慢性膵炎
出典: meddic
■
疫学
病因
- アルコール性が最も多く、胆石、栄養障害、家族性の物があるが、特発性のものが多い。(SSUR.628)
- アルコール性(50%以上)>特発性>胆石 (QB.B-357)
病態
- 慢性的な炎症による膵臓の線維化 → 内分泌機能低下、外分泌機能低下、門脈圧迫
症状
- 代償期には腹痛、非代償期には膵機能の廃絶による諸症状を呈する
- 非代償期には腹痛は見られる事は少なくなる(burn out現象)
代償期
- 飲酒、過食、脂肪食で誘発される上腹部痛、背部放散痛
非代償期
検査
- 腹部単純X線写真:膵石
- CT:膵管拡張、主膵管の数珠状拡張(QB.B-356)、膵石
- MRCP, ERCP:主膵管の拡張・狭窄
診断基準
- 慢性膵炎臨床診断基準2009
慢性膵炎の診断項目
- ①特徴的な画像所見
- ②特徴的な組織所見
- ③反復する上腹部痛発作
- ④血中または尿中膵酵素値の異常
- ⑤膵外分泌障害
- ⑥1日80g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴
判定
- 慢性膵炎確診:a,b のいずれかが認められる.
- a.①または②の確診所見.
- b.①または②の準確診所見と,③④⑤のうち 2 項目以上.
- 慢性膵炎準確診:
- ①または②の準確診所見が認められる.
- 早期慢性膵炎:
- ③~⑥のいずれか 2 項目以上と早期慢性膵炎の画像所見が認められる.
診断項目の詳細
- ①特徴的な画像所見
- 確診所見:以下のいずれかが認められる.
- a.膵管内の結石.
- b.膵全体に分布する複数ないしび漫性の石灰化.
- c.ERCP 像で,膵全体に見られる主膵管の不整な拡張と不均等に分布する不均一かつ不規則な分枝膵管の拡張.
- d.ERCP 像で,主膵管が膵石,蛋白栓などで閉塞または狭窄している時は,乳頭側の主膵管と分枝膵管の不規則な拡張.
- 準確診所見:以下のいずれかが認められる.
- a.MRCP において,主膵管の不整な拡張と共に膵全体に不均一に分布する分枝膵管の不規則な拡張.
- b.ERCP 像において,膵全体に分布するび漫性の分枝膵管の不規則な拡張,主膵管のみの不整な拡張,蛋白栓のいずれか.
- c.CT において,主膵管の不規則なび漫性の拡張と共に膵辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形.
- d.US(EUS)において,膵内の結石または蛋白栓と思われる高エコーまたは膵管の不整な拡張を伴う辺縁が不規則な凹凸を示す膵の明らかな変形.
- ②特徴的な組織所見
- 確診所見:膵実質の脱落と線維化が観察される.膵線維化は主に小葉間に観察され,小葉が結節状,いわゆる硬変様をなす.
- 準確診所見:膵実質が脱落し,線維化が小葉間または小葉間・小葉内に観察される.
- ④血中または尿中膵酵素値の異常
- 以下のいずれかが認められる.
- a.血中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇あるいは正常下限未満に低下.
- b.尿中膵酵素が連続して複数回にわたり正常範囲を超えて上昇.
- ⑤膵外分泌障害
- BT-PABA試験で明らかな低下を複数回認める.
