- 英
- potassium bromide
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臭化カリウム |
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
7758-02-3 |
PubChem |
253877 |
RTECS番号 |
TS7650000 |
特性 |
化学式 |
KBr |
モル質量 |
119.002 g/mol |
外観 |
白色固体 |
密度 |
2.75 g/cm3 |
融点 |
734 °C, 1007 K, 1353 °F
|
沸点 |
1435 °C, 1708 K, 2615 °F
|
水への溶解度 |
53.5 g/100 ml (0 °C)
102 g/100 mL (100 °C) |
glycerolへの溶解度 |
21.7 g/100 mL |
ethanolへの溶解度 |
4.76 g/100 mL (80 °C) |
構造 |
結晶構造 |
塩化ナトリウム型構造 |
配位構造 |
八面体形 |
双極子モーメント |
10.41 D (gas) |
危険性 |
MSDS |
MSDS at Oxford University |
EU Index |
Not listed |
Rフレーズ |
R20, R21, R22, R36, R37, R38 |
Sフレーズ |
S22, S26, S36 |
関連する物質 |
その他の陰イオン |
フッ化カリウム
塩化カリウム
ヨウ化カリウム |
その他の陽イオン |
臭化リチウム
臭化ナトリウム
臭化ルビジウム
臭化セシウム |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
臭化カリウム(しゅうかカリウム、英: potassium bromide)は化学式 KBr で表されるカリウムの臭化物である。水酸化カリウムと臭化水素の中和反応によって生成する。水溶液は中性で、カリウムイオンと臭化物イオンに電離している。常温常圧では無色の固体である。硫酸との反応で臭素が遊離する。
1800年代には抗痙攣薬や抗不安薬として用いられていた。今日ではイヌの治療薬として使われる。薄い水溶液は甘く、濃い水溶液は苦いが、ほとんどの濃度範囲では塩辛い味がする。高濃度の場合は内臓の粘膜組織を侵し、吐き気および嘔吐を引き起こす。
近年になり有効な抗てんかん薬のほとんどない乳児重症ミオクロニーてんかんにおいて有効性が高いことが明らかにされ、再び注目されている。
化学的性質
典型的なイオン性の塩で、水に溶けやすく、水溶液の pH は7である。臭素イオン源として、写真フィルム用の臭化銀の製造に用いられる。
- KBr (aq) + AgNO3 (aq) → AgBr (s) + KNO3 (aq)
臭化銅(II) などの金属ハロゲン化物と反応させると錯塩を形成する。
- 2 KBr (aq) + CuBr2 (aq) → K2[CuBr4] (aq)
調製
伝統的な方法として、炭酸カリウムと臭化鉄 (Fe3Br8) の反応が知られている。臭化鉄は水中で鉄くずと過剰の臭素 (Br2) を反応させて作られる。
- 4 K2CO3 + Fe3Br8 → 8 KBr + Fe3O4 + 4 CO2
用途
医学・獣医学
抗痙攣薬としての性質が初めて指摘されたのは、1857年のロンドン王立医学・外科学会 (Royal Medical and Chirurgical Society of London) での会議におけるチャールズ・ロコック (Charles Locock) による発表である。これはてんかんに対して効果のある治療薬の最初の報告例とされる。当時てんかんは自慰が原因であると考えられており、ロコックは、臭化物塩は性的興奮を鎮めることによっててんかんの発作を抑えるとした。1912年にフェノバルビタールが登場するまで、てんかんに対して臭化カリウムより優れた薬剤は存在しなかった。
現在では臭化カリウムはイヌへの抗てんかん薬として用いられている。フェノバルビタール単独で効果が思わしくない場合にしばしば補助薬として使用されるが、第一選択薬となる例も増加しつつある。過去にはネコのてんかんに対しても用いられていたが、呼吸器系の重篤な副作用を引き起こす危険性があるため、推奨されていない。
