出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/10/04 06:58:13」(JST)
キイロタマホコリカビ | ||||||||||||||||||||||||
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キイロタマホコリカビの生活環
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Dictyostelium discoideum Raper, 1935 | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
キイロタマホコリカビ |
キイロタマホコリカビは細胞性粘菌の一種である。モデル生物として広く研究されている。
食糧(通常は細菌)が得られる時にはそれぞれアメーバ状になり個体で捕食を行う。しかし食糧がない時には偽変形体、あるいはナメクジ状の移動体と呼ばれる多細胞集合体を形成する。
移動体には前後の区別があり、光や温度変化に反応し、移動することもできる。
適当な条件下では成熟した移動体は子実体を作り、柄に支えられた1個から複数個の胞子塊を持つ。これらの胞子は抵抗性の細胞壁に守られた非活性型の細胞で、食糧が供給されると再びアメーバ状になる。Acytostelium 属では子実体はセルロースでできた柄で支えられているのに対して、タマホコリカビ属では柄は細胞からできている。元はアメーバだった細胞で大部分ができていることもある。少数の例外はあるが、これらの細胞は柄の形成中に死滅し、スラッグの部分と子実体の部分は明確に細胞間連絡を行っている。
一般に、アメーバの集合は流れを一点に集めるように行われる。アメーバは糸状の仮足を使って動き、別のアメーバが出した化学物質に引き寄せられる。タマホコリカビ属では、集合はcAMPの信号で行われるが、別の種では他の化学物質を使っている。Dictyostelium purpureum 種では、集合は距離的な近さではなく遺伝的な近さによって行われる。
タマホコリカビ属、特にキイロタマホコリカビは分子生物学及び遺伝学、発生学などのモデル生物として扱われ、細胞間連絡、分化、アポトーシスの例として研究されている。
キイロタマホコリカビの研究データの多くはオンラインサイトDictyBaseで入手できる。
この生物がモデル生物として非常に重視されたのは、主として分化の機構を調べる材料としてである。分化の機構は発生生物学における中心的な課題であり、生物学全体から見ても重要な問題であるが、多細胞生物におけるそれは複雑で扱いにくい。それに対して、この生物では集合した細胞群は胞子細胞と柄の細胞に分化する。つまり分化の結果がたった2通りしかない。しかも、その分化は集合 - 移動から子実体形成に至る時間の中で起きる事が確実なのである。言い換えれば集合し、移動体となり、そして子実体になり始めるまでの間に分化の開始から終了までの起きる。その上に微生物であるから培養さえすればいつでも実験が可能で、その点でも扱いやすい。それも含め、この現象を絞り込むのにこれ以上に好適な材料はそうはない、という判断である[1]。
ただし、結果として、これらの研究は大きな成果を生み出したとは言い難く、次第にその研究熱は冷めていった。
アメーバの集合のメカニズムは、cAMPをシグナル分子としている。コロニーの創始者となる一つの細胞がストレスへの応答でcAMPを分泌し始める。
他の細胞はこのシグナルを受け取り、以下の2つの方法で応答する。
これは、シグナルを周囲のアメーバに中継し、cAMP濃度の最も高い所へ移動させるためである。
個々の細胞の集合の機構は次のようになっている。
高濃度の細胞内cAMPが細胞外cAMP受容体を不活性化させるため、個々の細胞は振動しているように見える。 この作用でコロニーに集合する際に美しい螺旋を描くように見え、ベロウソフ・ジャボチンスキー反応を思い起こさせる。
キイロタマホコリカビの全ゲノムは遺伝学者ルドウィグ・エイシンガーらが2005年にネイチャー誌で公表した。
ヒトゲノムが24の染色体に25000の遺伝子があるのに対し、タマホコリカビ属のゲノムは6つの染色体に12500もの遺伝子を持つ。コドンの3番目の塩基にはアデニンとチミンが多く、AT含量は77%に達する。ヒトではトリヌクレオチドリピート病を引き起こすトリヌクレオチドのタンデムリピートが多く含まれている。
1935年にノースカロライナ州の森で初めて見つかった当初は、タマホコリカビ属は下等菌類に分類され、後に原生生物界に分類された。
1990年代では、多くの科学者が今の分類を支持している。 キイロタマホコリカビのゲノムはこれらの菌類よりも動物や植物のものに近い。
1. The genome of the social amoeba Dictyostelium discoideum (2005) Nature 435, 43-57
2. Dictyostelium (2007)
3. Low Society (2004)
リンク元 | 「細胞性粘菌」「Dictyostelium discoideum」 |
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