参考
- hpblondon.com
- hpblondon.com - MRCP
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/07/12 23:11:15」(JST)
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UpToDate Contents
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- 1. 成人における慢性膵炎の臨床症状および診断 clinical manifestations and diagnosis of chronic pancreatitis in adults
- 2. 慢性膵炎の治療 treatment of chronic pancreatitis
- 3. 慢性膵炎の合併症の概要 overview of the complications of chronic pancreatitis
- 4. 成人における慢性膵炎の病因および発症機序 etiology and pathogenesis of chronic pancreatitis in adults
- 5. 慢性膵炎における超音波内視鏡検査 endoscopic ultrasound in chronic pancreatitis
和文文献
- 知って得する! (新)名医の最新治療(Vol.403)繰り返すおなかの激痛に手術なしで結石を取り除く 慢性膵炎(まんせいすいえん)
- 週刊朝日 120(48), 93-95, 2015-11-13
- NAID 40020631266
- アルコールと膵疾患 (第1土曜特集 アルコール医学・医療の最前線2015 Update) -- (アルコール関連疾患)
- 医学のあゆみ 254(10), 934-938, 2015-09-05
- NAID 40020576726
- 膵炎のインターベンション治療 (特集 慢性膵炎・急性膵炎に対する外科的アプローチ)
- 手術 = Operation 69(9), 1355-1365, 2015-08
- NAID 40020558634
- Videoscope補助下の外科的ネクロセクトミー(開腹/後腹膜アプローチ) (特集 慢性膵炎・急性膵炎に対する外科的アプローチ)
- 手術 = Operation 69(9), 1345-1353, 2015-08
- NAID 40020558626
関連リンク
- )が出現しますし、インスリンの分泌が低下すると糖尿病になります。また、慢性膵炎は膵癌の発癌リスクがあることが知られています。
- 慢性膵炎 跡見 裕(杏林大学医学部教授) 慢性膵炎は、長期間にわたって徐々に進行していきます。自覚症状のないまま、炎症が繰り返し起こると、膵臓は回復不能のダメージを受けてしまいます。アルコールを長期間、大量に ...
- 慢性膵炎。慢性膵炎とはどんな病気か 継続的なアルコールの多飲などによって、膵臓に持続性の炎症が起こり、膵臓の細胞が破壊されて、実質の脱落と線維化(膵臓の細胞がこわれ、線維が増えて硬くなる状態)が引き起こされる病 ...
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国試過去問 | 「105I045」「096A030」「100D011」「101A030」「102D038」「108E022」「104A010」「097B026」「102E001」「092B045」「091B043」「096G084」「108A007」「106I001」「095B075」「100E037」「102G018」「089A060」 |
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関連記事 | 「炎」「膵炎」「慢性」 |
「105I045」
- 71歳の男性。上腹部不快感を主訴に来院した。2週前に上腹部の不快感が出現し徐々に増悪してきた。意識は清明。身長165cm、体重54kg。体温36.4℃。脈拍72/分、整。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 440万、Hb 14.1g/dl、Ht 41.2%、白血球 6,200、血小板 26万。血液生化学所見:総蛋白 6.6g/dl、アルブミン 4.0g/dl、総ビリルビン 0.6mg/dl、直接ビリルビン 0.2mg/dl、AST 14IU/l、ALT 5IU/l、LD 267IU/l(基準176-353)、ALP 79IU/l(基準115-359)、γ-GTP 15IU/l(基準8-50)、Na 144mEq/l、K 4.1mEq/l、Cl 106mEq/l。免疫学所見:CEA 8.4ng/ml(基準5以下)、CA19-9 1,772U/ml(基準37以下)。腹部造影CT(別冊No.9A、B)と内視鏡的逆行性胆管膵管造影写真(ERCP)(別冊No.9C)とを別に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