アメリカ食品医薬品局 (FDA) はヒトのてんかんに対する使用を認めていない。ヒトへの抗てんかん薬としての使用を認可しているのはドイツのみで、全身性・強直間代性、あるいは小児期の大発作や筋クローヌス性のてんかんを伴うなど、子供や青年特に重篤な症状に対してである。少年期・青年期にこの薬剤に対して陽性反応を示した場合、さらに治療が続けられる場合もある。Dibro-Be mono® の商品名で販売されている(処方のみ)。適切な症候に用いられれば、確実に効果をあらわすとされる。完全な生物学的利用能と、6週間という長い半減期を持つ。1錠あたり850 mgの臭化カリウムを含む。他の抗痙攣薬の吸収や排出を阻害するという報告はない。
副作用として、食欲の減退、吐き気・催嘔性、嗜眠、日中の眠気、抑うつ、集中力や記憶力の低下、せん妄、頭痛、いわゆるブロム中毒(傾眠から昏睡に至る中枢反応、カヘキシー(悪液質)、エキシコーシス(exicosis、体液の欠乏)、反射の消失、間代性てんかん発作、ふるえ、運動失調(歩行障害)、神経感度の減少、運動麻痺、目における乳頭状浮腫、言語障害、脳浮腫、精神錯乱 (frank delirium)、攻撃性の増加、精神病)、そしてざ瘡型の肢端皮膚炎などの皮膚疾患、肺粘膜の分泌過多が挙げられる。気管支喘息や鼻炎にかかっている場合、悪化することがある。舌障害、アフテン (aphten)、口臭、オブスティペーション(obstipation、腸閉塞による重度の便秘)などもまれに見られる。
光学
近紫外から遠赤外領域 (0.25-25 μm) に透過性を持つため光学窓やプリズムとして利用される。吸湿性・潮解性を持つため乾燥した容器中に保存する必要がある。屈折率は1.0 μmで 約1.55である。赤外吸収スペクトルを測定する場合には、試料を臭化カリウムの粉末と混合し、ペレット状に押し固めて測定する方法がよく用いられる。臭化カリウムは測定領域内に測定の妨げとなるピークを持たない。
また固体核磁気共鳴分野においては、マジック角回転下での79Brの信号がマジック角からのわずかなずれに鋭敏に影響することと、共鳴周波数が13Cに近いことから、13C測定時のマジック角調整に用いられる。
カリウムの化合物 |
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二元化合物 |
K3As · KBr · K2C2 · KCl · KF · KH · KI · KI3 · KN3 · K3N · KO2 · KO3 · K2O · K2O2 · K3P · K2S · K2Se · K2Te
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三元化合物 |
KAlF4 · KBF4 · KBH4 · KCH3 · KCN · KHCOO · KHF2 · K2[HgI4] · KHS · K4[Mo2Cl8] · KNH2 · KOH · KPF6 · K2[PtCl4] · K2[PtCl6] · K2[ReH9]
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四元・五元化合物 |
CH3COOK · K[Au(CN)2] · K3[Co(NO2)6] · K3[Fe(CN)6] · K4[Fe(CN)6] · KOCH3 · KOCH2CH3 · KOCN · KONC · KSCN
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カリウムの化合物 - カリウムのオキソ酸塩 |
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- トピラマートの有効であったacute encephalitis with refractory,repetitive partial seizuresの1慢性例
- 三宅 進,杉峯 貴文,佐藤 潤,遠藤 千恵
- てんかん研究 28(3), 422-426, 2011
- … 痙攣は難治でカルバマゼピン、フェニトイン、バルプロ酸、臭化カリウム、ジアゼパム隔日投与を行ったが、発作は1カ月に6〜12回生じていた。 …
- NAID 130000420319
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
臭化カリウム「ヤマゼン」
組成
- 本品1g中、日本薬局方臭化カリウム1gを含有する。
禁忌
- (1)本薬又は臭素化合物に対して過敏症の既往歴のある患者。
- (2)腎機能障害のある患者〔血中濃度の上昇を招き中毒を起こすおそれがある〕。
- (3)脱水症、全身衰弱のある患者〔体液量の少ない患者では血中濃度が上昇し、中毒を起こすおそれがある〕。
