出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/05 06:00:41」(JST)
動物学 |
---|
部門 |
人類学 · 人間動物関係学 · 養蜂学 · クモ学 · 節足動物学 · クジラ学 · 貝類学 · 昆虫学 · 動物行動学 · 蠕虫学 · 爬虫両棲類学 · 魚類学 · 軟体動物学 · 哺乳類学 · アリ学 · 線虫学 · 神経行動学 · 鳥類学 · 古動物学 · 浮游生物学 · 霊長類学 |
主な動物学者 |
キュヴィエ · ダーウィン · カービー · ファーブル · リンネ · ローレンツ · セイ · ウォレス · さらに見る |
歴史 |
ダーウィン以前 · ダーウィン以後 |
表・話・編・歴
|
動物行動学(どうぶつこうどうがく、英: ethology)は、生物の行動を研究する生物学の一分野。日本では伝統的に動物行動学と訳されているが、原語のエソロジーはギリシャ語の ethos(エートス:特徴、気質)に由来し、特に動物に限定するニュアンスがない。行動生物学または単に行動学とも呼ばれるほか、時に比較行動学の訳語が当てられたり、訳語の混乱を嫌って欧名のままエソロジーと呼ぶ場合もある。
人間の行動を社会科学的に研究する行動科学とは、関連性はあるものの別の学問である(behavioristics も「行動学」と訳されるが、ここで言う行動学(ethology)とは別のものである)。ただし、動物行動学の方法論をヒト研究に応用した「人間行動学」(英: human ethology)という分野もある。
目次
|
外界からの刺激や、内からの指示によって、動物が体のある部分で何らかの変化を起こすことである。これは単なる反応ではあるが、それが成長のような形を取らないもので、それらが一連の組み合わせで、結果としてその動物の生活に一定の役割を果たす場合に、行動という。一般に、動物は”動く物”であるので、その反応には移動を伴うが、必ずしも移動しなければ行動とは呼ばないわけではない。広い意味では体色変化や発光も行動の一部である。
行動には、一定の機能(目的)が存在する(これは必ずしもそれを動物が認識していることを意味しない)。だから単純な反応であっても、機能があれば行動と呼び得る。たとえば人間のあくびは生理的な反応だが、講演者に横槍を入れるためにわざと大きくあくびをするのは行動である。行動は、その目的によって分類することも出来る。たとえば繁殖行動、探索行動などという呼び方をする。
研究の目的によって、行動を分類するカテゴリーは異なる。
広く考えれば、植物の場合も環境に対して一定の反応をする。例えばアブラムシの食害に対して捕食者を呼び寄せる化学物質を分泌する植物が知られている。これは動物行動学では反射と見なされる反応だが、行動生態学では行動の一種として扱う。
行動が、生得的なものであるのか、後天的なものであるのかで分け、それぞれにそれを支えるしくみを解明する。生得的なものであれば、それに影響を与える遺伝子が存在し、神経系や筋肉系など、作りつけの装置の構造に基づくはずである。
コンラート・ローレンツが発見した刷り込みは、当初は本能行動に分類されていた。しかし親を追従する行動は本能的ではあっても、どの物体を親と認識するかは学習による。発達生物学者と初期の動物行動学者の間で行われた議論は「生得性」の意義を問い直した。学習と学習の生得的基盤の相互作用の解明も動物行動学の範囲で行われる。
さらに経験やそれに基づいての推察、予測などの判断で行動したと見られる場合、これを知能による行動と見るが、判断は難しい。
攻撃行動、繁殖行動、求愛行動、威嚇行動、縄張り行動、採餌行動など。
ほかの個体の現在または将来に影響を与える行動を社会行動と呼ぶ。社会行動は以下のように細分化できる。
他にも意図運動、転位行動、転嫁行動など動物の行動は様々に分類され研究されている。
動物行動学は大まかに二つに方向に分けることができる。一つは行動の至近要因(行動の社会的、生理的、神経学的要因)を扱う分野であり、もう一つは行動の究極要因(進化)を扱う分野である。