※国試ナビ4※ [105I044]←[国試_105]→[105I046]
「096A030」
- 65歳の女性。1か月前からの左上腹部痛と背部痛とを主訴に来院した。6か月前から背部の張り感を自覚していた。肝・脾は触知しない。血液所見:赤血球370万、白血球6,200、血小板28万。血清生化学所見:総蛋白7.0g/dl、アルブミン4.5g/dl、総ビリルビン0.4mg/dl、AST(GOT)17単位(基準40以下)、ALT(GPT)8単位(基準35以下)、LDH299単位(基準176~353)、アルカリホスファターゼ343単位(基準260以下)、アミラーゼ40単位(基準37~160)。CA19-9 36U/ml(基準37以下)。腹部エックス線単純写真を以下に示す。
- 最も考えられるのはどれか。
※国試ナビ4※ [096A029]←[国試_096]→[096A031]
「100D011」
- 32歳の男性。腹痛を主訴に来院した。2か月前から時々腹痛を起こしていた。1週前から朝、腹痛で目覚めることが多くなり、1日に数回の腹痛と便意とを生じるようになった。排便すると腹痛は軽快する。便通は1日に3、4回、泥状である。便に血液の付着はない。2週前、同僚と暴飲暴食をしたことがあった。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧132/80mmHg。腹部の聴診で腸雑音が亢進し、下腹部に圧痛を認める。筋性防御を認めない。血液所見:赤血球420万、Hb14.2g/dl、白血球5,600。最も考えられるのはどれか。
※国試ナビ4※ [100D010]←[国試_100]→[100D012]
「101A030」
- 65歳の男性。2か月前からの上腹部不快感を主訴に来院した。血液所見:赤血球510万、白血球6,800。血清生化学所見:AST24IU/l、ALT15IU/l、アミラーゼ175IU/l(基準37~160)。CRP0.4mg/dl。腹部造影CTを以下に示す。
- 考えられるのはどれか。
※国試ナビ4※ [101A029]←[国試_101]→[101A031]
「102D038」
- 65歳の男性。腹部超音波検査で異常を指摘され来院した。症状は特に認めない。磁気共鳴胆管膵管像<MRCP>を以下に示す。診断はどれか。
※国試ナビ4※ [102D037]←[国試_102]→[102D039]
「108E022」
※国試ナビ4※ [108E021]←[国試_108]→[108E023]
「104A010」
- 疾患と検査法の組合せで正しいのはどれか。
※国試ナビ4※ [104A009]←[国試_104]→[104A011]
「097B026」
- 疾患と所見の組合せで誤っているのはどれか。
※国試ナビ4※ [097B025]←[国試_097]→[097B027]
「102E001」
- 吸収障害の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
※国試ナビ4※ [102D060]←[国試_102]→[102E002]
「092B045」
- ただしいのは
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
「091B043」
- 慢性膵炎について正しいのは
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
「096G084」
- 下痢をきたさないのはどれか。
- a. 蛋白漏出性胃腸症
- b. Zollinger-Ellison症候群
- c. Peutz-Jeghers症候群
- d. カルチノイド症候群
- e. 慢性膵炎
※国試ナビ4※ [096G083]←[国試_096]→[096G085]
「108A007」
- a 肝硬変
- b 慢性膵炎
- c Cushing病
- d グルカゴノーマ
- e Gitelman症候群
※国試ナビ4※ [108A006]←[国試_108]→[108A008]
「106I001」
- 慢性膵炎の成因のうち最も頻度が高いのはどれか。
※国試ナビ4※ [106H038]←[国試_106]→[106I002]
「095B075」
- 慢性アルコール性障害でみられないのはどれか。
※国試ナビ4※ [095B074]←[国試_095]→[095B076]
「100E037」
- 便秘症の原因として考えられるのはどれか。
※国試ナビ4※ [100E036]←[国試_100]→[100E038]
「102G018」
- BT-PABA試験で異常値とならないのはどれか。