- (4)器質的脳障害、うつ病の患者〔臭素中毒が潜在していることがあり、また、本薬に対する感受性が亢進している場合があるので中毒を起こすおそれがある〕。
- (5)緑内障の患者〔臭化カリウムの体内動態及び血圧に対する作用は塩化ナトリウムに類似し、かつ体液中濃度は総ハロゲン量として平衡しているので、眼圧を上昇させて症状を更に悪化させるおそれがある〕。
- (6)低塩性食事を摂取している患者〔臭化カリウムの体内動態は塩化ナトリウムに類似し、かつ体液中濃度は総ハロゲン量として平衡しているので、吸収が促進され、血圧上昇、中毒を起こすおそれがある〕。
効能または効果
- ・不安緊張状態の鎮静、小児の難治性てんかん
- 臭化カリウムとして、通常、成人1回0.5〜1gを1日3回経口投与する。
- なお、年令、症状により適宜増減する。
慎重投与
- (1)肝障害又はその既往歴のある患者〔肝障害を悪化又は再発させる恐れがある〕。
- (2)小児〔中毒を起こしやすい「重要な基本的注意(2)」の項を参照〕。
- (3)妊婦・授乳婦〔「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項を参照〕。
薬効薬理
- 少量ではその作用は著明でなく、健康なヒトでは1回0.5g程度では認めるべき作用はない。
- しかし、生体内で臭素イオンを遊離し、大脳皮質の知覚並びに運動領域の興奮を抑制し、知覚過敏が消失し、弱い安静・倦怠感を促し、就眠を容易にする。
- 4〜8gの大量になると、この効果が強くなるが、クロラールと異なり直接的な催眠薬ではなく、その鎮静作用で就眠を容易にするだけである。
- カンフル、コカイン等の大脳刺激興奮薬に拮抗作用を持つ。しかし、ストリキニーネけいれんのような脊髄性興奮又は動物の反射機能には作用は弱い。
- このように本薬は特徴ある持続性の大脳皮質の中枢神経抑制薬である。大量に服用させると胃粘膜を刺激し、圧感、温感等を感じる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- 臭化カリウム(Potassium Bromide)
分子式
分子量
性状
- 本品は無色又は白色の結晶、粒又は結晶性の粉末で、においはない。本品は水又はグリセリンに溶けやすく、熱エタノール(95)にやや溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくい。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- potassium
- 同
- K+
- 関
- 高カリウム血症、低カリウム血症、腎 Kと酸塩基平衡の異常
- 植物の灰(pot-ash)が由来らしい
- アルカリ金属
- 原子番号:19
- 原子量:39.10
カリウム濃度を調節する要素
- PT.481-482
-
- 血中K+が細胞内、細胞内H+が細胞外へ移動→低カリウム血症、K排泄↑
- 血中H+が細胞内、細胞内K+が細胞外へ移動→高カリウム血症、K排泄↓
-
- レニン・アンジオテンシン系の亢進 or 細胞外K+濃度の上昇 のいずれかにより副腎皮質からアルドステロンが放出される
- Na/H交換体、Na-K-2Cl共輸送体、Na/K-ATPaseを活性化。
- β2受容体を介してKの取り込みを促進。Na-Kポンプの活性化による。
例外
- 水・電解質と酸塩基平衡 改訂第2版 p.153
- 水素イオンと共に投与される陰イオンが細胞内に移行しうる場合、電気的中性は保たれるのでカリウムイオンは細胞外に移動しない。
- (細胞内に移行する)乳酸イオン、酢酸イオン ⇔ (細胞内に移行しない)塩素イオン
基準値
- LAB
- 出典不明
尿細管での再吸収・分泌
- QB.E-128
- 再吸収 :近位尿細管、ヘンレループ
- 分泌・吸収:集合管(QB.E-128)、遠位尿細管(QB.E-130)、皮質集合管の主細胞(参考1)
調節するファクター
- 1. アルドステロン
- 2. 集合管に到達するナトリウムイオン:集合管では能動的にナトリウムが再吸収されるが、電気的中性を保つために受動的にカリウムが管腔側に移動する。(参考1)
臨床関連
-
- 尿中カリウム < 20mEq/L:腎外性喪失
- 尿中カリウム > 40mEq/L:腎性喪失
参考1
- 1. [charged] Pathophysiology of renal tubular acidosis and the effect on potassium balance - uptodate [1]
[★]
- 英
- bromide、bromo
- 関
- 臭化物、ブロミド、ブロモ、ブロマイド