントSR、サークレス、サワドール、ジアセラL、ニトラス、ニトロール、フランドル、リファタック、一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビド
- 関
- 一硝酸イソソルビド、血管拡張剤。硝酸薬
分子式
薬効薬理
- 硝酸イソソルビドはニトログリセリン同様、構造中より一酸化窒素(NO)を放出し、細胞内cGMP量を増加させることで血管平滑筋を弛緩させる。その結果、心臓に対する前後負荷が軽減され、うっ血性心不全の血行動態が改善される。また、比較的太い冠動脈と共に側副血行路も拡張するため、冠血流量は増大する。静脈血管に選択性が高いが、血圧は下降する。効果発現はニトログリセリンより遅く、持続は長い。
適応
フランドルテープ
- 狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患
- 狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。
禁忌
フランドルテープ
- 血管拡張作用により更に血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。
- 血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。
- 5. 硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 6. ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)を投与中の患者
- 本剤とこれらの薬剤との併用により降圧作用が増強され、過度に血圧を低下させることがある。
添付文書
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2171011G1123_1_04/2171011G1123_1_04?view=body
- http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2171700S1095_1_03/2171700S1095_1_03?view=body