※国試ナビ4※ [102G017]←[国試_102]→[102G019]
「089A060」
- 肝内胆管が拡張するのはどれ
- a. Wilson病
- b. Crigler-Najjar症候群
- c. 原発性胆汁性肝硬変
- d. 十二指腸乳頭部癌
- e. 慢性膵炎
「難病リスト」
「急性膵炎」
- 英
- acute pancreatitis
- 関
- 膵炎、慢性膵炎
概念
- 種々の原因で膵酵素が膵内で活性化され、組織を自己消化して起こる急性炎症。
- 原因としてはアルコールと胆石が一般的と思われる。
- 突然上腹部痛を呈し、 種々の腹部所見(軽度の圧痛から反跳痛まで)が見られる。
- 症候、身体所見、および検査値異常として、嘔吐、発熱、頻脈、白血球増加、血中・尿中の膵酵素の上昇を見る。
- 重症急性膵炎は特定疾患治療研究事業の対象疾患である(公費対象)
病因
- アルコール
- 胆石症
- 特発性
- 医原性
- 外傷
- 慢性膵炎急性増悪
- 膵・胆道奇形
- 代謝・栄養障害
- その他:膵腫瘍、薬剤性、感染性
- SSUR.626
- アルコール、胆石症、ERCP、手術、薬剤、脂質異常症、副甲状腺亢進症
小児の急性膵炎
- YN.B-82
- ウイルス感染(耳下腺炎 ムンプスウイルス)、薬物(ステロイド、アザチオプリン、L-アスパラギナーゼ)、外傷性(虐待など)
発症機序
- SSUR.626
- 共通管説:胆石性膵炎
- 膵外分泌亢進-膵管閉塞説:アルコール性膵炎:アルコール化量摂取が膵外分泌を亢進させ、乳頭部の浮腫や痙攣を惹起して膵液の相対的流出障害を起こす。
- Oddi括約筋の痙攣、不溶性蛋白栓の沈殿による膵導管の閉塞、および 膵プロテアーゼの活性化が考えられている(ガイドイラン1)。
- 十二指腸液逆流説:小腸閉塞、Billroth II法再建胃切除術後の輸入脚症候群における急性膵炎
分類
障害組織による分類
- 浮腫性膵炎:炎症に伴いびまん性または限局性に膵臓は腫大し、壊死を伴わないもの。造影CTで不染領域をみとめないもの
- 壊死性膵炎:びまん性または限局性に膵実質が壊死に陥ったもの。壊死組織は造影CTで造影不良をみる。膵壊死組織への細菌感染の有無が予後を規定する。
疫学
- 発生頻度は27.7/10 万人/年
- 男女比=2:1
- アルコール性膵炎は男性に多く、胆石性膵炎は女性に多い。
病態
- SSUR.626
- 膵酵素の膵実質障害 → 炎症反応惹起 → (炎症が高度の場合)高サイトカイン血症 → 活性化された顆粒球による多臓器障害
- 膵酵素、エンドトキシン、顆粒球やマクロファージから産生されたホスホリパーゼA2により肺胞が障害される。
- 膵臓からの滲出液の後腹膜腔への貯留 + サイトカイン血症による血管透過性の亢進 → 血液量減少
症状
- 上腹部腹痛から背部痛、悪心嘔吐、腹部膨満感、発熱。
- 腹痛は胸膝位で軽減する(SSUR.626)
合併症
検査
CT
- (浮腫性膵炎)単純CTで膵臓の浮腫による腫大、炎症の波及による膵周囲脂肪織の濃度上昇。
- (壊死性膵炎)浮腫性膵炎の所見に加え、造影CTで造影不良領域が認められる。
血液一般検査・生化学
- 白血球:増加
- Plt:低下 (なぜ? DICが存在するのであれば、想像できるが)
- Ht:増加(浸出液増加による血液濃縮)
- Ca:↓(重症のサイン。鹸化壊死で消費) ← また、血中グルカゴン上昇により、カルシトニンが甲状腺より遊離されるため(QB.B-349) おかしくない???
- 血糖:上昇(ランゲルハンス島の破壊)
- BUN:上昇(腎機能障害)
- LDH:上昇(重症例で。組織破壊)
- TG?:血中リパーゼ濃度が上昇し、脂肪が分解されるため、らしい。
逸脱酵素
- 血清アミラーゼ:高値。発症数時間で上昇。3日程度で正常化。尿中アミラーゼは持続日数が長い。鑑別:高アミラーゼ血症
- 血清トリプシン:高値。特異性高い。
- 血清リパーゼ:高値。特異性高い。
- 血清エラスターゼ-I:高値。特異性高い。高値が持続する。膵臓に特異的らしい。アミラーゼ、リパーゼに比べ正常化が遅れるため、経過を見るのに適す(YN.B-80)。
肝機能・胆道系酵素
- ビリルビン
画像検査
診断
- CT、特に造影CTが有用
重症度
- 重症度は血清カルシウム、血糖値、BUNで判定できる。血清アミラーゼは参考にならない。
ガイドライン1
- 予後因子3点と造影CT Grade 2以上の場合に重症と判定される。
予後因子(各1点)
- 1. Base Excess≦-3 mEq/L, またはショック(収縮期血圧≦80 mmHg) 代謝性アシドーシス
- 2. PaO2≦60 mmHg (roomair), または呼吸不全(人工呼吸管理が必要) 換気機能低下
- 3. BUN≧40 mg/dL (or Cr≧2 mg/dL), または乏尿(輸液後も1 日尿量が400 mL 以下) 腎機能低下
