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この項目では、昇降機について説明しています。
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エレベーター(米:Elevator, 英: Lift)とは人や荷物を載せた箱を垂直(または斜め・水平)に移動させる昇降機である。日本では、人が乗れない小荷物専用のものはリフトと呼ぶことが多い(英語では英米ともリフトを dumbwaiter と呼ぶ。建築基準法でもかつてはそう記載されたが、dumb が卑語であるためか、small freight elevator[小荷物専用昇降機]に変更されている)。
エレベーターはすでに紀元前から存在し、アルキメデスがロープと滑車で操作するものを開発していた。中世ヨーロッパでも、滑車を用いた巻上機があり、一部で利用されていた。17世紀に入ると、釣り合いおもり(カウンターウェイト)を用いたものが発明された。
19世紀初頭には、水圧を利用したエレベーターがヨーロッパに登場し、工場などで実際に使用された。また1835年に蒸気機関を動力として利用したものが現れた。動力式エレベータは最初にイングランドで導入され、1840年代にはアメリカの工場やホテルでも導入が広がった[1]。ただし、水力や蒸気機関を用いたエレベーターは、非常に速度が遅く、安全性の問題があった。
これに解決の糸口を与えたのは、アメリカのエリシャ・オーチス (Elisha Graves Otis、1811-1861) である。彼は、1853年のニューヨーク万国博覧会において、逆転止め歯形による落下防止装置(調速機、ガバナマシン)を取り付けた蒸気エレベーターを発表した。オーチスは、来場客の面前で、吊り上げたエレベーターの綱を切ってみせ、その安全性をアピールした。このエレベータはニューヨーク水晶宮 (en) に設置されていた[2]。
また水力式や蒸気機関式は、冬季に水が凍結すると運行に支障が出たが、1889年に電動機式のエレベーターの開発以降、電気の供給安定とともにエレベーターの動力源として電動式が主流となった。
電動式エレベーターは制御機構の高度化と建物内の高速な垂直方向の流通アクセス性の向上により、超高層建築物の建設の追い風をもたらした。
1880年代以降はアメリカ合衆国のシカゴとニューヨークで高層ビルの建築競争が始まる。特に1920年代にはニューヨーク市マンハッタン地区ではクライスラービルが高層ビルとして初めてエッフェル塔の高さを上回るほどとなり、世界一のビルの高さを競う新築超高層ビルの建設ラッシュが起き、超高層ビル建設の動きはのちに世界的に広がった。
なお、1890年11月10日に東京・浅草の展望台「凌雲閣」に日本初の電動式エレベータが設置されたことにちなみ、日本エレベータ協会は、11月10日を「エレベータの日」としている[6]。
一般に、エレベーターとは、建築基準法第34条で規定される「昇降機」の一種別である。なお、この「昇降機」は建築基準法施行令第129条の3の規定により、大きく「エレベーター」、「エスカレーター」、「小荷物専用昇降機」の3種類に分けられている。
建築基準法で規定される「エレベーター」には以下の用途種別が定められている。
建築基準法に規定されるエレベーターは、前記に規定されるもの以外に以下のものが規定されている。
建築基準法(第34条2項)により、地上からの高さが31m以上あるか、または地上11階以上(一部のマンションでは16階以上)の建築物には、一般用のエレベーターのほかに、非常用エレベーターの設置が義務付けられる。これは災害発生時に高層建築では消防隊が階段を上がって救出に向かうことが困難であるためであり、専用運転に切り替えられる装備をもつ。
非常用エレベーターは、火災等で商用電源が遮断されても運転できるよう非常電源(ディーゼル発電機など)から電気が受けられ、電線も普通の火災で焼けないよう耐火電線を用いて配線する。機械室なしタイプは認められていない。またかつては他の一般用エレベーターよりも速度が遅い仕様が多かったので(現在は60m/minが下限)、乗用として使用されることはほとんどなく、通常時は荷物輸送やビルメンテナンス要員・警備員の移動に用いられてきた。そのため用途種別はほとんどの場合「人荷用」となっており、最近の一部を除き一般客の目に触れないように設置されることが多い。
