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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/09/27 14:49:04」(JST)
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16S rRNA系統解析(16S rRNAけいとうかいせき)は、リボソームの小サブユニットのRNA塩基配列を基にした微生物の進化系統を明らかにする方法の一つである。真核生物の場合は18S rRNAなのでリボソーム小サブユニットrRNA系統解析 ('S'mall 'S'ub 'U'nit-rRNA、SSU-rRNA) と呼ばれることもある。
目次
- 1 歴史
- 2 16S rRNA塩基配列が系統解析に適している点
- 3 実際の用法
- 4 問題点
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歴史
従来原核生物の分類は細胞の形態、分離の条件、染色法などで行っていたが、こうした表現型の形質では系統樹上の上下関係を説明するには至らなかった。しかし1970年代、チトクローム、フェレドキシン、5S rRNAなどの塩基配列を基にした系統分類が分子生物学の発展とともに徐々に活発化してきた。
遺伝子の一次構造に基づく系統分類は原核生物に対して特に有効であった。カール・ウーズらはリボソーム小サブユニットを構成するRNA、つまり16S rRNAの塩基配列を用いて原核生物の系統分類を行い、原核生物が真正細菌と古細菌という2つのドメインからなることを証明した(1977年当時はオリゴヌクレオチドカタログ法を用いた)。
現在、16S rRNAを用いた系統解析は系統樹の作成のみならず、任意の環境中における細菌、古細菌の群集構造を網羅することに役立っている。この方法を用いると、分離・培養ができていないが新規の菌が存在することが塩基配列上証明できる(1996年のBarnsによる;メタジェノミクス参照)。
16S rRNA塩基配列が系統解析に適している点
- リボソームという生物の本質に関わる機能を持ったRNAなので配列の保存性が高く、極めて関係の遠い生物同士でも配列の比較が可能である。
- 真核生物、原核生物問わずすべての種に存在し、機能変化に伴う遺伝子の変異がこれからも起きる可能性が極めて少ない。
- ゲノム内にコピーが複数個存在しても、塩基配列にほとんど差が無い。
- 遺伝子の長さが適当に長く(16S rRNAの場合、1600塩基対程度)、系統解析に十分な情報量を持つ。
- 比較的変異しやすい部位も存在し、近縁な種でも比較が可能である。
- 細胞内に大量に存在し、PCRの開発がなされる以前から塩基配列の比較が可能であった。
- 全生物にわたって完全に保存された部位が三箇所ほど存在し、そうしたプライマー(ユニバーサルプライマー)を設計することにより塩基配列の決定が容易である。
以上の理由から、16S rRNAは微生物のみならず、最近は真核生物の系統分類にも使用されている。 なお、系統樹作成の際は、16S rRNA塩基配列のみならず、ほかの遺伝子も比較して構築していくことが一般的である。
実際の用法
16S rRNAを利用する際は、ユニバーサルプライマーを用いてPCRによる増幅を行い、得られた増幅産物のクローニングした後にシークエンス反応を行う方法が一般的である。ただ、最近はシークエンシング反応を行わなくても群集構造の解析が可能なDGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)、顕微鏡で直接観察できるFISHなどの広い応用範囲がある。かつては制限酵素を用いたRFLPなどが使用されていたが、現在はDGGEに取って代わられつつある。
問題点
16S rRNAクローンを用いた系統解析は、上記の7点に述べたような理由から正確であるとしているが、計算機の機能上昇に伴い16S rRNA以上の情報量を持つ遺伝子を用いている事もある。その一つが23S rRNAであり、この遺伝子を用いて作成した系統樹は極めて正確であるといわれている。
ただし、ユニバーサルプライマーを用いた群集構造解析は、環境中に存在している16S rRNAをすべて増幅してしまうために、生存個体のみを抽出しているわけではない。つまり、死亡して溶菌したようなRNAの残骸をも増幅しているということである。最近では一般的に弱いとされるRNAは環境中に長時間存在しているのではないかという研究結果も出ている。
誤差要因としては基本的な進化速度の違いのほか、塩基配列をそのまま読み込むため、GC含率の違いに比較的強い影響を受ける。これは真核生物の初期進化や細菌の系統樹において大きな問題となった。
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16S rRNA may refer to:
- 16S ribosomal RNA, the prokaryotic ribosomal subunit
- Mitochondrially encoded 16S RNA, the eukaryotic ribosomal subunit
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English Journal
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