- 4. LDH≧基準値上限の2 倍 組織障害
- 5. 血小数≦10 万/mm3 血小板の消費
- 6. 総Ca≦7.5 mg/dL 脂肪壊死
- 7. CRP≧15 mg/dL 炎症
- 8. SIRS 診断基準における陽性項目数≧3 全身性の炎症
- 9. 年齢≧70 歳 ストレスに対する適応能力低下
- SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90 回/分,(3)呼吸数>20 回/分またはPaCO2<32 torr,(4)白血球数>12,000/mm3か<4,000 mm3または10%幼若球出現
造影CT Grade
- 1 炎症の膵外進展度
- 前腎傍腔 0点
- 結腸間膜根部 1点
- 腎下極以遠 2点
- 2 膵の造影不良域(図Ⅴ�2)
- 膵を便宜的に3 つの区域(膵頭部, 膵体部, 膵尾部) に分け判定する。
- 各区域に限局している場合,または膵の周辺のみの場合 0点
- 2つの区域にかかる場合 1点
- 2つの区域全体を占める,またはそれ以上の場合 2点
- 1+2 合計スコア
- 1点以下 Grade 1
- 2点 Grade 2
- 3点以上 Grade 3
治療
- SSUR.627
- 内科的治療
- 血液量減少:急速輸液
- 膵臓を休ませる?:高カロリー輸液
- 感染防止:抗菌薬
- 組織障害抑制:膵酵素阻害薬
- 多臓器不全:人工呼吸、血漿交換、腹膜透析、血液透析
- (胆石性膵炎では)膵炎の治療の前に内視鏡的乳頭切開術による胆石除去を行う
- 手術療法:壊死膵組織が感染して膵膿瘍、敗血症となった場合に限り適応。膵壊死部摘除術、膵切除術、open drainageを行い、壊死巣を除去する。
手術適応
- B.352
- 緊急手術を要する疾患と鑑別が困難な場合(穿孔性腹膜炎など)
- 保存治療が奏功しない場合
- 胆道疾患が合併するとき
- 合併症が存在するとき(膿瘍、血腫、仮性嚢胞、慢性膵炎)
ガイドライン
- 1. 日本膵臓学会 - 急性膵炎診療ガイドライン2010
- 2. 急性膵炎GL2010改訂出版委員会編/医療・GL(10年)/ガイドライン
参考
- 1. 急性膵炎の重症度判定基準 - 日本メディカルセンター
- 2.
- 3. 難病情報センター | 重症急性膵炎(公費対象)
- [display]http://www.nanbyou.or.jp/entry/271
国試
「膵癌」
- 英
- pancreatic cancer (M), carcinoma of pancreas
- 同
- 膵臓癌
- 関
- 膵腫瘍
疫学
危険因子
ガイドラインより
- 1. 家族歴 :膵癌,遺伝性膵癌症候群 :13倍
- 2. 合併疾患:糖尿病,慢性膵炎,遺伝性膵炎 :DMでは2.1倍
- 3. 嗜好 :喫煙 :喫煙では2倍
HIM.587
- 喫煙、肥満、非遺伝性の慢性膵炎
- (はっきりしない)環境因子:食事、コーヒー、アルコール飲酒、胃部分切除の既往、胆嚢摘出術、ヘリコバクターピロリ
- 糖尿病との関連が示されたが、原因か結果かは明らかでない。
QB.B-336
主要な組織型
- 外分泌腫瘍のなかの浸潤性膵管癌が80%以上を占める。
- 多い組織型は以下の通り:
- 腺房細胞
- (腺癌)腺房細胞癌
- 膵管上皮細胞
- (腺癌)膵管内腫瘍・・・膵管癌
- 管状腺癌 → 最も多い
- 乳頭腺癌
- 腺扁平上皮癌
- 粘液癌
- (腺癌)膵管内腫瘍・・・膵管癌
- 膵管上皮細胞由来
- (嚢胞腺癌)漿液性嚢胞腺癌
- (嚢胞腺癌)粘液性嚢胞腺癌
- 粘液産生膵癌
発生部位
- 膵頭部 → 過半数を占める
- 膵体部
- 膵尾部
症状
- 膵癌診断時には無症状のことが多い。
- 腹痛(40%)、黄疸(15%)、食欲不振、腰背痛、全身倦怠感、体重減少
- 腹痛は膵体尾部癌で多い (QB.B-342 SSUR.633) → 黄疸を示さず、切除不能の進行癌となってから上腹部痛や背部痛を訴えるからであろう
- 膵頭部:胆管並びに膵胆管膨大部閉塞→胆汁色素うっ滞、胆嚢拡大、黄疸
- 膵頚、膵体:門脈、下大静脈の閉塞 (N.295)
検査
- 血液検査:腫瘍マーカー:CEA、CA19-9、SLX、DUPAN-2、SPan-1、CA-50。経過観察に用いる。早期発見には役立たない。
- 超音波検査:不均一な低エコー。主膵管拡張、胆管拡張。
- CT:膵管の狭窄、尾部膵管の拡張。単純で不正な低吸収像、造影で造影効果のない腫瘤影。近接臓器、リンパ節、血管への浸潤が分かる。
- MRI:T1低信号、T2高信号
- MRCP
- 超音波内視鏡:
- ERCP
- 動脈造影:腫瘍濃染はみられない。診断、手術適応の決定に用いられる。動脈・静脈に浸潤していれば手術適応はなくなる ← 造影CTで代用できるから今はやられないのでは?