なお、非常用エレベーターは設置されている建物のすべての階に停止でき、かつ全階のエレベーターホールにはかご位置を知らせるインジケーターを設置しなければならず、エレベーターホールも防火戸等により煙や炎を完全に遮断することができる構造が必要である。乗場には非常用エレベーターを示すプレート(赤文字で「非常用エレベータ」、その下に最大定員と積載荷重を記載する)を掲示しなければならない。定員は最低で17名(積載荷重1,150kg)と定められている。消防隊専用の装備としてかご呼び戻しボタン(主に1階か避難階に設置され、押すと他のかご内及び、乗場の呼びを全て解除し呼び戻しボタンのある階へ直行する)、一次消防・二次消防切り替えスイッチ(建物管理者や警備員から鍵を借り、このキースイッチを操作すると消防隊専用に切り替わる)がある。
一次消防運転では乗場呼びが無効になり、一種の専用運転となる。二次消防運転では乗場の戸閉検出装置が無効となり、かご又は乗場の扉が閉まらない状態であっても走行可能になるが、速度は最高でも90m/minに制限される。
昇降路は別名シャフトと呼ばれ、エレベーターが上下するための何らかの構造物で覆われた縦に長い空間のことである。シャフトを構成する材料は鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造が多い。その他シャフト一体型と呼ばれるシャフト部材と機器本体を一体で工場にて製作し現場に据付するタイプもある。シャフト一体型は小規模集合住宅に適しており、昇降行程が低く、小容量の後付用以外にはほとんど用いられない。
人が乗るための箱状の構造物を、エレベーターにおいてはかご(籠)と呼ぶ。英語ではCARと呼ぶ(車の呼称と同じ)。これに人または荷物を乗せ上下させる。室内は乗客の安全を確保するため(日本では必ず)ドアによって閉ざされている。なお、かごドアの端部には挟まれによる事故を防ぐため、「バンパー」と呼ばれる[7]大きな棒状の安全スイッチが取り付けられている。このスイッチが押されると閉まりかけたドアが開く仕組みになっている[8]。
自動式エレベータの場合、室内には目的フロアを指定する階床ボタン(行き先階ボタン)とドアを開閉する開閉ボタンがある。天井には換気扇が取り付けられて、通気性が確保されている。エアコンや照明器具、シャンデリアが付いているものもある。高速エレベーターには風を切るためのカバーが付いているものもある。 エレベーターは密室なので、避難用のハッチや、隣の搬器から逃げられるような仕組みをもったものがある。
かごの奥側の側面には鏡が設置されていることがある。これはエレベーター利用者が車いすを使用している場合、前を向いたまま室内に入ることになるため、狭い室内では車いすに乗りながら転回することができないことを考え、後ろ向きのままエレベータから降りられるように考慮して設置されているものである。また、エレベーターには車いす利用者のために低い位置に階床ボタンや上下ボタンが設置されていることもあるが、これらのボタンが押された場合には一般用のボタンに比べて扉の開放時間が長くなるように、また一部の機種では扉の開閉速度が遅くなるように設定されている(そのため、ごく一部で健常者はなるべく一般用のボタンを使うよう求める文言が管理者によって掲示されている場合がある)。
天井には救出口(ハッチ)が設置されているものも見かけるが、この救出口は中から脱出するためではなく、外から引き上げるためのものなので、外からボルトで固定してあったり施錠がされてあったりする。むやみにこじ開け、自力で外へ脱出しようとすると停電復旧などで突然、エレベーターが動き出すこともあるので大変危険である。このため、そのような状況になった場合には、エレベーターに備え付けられているインターホンを使用して保守会社との連絡を行った上で、救出を待つのが最善である。