至近的な分野には分子生物学や遺伝学的な手法を用いてモデル生物に対する実験を行う行動遺伝学(動物行動遺伝学)、神経行動学なども含む。一般的には狭義の野外で野生の状態を観察する生態学的な研究や、研究室内でラットやチンパンジーなどを用いる研究を指す。野外では哺乳類や鳥類、社会性昆虫などを対象とすることが多い。
様々な行動を比較するとき、その目的によって分ける考え方はわかりやすい。たとえば餌を食べるための摂食行動、繁殖のための繁殖行動といった具合である。また、繁殖行動は、さらに配偶者を求める配偶行動や卵を産むための産卵行動や子育てのためのといった細分化が可能である。 特に生殖に直結する繁殖行動は注目されることが多い。
しかし、動物自体が目的を意識しているかどうかはわからない。そのようなものを科学の対象としては据えられないから、動物の行動を研究対象とするには、違う方向からの切り込みが行われることが多い。
行動生態学および社会生物学は動物行動の究極要因、進化を扱う分野である。この分野を動物行動学の一分科とするか、独立した分野として扱うかには議論があるが、非常に密接した関係にあるのは確かである。行動生態学では多くの行動は遺伝的な基盤を持ち、同時に学習の影響も受けると仮定しているために、本能行動と学習行動を区別しないことも多い。
行動生態学の中心的な手法は至近要因分野と同様に観察、実験の他、ある社会行動がどのようなときに進化的に安定な戦略となるかの数理モデル作りも含まれる。行動生態学は主に動物を扱うが、植物や菌類なども研究対象である。また体色の変化や生活史など「狭義の行動」以外も研究対象となる。
行動生態学では特定の状況で取りうる複雑な行動が単一ではなく複数あるとき(例えば大きな敵と出会ったときに、逃げるか闘争するか)、その行動の選択肢を戦略と呼ぶ。また戦略の語は複数の行動が組み合わさった複雑な行動パターン(例えば求愛から繁殖、子育てまでをあわせて繁殖戦略と呼ぶなど)を指す場合にも用いられる。
近代以降、動物の行動を詳細に観察し、記述した最初の一人はファーブルであった。しかしファーブルは昆虫の行動の精緻さを創造の証拠だと考えた。同時期にイギリスではダーウィンがオランウータンを観察し、その振る舞いが人間とわずかにしか異ならないことに注目した。ダーウィンの視点と進化の概念の影響を受けたロマネスは比較心理学と呼ばれる一派を創設し、人と動物の心理の差は性質ではなく量的な違いであると主張した。初期のエソロジストには鳥類の求愛行動を観察したジュリアン・ハクスリーや刷り込み現象の先駆的な研究を行ったオスカー・ハインロート、鳥類学者ウィリアム・ソープ、昆虫学者ウィリアム・モートン・ホイーラー、霊長類学者ロバート・ヤーキースなどが含まれる。
20世紀にはアメリカでジェイムズやマクドゥーガルの生得論とワトソンの行動主義が鋭く対立した。この対立は、アメリカを訪れたローレンツ、ティンバーゲンそれぞれに影響を与えた。二人は自分の研究がマクドゥーガルに近いと考えた。重要な一歩は信号刺激の発見であった。信号刺激とそれに対する反応は種普遍的(種の多くの個体に影響し)で種特異的(他の種には見られない)であり、行動の生得性を示唆する。もう一つの発見は刷り込みである。この発見はマクドゥーガルの視点ともワトソンの視点とも矛盾し、行動が学習と生得性の一方で説明できないことを示す、とローレンツは考えた。ドイツ語圏の研究者がその研究の初期から進化と系統発生に注目していたのに対して、アメリカの研究者はより強く学習と個体発生に注目した。ワトソン、ソーンダイクの影響を受けたスキナーは行動主義を徹底し、この視点は心理学に強い影響を与えた。
イギリスではラック、エルトンら博物学の流れを汲む研究者が生態学の視点から動物行動を研究していた。おもにティンバーゲンの移住によってドイツ語圏の研究はイギリスに持ち込まれた。彼らの研究は動物の行動を生物学的適応と見なす点で共通しており、行動生態学(いわゆるイギリス流社会生物学)の発展の基盤となった。
ウィキメディア・コモンズには、動物行動学に関連するカテゴリがあります。 |
この「動物行動学」は、生物学に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:生命科学/Portal:生物学)。 |
リンク元 | 「ethology」「動物行動学」 |
.