治療
- 治療のmodality:手術療法、化学療法、放射線療法
- 治療法の選択:切除可能例では手術療法、手術不能例で遠隔転移が無い場合は化学療法±放射線療法、遠隔転移がある場合には化学療法を行う。
- 手術療法:
- 膵頭部癌で黄疸症状のある場合にはPTCDで減黄したのちに手術(QB.B-345)
- 根治手術:
-
- 膵体尾部癌の根治術では脾合併膵体尾部切除術が行われる(QB.B-345)、らしいが。
- 姑息手術
- 化学療法
- 放射線療法
病期分類
- TNM分類
- 浸潤などを含めた記載方法
- [display]http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~pathology/templates/pancreas1.html
- [display]http://ncc.ctr-info.com/2%E2%96%A0%E2%96%A0action=common_download_main&upload_id=481
- [display]http://www.nsknet.or.jp/~nagasato/pcstage.html
参考
- 1. 日本癌治療学会 - がん診療ガイドライン - 膵癌
- [display]http://www.jsco-cpg.jp/item/11
- 2. Minds 膵癌 (参考1)と同じ
国試
「アミラーゼ」
- 図:LAB.599(血清アミラーゼ異常をきたす疾患)
基準値
- 4–400 U/L (HIM.Appendix)
判別
- 検査の本
基準上限以上(高値)(高アミラーゼ血症)
- [高頻度]急性膵炎、慢性膵炎
- [可能性]膵嚢胞、膵癌、総胆管結石、Vater乳頭癌、急性耳下腺炎、唾石、消化管穿孔、腸閉塞、腹膜炎、子宮外妊娠、アミラーゼ産生腫瘍(肺癌、卵巣癌、卵管癌など)、マクロアミラーゼ血症、慢性腎不全、ショック、ERCP後
基準下限以下(減少)(低アミラーゼ血症)
- [可能性]膵全摘後、慢性膵炎や膵癌による膵実質の荒廃、唾液腺摘出後
異常値を示すメカニズム
- OLM.265
高アミラーゼ血症
- 原因:
- 膵臓
- 膵実質の破壊病変:膵炎(原発性・続発性(穿通性十二指腸潰瘍、腹膜炎))、慢性膵炎(頻度低い)、膵癌(頻度低い)
- 膵液分泌経路の閉塞:膵管・総胆管・Vater乳頭部の閉塞によりAMYが血流に逆流する。
- 腸管からの吸収増加:小腸上位に腸閉塞が起こると、十二指腸の拡張によりVater乳頭部を圧迫し、閉塞性増加を来し、また十二指腸の壊死がおこると分泌されたアミラーゼが再吸収されてしまう。
- 腹腔からの吸収:消化管穿孔においてはアミラーゼを含む消化液が腹腔に漏出し、これが腹膜より吸収されるため。(QB.A-353)
- 唾液腺
- 唾液腺の病変:ムンプス、耳下腺腫瘍、唾石
- その他
- 肝障害:肝炎、アルコール肝障害。この場合S型AMYが上昇
- 肺癌による異所性AMY:肺癌や卵巣癌でS型AMYが産生される。
- 子宮外妊娠破裂:S型AMy上昇
- 腎不全:血清AMYの約1/3は腎糸球体を通して尿中に排泄されるが、腎機能低下例では増加する
- マクロアミラーゼ血症:血清中のAMYの一部が免疫グロブリンや多糖体吐血尾久して大きな分子集団を作ることがある。
- 心因性拒食症、胸痛、手術後:S型AMY上昇
低アミラーゼ血症
- 膵や唾液腺の摘出後、慢性膵炎や膵癌による膵実質の荒廃
血清アミラーゼとアイソザイムの異常
- LAB.599
膵型アミラーゼ活性の異常 | 活性増加 | 急性膵炎 |
慢性膵炎増悪 | ||
膵癌、膵嚢腫、膵仮性嚢胞などでの随伴性膵炎 | ||