通常のエレベーターに車椅子で乗り込むと、降りるときは後進で降りなければならないが、降りるときも前進で降りられるように出入り口をかごの前後に配置した形式を「ウォークスルー式」または貫通2方向型という[9]。他には手摺を付けて車椅子で移動しやすくしたり、通常の位置のボタンとは別に低い位置にも車椅子利用者用の呼びボタンや階床ボタンが設けられていたりしている。車椅子利用者用ボタンを押すとドアの開いている時間が通常より長くなるように設定されている。また建物の構造上、貫通2方向型が設置できない場合などのために、前面と側面の2方向にドアが配置された直角2方向型の機種もある。駅舎やペデストリアンデッキのエレベーターに多い(小田原駅など)。しかし、乗客には降り口が判別し難い場合があるので、目的階に到着すると「後ろのドアが開きます」や「こちらのドアが開きます」などと親切に音声によって降り口が案内される。
また、貫通2方向型の機種は、大規模病院や事業所などでストレッチャーや貨物搬送の都合から採用することがある。
その他、近年製造されたエレベーターのボタンは、ユニバーサルデザインの考えが導入されてほとんどに凸文字ボタンや視覚障害者用の点字が採用され、さらに人に優しいエレベーターへと進化している(バリアフリー)。また近年、老朽化したエレベーターをリニューアルする際に、車いす仕様の追加を行う例が増えている。
防犯のため、エレベーターのかご内の状況が外部から見えるよう、ドアや壁に窓(通称 : 防犯窓)を装着し、あるいはかご内に防犯カメラが設置され、内部の映像を乗り場のところに設置したモニターに映し出しているエレベーターもある。この形式のエレベーターの場合、外部からかご内の様子が見えることで犯罪やいたずらを未然に防ぎ、安心してエレベーターを利用できるといった長所がある。
窓付きドアのエレベーターは、主にマンション・団地などの集合住宅、鉄道駅、一部の商業施設などで見かける。防犯カメラのついたものは、集合住宅や一部のオフィスビルで見受けられる。
また、深夜になると各階へ昇降する際、途中階全てに停止するエレベーターもある(たとえば1階から5階へ向かう際、2階・3階・4階で停止しドアを開ける手順を経過することになるので防犯の効果は高くなるが、昇降に時間がかかり効率を悪化させるという欠点がある)。百貨店などの手動式エレベータの場合は、かご内からの目視により停止階を探すので、実用的な意味でかごの扉に窓がある。
ガイドレールとはエレベーターを導く軌道である。材質は鋼でできており、形状は鉄道のレールとよく似ている。それを垂直方向につなげてエレベーターの軌道を構成していく。ガイドレールは、かごの走行を円滑にし、各階に設置されたドアやカウンターウエイトなどの構造物とのクリアランス(すき間)を確保すると同時に、万一かごが落下した際に非常止め装置をガイドレールに噛ませて緊急停止させる目的もある。ガイドレールとかご、カウンターウエイトが接触する部分にはガイドシューと呼ばれる潤滑具やガイドローラーなどを設けて摩擦や振動を低減させている。
カウンターウェイトとも呼ばれ、つるべ式エレベーターで用いられるおもりである。全体の形状は扁平で縦に長く、非常に重い鉄の塊である。つるべ式はトラクション式とも呼ばれ、ワイヤーロープの両端にかごとおもりをぶら下げてバランスを取り、ワイヤーロープ折り返し中間地点に設置された電動機(モーター)と、それに連結された滑車(シーブ)に掛かる摩擦力によってかごとウェイトを上昇下降させる方式である。この方式ではロープ両端の重量バランスが良いので、比較的小さい力でロープに吊るされた物体を上昇下降させることができる。かごとカウンターウェイトのバランスが均等にとれている状態では、人の手でエレベーターを動かすこともできるほどにモーターに掛かる負担は小さくなる。カウンターウェイトの総重量は無積載状態のかごの質量にかご積載容量の50%を付加した重量になるように設計されている。
