出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/05/17 20:54:10」(JST)
「カバー」のその他の用法については「カバー (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
カバー、カヴァー(英: cover)とは、ポピュラー音楽の分野で、他人が発表した曲を演奏・歌唱して発表することである。元は代役を意味する言葉である。本人が発表した曲の場合はセルフカバーとも表すがこれは和製英語で本来の意味とは異なる。
洋の東西、場所を問わず、時間を越えてある楽曲が複数の歌手に共有される現象である。動機としては、カバーしようとする歌手がその楽曲を純粋に好んで歌うため・持ち歌不足を補うため・他人への提供楽曲をファンや音楽会社の要望で録音を行なうため・有名な曲をカバーすることで宣伝効果が得られるため、等々がある。そのため、歌詞やタイトルが変更されることもある。
日本音楽著作権協会(JASRAC)の管理楽曲であれば、JASRACに申請し所定の著作権使用料を支払う事でカバーできる。ただし、原曲に新たに編曲(アレンジ)を加えて使用する場合は注意を要する。楽曲を編曲する権利(翻案権)は著作権者が専有しており(著作権法27条)、著作者は自身の「意に反する」改変を禁じる権利(同一性保持権)を有している(著作権法20条)。これらのJASRACが管理していない権利(著作者人格権、楽曲の翻案権など)については、それぞれの権利者に許諾を得る必要がある。そのため、PE'Zの「大地讃頌」のように、編曲に対して著作者である佐藤眞から同一性保持権の侵害が申し立てられた結果、CDの販売停止と同曲の演奏禁止という事態に発展した事例もある。
20世紀初頭の初期のレコード産業では、他社のヒットレコードを自社のアーティストに録音させて後追いヒットを狙うことは当たり前に行われていた。また、1950年代のロックンロールの初期のヒットレコードは、アフリカ系アメリカ人音楽家の作品を白人聴衆むけに焼きなおしたものが多かったが、これらは当時カバーであるという意識はされていなかった。
1970年代以降、多くのJ-POP楽曲は香港や台湾の業者が新歌詞でカバーし、ヒットになることもめずらしくない。たまに、複数の歌詞で、あるいは複数の歌手が同じ曲をカバーすることもある。
1971年、尾崎紀世彦は全曲洋楽カバーによるファーストアルバム『尾崎紀世彦ファースト・アルバム』をリリース、オリコンチャート2位のヒットとなる。
1975年、かぐや姫の「なごり雪」をイルカがカヴァーし大ヒットする。
1977年、吉田拓郎のカバーアルバム『ぷらいべえと』がカバーアルバムとして初のオリコン1位を獲得[1]。
1979年、西城秀樹がヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」を「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」としてカバーし大ヒット。洋楽のカバー曲として初めて日本歌謡大賞を受賞した。これを切っ掛けとして1980年代に欧米のディスコ・ミュージックに日本語詞を付けるカバー曲が流行した。
1980年代末〜1990年代前半には欧米のアーティストがJ-POPの楽曲をカバーしたいわゆる「逆カバー」がブームになった。1990年に発売されたA.S.A.P.が松任谷由実の楽曲をカバーしたアルバム『GRADUATION』は30万枚を売り上げた[2]。
1992年、ドリー・パートンの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を、ホイットニー・ヒューストンが映画『ボディガード』の主題歌としてカバーし大ヒットする。
1994年、中森明菜がカバーアルバム『歌姫』を発売、30万枚のヒット。2002年と2004年には続編も発表され、累計で100万枚を売り上げる[3]。
2000年代初頭の日本の音楽業界ではCD不況の影響を受けてCDが売れないため、レコードを多く買っていた団塊の世代を狙った形での過去のヒット曲のカバーが非常に増えている。2000年代初頭の日本の音楽業界におけるカバーヒットのはしり的な作品に、2001年にウルフルズやRe:Japanらによってヒットした『明日があるさ』がある。同年には井上陽水のカバーアルバム『UNITED COVER』もヒットし、カバーブームのきっかけとなったとされる[4]。
2005年9月に発売された、徳永英明が女性アーティストの曲をカヴァーしたアルバム『VOCALIST』は、日本ゴールドディスク大賞『企画アルバム・オブ・ザ・イヤー』を受賞。『VOCALIST 2』『VOCALIST 3』『VOCALIST 4』も含めて大ヒットした。
2000年代後半には、J-POPの楽曲をボサノヴァやレゲエ風のソフトアレンジでカバーしたアルバムが多く発売される。代表的なアーティストとしてSOTTE BOSSEがある[5]。
2006年、アリスターが日本向け企画アルバムとして発売した『Guilty Pleasures』がヒットし、欧米アーティストがJ-POPの楽曲をカバーした作品が再び注目されるようになる[2]。2008年11月元MR.BIGヴォーカリスト、エリック・マーティンによる日本の女性ヴォーカルの曲をカヴァーしたアルバム『MR.VOCALIST』が話題になる[6]。
2010年には男性デュオコブクロが40万枚限定で『ALL COVERS BEST』を発売し、オリコンチャートの初動売り上げで29.1万枚を記録。同チャートにてカバーアルバム史上最高の初動売り上げとなった。
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