胆道系の炎症性疾患 | ||
ERCP後、PS試験後 | ||
ステロイドホルモン投与後 | ||
唾液腺型アミラーゼ活性低下による相対的な膵型優位 | ||
活性低下 | 慢性膵炎 | |
膵癌(末期) | ||
膵切除後 | ||
唾液腺型アミラーゼ活性の異常 | 活性増加 | 流行性耳下腺炎 |
術後、外傷後、ショック後、熱傷後 | ||
糖尿病ケトアシドーシス | ||
人工心肺使用後 | ||
アミラーゼ産生腫瘍(肺癌、卵巣癌など) | ||
肺炎、肺結核 | ||
腎疾患 | ||
唾液腺造影後 | ||
膵型アミラーゼ活性低下による相対的な唾液腺型優位 | ||
活性低下 | 放射線治療後(下顎部、頚部など) | |
シェーグレン症候群 | ||
膵型・唾液腺型共に活性増加 | 腎不全 | |
肝硬変、慢性肝炎の一部 | ||
膵型・唾液腺型に分類不能の活性増加 | マクロアミラーゼ血症 | |
アミラーゼ産生腫瘍の一部 |
「腹痛」
コアカリ診療の基本 p.107
心窩部 | 食道潰瘍 | 胸焼け、嚥下困難 |
急性胃炎 | 悪心、嘔吐を伴う | |
消化性潰瘍 | 空腹時悪化傾向 | |
胃癌 | 進行しないと痛まず | |
虫垂炎初期 | 回盲部に圧痛 | |
急性膵炎 | 激烈な腹痛、背部痛、膵酵素の上昇 | |
慢性膵炎 | 不定の上腹部症状で神経症的にみえる | |
膵臓癌 | 浸潤すると疼痛強し | |
右季肋部 | 胆石症 | 右肩に放散、発作間は痛みほとんどなし |
急性胆嚢炎 | 発熱、圧痛著明、肝胆道系酵素上昇 | |
急性肝炎 | 肝腫大、鈍痛、黄疸-肝酵素著明に上昇 | |
肝膿瘍 | 激しい発熱、叩打痛は肋骨弓部付近など | |
肝癌 | 鈍痛、破裂すると激しい痛み | |
左右側腹部 | 尿管結石 | 肋骨脊椎角の叩打痛、血尿、超音波検査で水腎症 |
腎盂腎炎 | 急激な発熱と叩打痛、膿尿 | |
腎梗塞 | 時に一過性の激しい痛み、血尿 | |
回盲部 | 虫垂炎 | 他疾患除外の目的で、超音波検査が有用 |
右側結腸憩室炎 | 虫垂炎との鑑別困難 | |
回腸末端炎 | 虫垂炎との鑑別が必要 | |
クローン病 | 回盲部潰瘍をきたしやすい | |
大腸癌 | 右側結腸癌は腫癌を触知することが多い | |
左腸骨窩部 | 虚血性大腸炎 | 急激な腹痛と下血 |
S状結腸憩室炎 | 腹痛、圧痛、発熱 | |
急性大腸炎 | 下痢、嬬動の元進 | |
S状結腸軸捻転 | 便秘老人、鼓腸強い、内視鏡的修復 | |
下腹部 | 子宮付属器炎 | 発熱、圧痛 |
卵巣嚢腫茎捻転 | ショックに陥ることもあり、超音波検査が有用 | |
子宮外妊娠破裂 | 急激に貧血が進行、ショックなど | |
生理痛 | 内膜症がある場合は強い | |
全体 | 腹膜炎 | 原発性、結核性、癌性など症状が微妙に異なる |
潰瘍穿孔 | 腹壁防御、板状硬、緊急手術 | |
腸間膜血栓症 | 鼓腸、腸麻痺、ショック、最も重篤 |
- 小腸疾患による腹痛は食事後20分後ぐらいから始まることが多い。(QB.A-308)
乳幼小児の腹痛
- SPE.481
- 乳幼児・学童に共通して最も多い腹痛の原因は便秘。その他は急性胃腸炎、胆道拡張症
「炎」
- n.
- comb form.
- (炎症の接尾辞)itis
「膵炎」
- 英
- pancreatitis
- 関
- 急性膵炎、慢性膵炎
「慢性」
- 英
- chronicity
- 関
- 慢性的、慢性型
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