ワイヤーロープはトラクション式エレベーターなどで用いられる巻上索である。材質は炭素鋼が用いられ、建築基準法によって安全率を10以上確保することが義務付けられている。ロープの構造は、まずストランドと呼ばれる細い鋼線をより合わせたものがあり、さらにそのストランドを8本ほどより合わせてできている。柔軟性を保つために、ロープの中心部にはマニラアサやサイザルアサなどの硬質繊維芯が入っている。太さは直径10mm・12mm・16mmなどがあり、かご積載量に応じて使用する本数が増えたり、より太いものが使われる。トラクション式ではロープの両端にかごとカウンターウェイトが吊るされていて、それらの連結部にはソケットと呼ばれる器具にバビットメタルを注入するという末端処理が施されていて、連結強度を確保している。
高層ビルのエレベーターでは使用するワイヤーの質量が多く、そのままの状態では最上下階近辺ではかご側とカウンターウェイト側の重量がワイヤーロープの自重によってアンバランスになり、巻上機のシーブから滑り落ちてしまう恐れがある。そのアンバランスを解消するために、かご底部とカウンターウェイト底部との間にはコンペンセーティングロープ(或いはチェーン)と呼ばれる重量バランス調整用のワイヤーロープ或いはチェーンが渡されている。
よく映画等の一場面において、エレベーターのワイヤーが切れて高速で落下するシーンが登場するが、これには誤りが多い。エレベーターのかごを吊り下げるワイヤーの強度は定員の約10倍の重さに耐えられる強度を有することが義務づけられているため、その全てが切断すること自体が極めてまれである[10](ワイヤーの使用本数3本以上)。万一、切断してかごが落下に転じても、定格速度の1.4倍で非常止め装置が作動して急停止する(参照 : 構造)[11]。つまり、映画『マトリックス』のワンシーンのように爆破されたり、主ロープと調速機ロープが同時に破断されない限り、落下事故は起き得ない。
なお、エンパイア・ステート・ビルディングにおいては、1945年7月28日に航空機がビルに激突したことによってエレベーターのかごが300メートル以上落下する事故が起こったことがあるが、乗っていた従業員は破壊されたワイヤーが衝撃を和らげたためか生存していた。
以前は「非常止め装置が調速機ロープを切断されるなどして作動しなくても、エレベーターはエレベーターシャフト周壁との間隙が小さいことにより、かごにかかる空気抵抗が大きいため、ある程度の減速効果を有する」と言われていたが[要出典]、東芝エレベーターテスト塔での落下事故で、減速効果はほとんどないと証明された。このような効果を得るには、シャフト内の空気量が不変でなければならない。
調速機はガバナーまたは非常止め装置とも呼ばれ、万一、主ロープが切断された場合でもかごを緊急停止させる機能をもつ。通常、調速機は機械室やピットに設置されることが多い。
サスペンションとも。最下階のさらに下部および最上階の上部(ピットと呼ぶ)には緩衝器(バネや油圧ダンパー等)が付いており、非常止め装置を使用しても減速しきれない場合の衝撃をやわらげる仕組みになっている。エレベーターの速度が分速60m以下か油圧式エレベーターのものはバネ緩衝器、分速60m以上のものは油圧ダンパーを使用している。
日本ではドアはかご側と乗場側とにあり、乗場側はインターロックと呼ばれる装置で施錠され、外部からの解錠は専用の器具を使用しない限りできない(古いものでは手動式もあり、また外国ではかごにドアのないものも少なくない)。その上、かご側及び全階の乗場側に戸閉めを検出するスイッチがあり、すべての扉が閉じていなければ起動できないように回路が構成されている。縦開き式など特殊なエレベーターを除き、かご側のドアだけに駆動装置がある。停止階に到着したエレベーターは、かごドア側の解錠装置と乗場ドアのインターロックがかみ合い、乗場のドアはかごドアの力によりインターロックによる施錠が解放され、開閉する。
外観としては横方向に動くサイドスライドドアが主流となっている。サイドスライドドアにはサイドオープン式(片開き)とセンターオープン式(真中開き)がある。なお、ドアを開かせるには昇降路面積が余分に必要になるので、マンションなどの小型機種では小面積で済むサイドオープン式が好まれており、デパートや大規模施設などでは見た目の良さや、乗り降りのしやすさなどからセンターオープン式が好まれているようである。特大貨物用にはドアが上下方向に動くアップスライド式ドアが採用されている場合があるが、このドアは乗降中に戸が頭部に衝突したり戸が下方から出てきて危険であるので、荷物用・自動車用以外には使用できない。その他のドアとしては、円形のかごに対応する円弧状ドアや、格子状の折りたたみ式ドアなどがある。
エレベーターの地震感知器には、検出する地震波の種類によって大別して3種類がある。
ただし、いずれも地震の揺れにより機器が損傷し地震感知器とは別の安全装置が働いた場合(乗場側の戸閉検出装置がかごの接触により誤動作する場合が大半)は、閉じ込められることもある。この場合には途中で急停止するので、かご内に閉じ込められることになる。一度この状態になると、エレベーターの保守会社が現地に出向かないと復旧することができないので、救出(主に保守会社か消防のレスキュー隊による)に数時間から丸一日以上を要することもあり、地震が発生する度に大きな問題になっている。
主な駆動方式として、ロープ式と油圧式がある。
珍しいものではスクリュー式(かごに取り付けられたナットを高速回転させて昇降路に取り付けられたボルトを利用し、昇降する。)、リニアモーター式や、かごに取付けたタイヤを電動機で駆動させる自走式などがある。工事用の仮設エレベーターには、ピニオンラック方式と呼ばれる歯車式もある。
1つの建物で複数のエレベーターが並んでいる場合、それらを同じように各階に止めていくのは効率が悪い。特に、デパートなど、特定のフロアなどに客が集中する場合には、その階へ優先的に輸送することが望ましい。そのため、エレベーターの制御の単独化や、特定階の不停止制御(フロアカット)を行い、一部の階だけに停止させる急行運転(あるいは直通運転)を行なうこともしばしば見受けられる。また、事務所ビルでは、最終退館者が防犯機器を操作した時点でその階を通過し、最初の出勤者が入館手続きを取ると停止するというシステムを採用するケースもある。最近では当たり前になった屋上階には停止しないというシステムも、防犯上の事情から実行されている。
エレベーターに乗ると、身体が床に押し付けられたり上に引っ張られたりするような感覚がある。これはエレベーターの速度の変化によって生ずる加速度が搭乗者に働くからである。速さが激しく変わるようなエレベーターは搭乗者にとって不快である。また、かごをガイドするガイドレールの取り付け方によっては横方向の揺れが発生し、乗り心地は大きく変化する。超高層ビルで運用されるエレベーター(最下階から最上階まで直通するような速度の速いエレベーター)ではレールの歪みやレール取り付け方法、加速度のコントロールに細心の注意が払われている。横浜ランドマークタワーのエレベーターは床面に立てた硬貨が倒れないほどに乗り心地がよいといわれる[1]。これは、加速制御の巧みさだけでなく、ガイドレールの配置や歪みにまで丹念に作りこまれているからである。
昭和40年代頃までは半導体技術が現在のように発展していなかったために、エレベーターの制御回路にはリレー式シーケンス制御が採用されていた。今では到底考えられないが、速度制御、ドア開閉制御、呼び出し制御、混雑回避制御などありとあらゆる制御回路が数百個から数千個にも及ぶ大量のリレー群とタイマーリレー、その他機械式接点によって構成されていた。リレー式回路は主に手作業で制御回路を構築するので、回路設計、回路変更に多大な費用と労力が掛かるものが多かった。さらに接点の接触不良や焼き付きなどの動作不良も多く、メンテナンスマンを大いに悩ませた。
昭和50年代に入ると半導体産業やコンピューターテクノロジーが隆盛し、エレベーターの制御回路にもマイコン方式が取り入れられた。これによって機器設置、回路設計における負担が減り、高品質で多彩な運転制御が可能になった。特にモーター制御においては加減速制御の品質が一段と飛躍した。巻上げ電動機には1980年代前半まで、高速のものには直流電動機が、低速のものには誘導電動機が用いられ、速度制御方式はそれぞれワードレオナード方式と極数切替法、次いでパワーエレクトロニクスの発展によりサイリスタなどによる電動機入力電圧制御に移り変わった。1983年に交流電力のVVVFインバータ制御がエレベータ向けにも実用化された。それ以降、高速低速ともにインバータによる誘導電動機駆動を経て、現在では永久磁石同期電動機駆動の巻上機が主流となった。
一方、油圧式エレベーターでは流量制御バルブによる制御が用いられ、油温や積載荷重により走行性能の変動を受けやすかったが、1980年代後半以降はマイコン制御化やバルブの改良により解消された。また、1990年代に入ると規格型エレベーターを中心にVVVFインバータ制御方式が広く普及し、乗り心地向上や省エネ、走行時間短縮を実現している。
これらの技術革新によって、現在では各階への停止位置をミリ単位で微調整することが可能とされている。
なお、半導体制御化が進んでいるが、重要な箇所にはリレーが残っている。リレーは信号側と動作側が電気的に絶縁されているので大電流に強いこと、電磁波ノイズに強いこと、昔に比べ動作の信頼性が高くなっていることもあいまって、現在でも主回路、ドア制御回路などの重要な箇所にリレーを部分的に使用しているメーカーは多い。
日本では建築基準法の規定により、人間1人を65kgと見積もって定員を計算する。現在標準的にラインナップされる定員・容量は以下のとおりであり、かごの大きさは、小型で(縦・横ともに)1m弱、大型では荷物用として2m以上のタイプもある。太字がレディーメイドで対応できる定員であり、それ以外はオーダーメイドとなる。
オフィスビルといった高層の建築物には、エレベーターが必須である。日本などでは高齢化などのためバリアフリーの重要性も高い。また、近年における中国の経済発展はめざましく、ビルなどの建設ラッシュであるため、エレベーターを製造するメーカーの競争は激しい。各メーカーでは差別化を図る意味で、さまざまな機能などが付けられたエレベーターが製造され存在する。
日本で昇降機(エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機等)を設置する場合は、建築基準法の規定に基づく確認・完了検査を受けなければならない。しかし、建築基準法で定める昇降機であるにもかかわらず、建築基準法の規定に基づく確認・完了検査を受けずに設置されている昇降機を違法設置エレベーターという。
特に工場や作業場等において、労働安全衛生法で規定される荷物用エレベーターや簡易リフトが多数設置されているが、これらは、労働安全衛生法と共に一般のエレベーターと同様に建築基準法の規定も適用される。特に労働安全衛生法で規定されている簡易リフトは、かごの床面積により建築基準法で小荷物専用昇降機に規定されるものを除き、その多くは建築基準法に規定されるエレベーターの基準が適用されるが、その基準を満たしていないものが数多く設置されている。
さらに、昇降路の壁が設定されていないなど建築基準法はもちろん、労働安全衛生法の簡易リフトの規定すら満たしていない非常に危険な違法設置エレベーターも数多く設置されており、毎年全国の工場等で多数の死傷事故が発生している。こうしたことから、全国の特定行政庁及び労働基準監督署は、違法設置エレベーターに関する周知活動等を行っている。
エレベーターの寿命は機器全体として考えた場合は長く、25年前後使用されることが多い(法定償却耐用年数は17年と定められている)。ただし、電子部品やワイヤー、軸受などはほぼ10年など、個々の部品の寿命は一般的な物理的寿命と大差ない。寿命を迎えた場合には、一式取り替える撤去新設工事だけでなく、リニューアル・延命工事も広く施工され、巻上機やかご・レールはそのまま使用するが、電動機や制御機器を最新型のものに取り替えて最新型と同等の性能を発揮できるようにする。特に1980年代以前に製造されたエレベーターは遅くとも2012年までに部品供給の停止が予告されている[12][13][14]ので、リニューアルは必須となる。
2008年現在、稼働中のものとして日本最古のエレベータは、京都市に店を構える東華菜館(オーチス社製)(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計)に設置されているもので、1926年(大正15年)から稼動している。
詳細は「エレベーターガール」を参照
主として1990年代終盤まで百貨店等のエレベーターは、女性のオペレーター(エレベーターガールと呼ばれる。男性のエレベーターボーイもいる。)がかご内に乗り込んで、行き先階を尋ね操作していたが、2000年以降は一般のビルと同じ無人式(自動式)が多くなった。ただし、一部の百貨店や東京タワー等では、自動式でも乗務員がいる場合がある。
基本的に火災時の避難には使用しないことと表示されているものが多い。しかし、マンションの高層化に伴い東京消防庁は停電対策の予備電源や防災センターとの通信設備などの厳格な要件を課した上で条件を満たす場合には火災時の避難にエレベーターを使うよう指導することとなった[15]。
エレベーターは可動や経年変化によって消耗する部品があり、定期的なメンテナンスを必要とする。メンテナンスを行わないエレベーターは重大な事故を招きかねない。メンテナンスはメーカー自身、もしくは系列のメンテナンス会社が行うケースがほとんどである。一方、メーカー系列に属さない独立系メンテナンス会社もある。1980年代に独立系メンテナンス会社に対するメーカーの部品売り渋りが問題となり、独立系メンテナンス会社がメーカーを相手取って裁判を起こし、10年がかりで勝訴した。しかし、メーカーと独立系メンテナンス会社との関係が険悪なのは現在も変わらず、2009年に国土交通省が行った実態調査でこれが浮き彫りになった[16]。
この機器の名称は、「エレベーター」と表記されたり「エレベータ」と表記されたり、表記が一貫していない。しかし、JIS(日本工業規格)では「エレベータ」と表記している。
JISにおける一般的な表記方法はJIS独自のものではなく、国語審議会が審議して内閣が定めた内閣告示に基づいている。外来語の表記は『内閣告示第二号』(平成3年6月28日)によって定められており、その「用例集」には、「エレベーター/エレベータ」の両方が記載されている。JIS C 3408「エレベータ用ケーブル」などのJIS規格では、「エレベータ」を採用している。
なお、業界団体名は「社団法人日本エレベータ協会」であったが(2012年に一般社団法人に移行したのを機に「一般社団法人 日本エレベーター協会」と改称)、公式サイト内では社名などの固有名詞を除き「エレベーター」「エスカレーター」と表記している。東芝エレベータ、日本オーチス・エレベータも同様である。
主要な会社ではエスカレーターも製造している。
2007年現在、日本国内での総据付台数ベースでのシェアは以下のとおりとなっている。
小荷物専用昇降機は上記の5社も生産しているが、圧倒的なシェアを占めるのはクマリフトである。
メーカーの選定に際しては、建物所有者の資本系列や融資元金融機関の系列が絡むことが多い。例えば、三菱地所が所有する建物(丸の内ビルディングや横浜ランドマークタワーなど)では、必然的に三菱製が採用されることになる(ただし横浜ランドマークタワーのプラザ棟のように、メーカー名が伏せられているがパネル形状から明らかに日立製とわかるなど例外がある)。また、ラゾーナ川崎のように東芝の土地に出来た建物も東芝エレベーターが使われている。逆に大手スーパーマーケットチェーンなどでは、店舗によってさまざまである。
エレベーターを開発する際には、テストする際に実際のビルと同じ高さの建設物が必要となる。そのため、各社ではテスト塔とよばれる高い建設物を作り、製品の安全性、機能性などをテストしている。
日立の研究塔
G1TOWER
高さ世界一213.5m
三菱電機の試験塔
SOLAÉ
高さ173m
シンドラー社の試験塔
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国試過去問 | 「096G002」「112F029」 |
リンク元 | 「elevator」「エスカレーター」 |
B
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C
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