出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/05/19 10:12:24」(JST)
この項目では、日本の法について説明しています。各国の法・法制については「少年法制」をご覧ください。 |
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
少年法 | |
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日本の法令 |
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通称・略称 | なし |
法令番号 | 昭和23年7月15日法律第168号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 刑事法、社会保障法 |
主な内容 | 少年の保護更生 |
関連法令 | 刑事訴訟法、刑法、少年審判規則、少年院法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
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少年法(しょうねんほう、昭和23年7月15日法律第168号)は、少年の保護事件、少年や一定の福祉犯罪を犯した成人の刑事事件に関する刑事訴訟法の特則を規定した日本の法律。
触法少年に対する行政機関による保護処分について定めた1922年に制定された旧少年法(大正11年法律42号)を戦後、GHQの指導の下に全部改正して成立した。
少年法では未成年者には成人同様の刑事処分を下すのではなく、原則として家庭裁判所により保護更生のための処置を下すことを規定する。ただし、家庭裁判所の判断により検察に逆送し刑事裁判に付さしめることもできるが、その場合においても不定期刑や量刑の緩和など様々な配慮を規定している(51条、52条、58条、59条、60条等。少年保護手続の項目も参照)。なお、少年に対してこのような規定をおくのは、未成年者の人格の可塑性に着目しているためとされている。
年齢 | 少年法適用 | 少年院送致 | 刑事責任 | 刑事裁判 | コメント |
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0~11歳 | ○ | × | × | × | 刑事責任年齢に達していないため、処罰されない 11歳は「おおむね12歳以上」に含まれ少年院に送致される可能性がある |
12、13歳 | ○ | ○ | × | × | 刑事責任年齢に達していないため、処罰されない |
14、15歳 | ○ | ○ | ○ | × | 刑事裁判の対象外、少年法により処分される |
16、17歳 | ○ | ○ | ○ | △ | 家庭裁判所は「刑事処分が相当」と判断した少年を検察官に送致(逆送)することができる。 死刑→無期刑、無期刑→20年以下の有期刑に減刑 |
18、19歳 | ○ | ○ | ○ | △ | 家庭裁判所は「刑事処分が相当」と判断した少年を検察官に送致(逆送)することができる。 成人と同じ刑罰 |
2000年改正で、刑事処分の可能年齢が「16歳以上」から「14歳以上」となった[1]。
2007年改正で、少年院送致の対象年齢は「おおむね12歳以上」となる。法務省は「おおむね」の幅を「1歳程度」とするため、11歳の者も少年院収容の可能性がある[1]。
本法でいう「少年」とは20歳に満たない者を、「成人」とは満20歳以上の者をいい(2条1項)、性別は無関係である。
国民投票法で18歳以上を成年とみなす項目があることから、少年法の年齢規定が見直しになる可能性がある。2015年2月18日、共産、社民両党を除く与野党各党が、選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公職選挙法改正案を共同で衆院に再提出する方針を決定[2]。改正案は、18、19歳の者でも買収など連座制の対象となる悪質な選挙違反を犯した場合には、原則として家庭裁判所が検察官送致(逆送)し、成人と同じ処罰対象とする規定が盛り込まれている[2]。この改正公職選挙法は2015年6月に成立し選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた[3]。
犯罪を犯した時に18歳未満であった少年の量刑に関して、51条1項は、死刑をもって処断すべき場合は無期刑にしなければ「ならない」とする。そして、同条2項は、無期刑をもって処断すべき場合でも、10年以上15年以下の有期刑することが「できる」とする。2014年の改正で無期懲役に代わって言い渡せる有期懲役の上限が20年以下に、不定期刑も「10年〜15年」に引き上げとなった[4][5]。(第186回国会、可決日2014年4月11日、公布日2014年4月18日、施行日2014年5月7日)[4]
少年法は、「少年」に関する情報の取り扱いを以下のように規定している(努力義務であり、罰則規定はない)。
“ | 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。 | ” |
—少年法 第六十一条(記事等の掲載の禁止)[6] |
少年法が実名報道を禁止するのは、あくまで、家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者についてであり、指名手配者や逮捕者は含まれない。また、「本人であることを推知することができる」というのは、不特定多数の一般人にとって推知可能なことをさし、事件関係者や近隣住民にとって推知可能なことをさすものではない[7]。さらに、インターネットへの実名掲載は規制対象外である[8]。
マスコミは原則的に、実名報道が禁止されていない場合でも、自主規制を行い匿名で報道する。ただし、永山則夫連続射殺事件など、例外も存在する(事件の重大性を鑑みて、実名公表された)。
1997年に発生した神戸連続児童殺傷事件では、少年法によって加害少年が手厚く保護され、被害者側の権利は蔑ろにされている実態が国民に明らかとなり、大きな議論を呼び、法改正されるきっかけとなった。
ただし、法務省が発行する犯罪白書によれば、戦後のピーク時(1960年代)と2000年代を比較すれば少年の凶悪犯罪の実数は4分の1にまで低下している。
少年事件の審判の非公開と少年の実名報道の禁止は、憲法の保障する表現の自由を侵害する可能性があるとして、国民の知る権利の観点から少年事件と表現の自由の関係を考え直し、少年法61条の改正を提言する主張もある[11]。さらに、被害者のプライバシーがさらされる状況に対して疑問を呈する意見も出されている[12]。
物議を醸した例として、2006年に発生した山口女子高専生殺害事件がある。被疑者の少年(事件当時19歳)が自殺した状態で発見されたため、たとえ犯人だった場合でも更生の可能性はないため、匿名にする必要性がなくなったと独自の法解釈を示して、一部の報道機関(日本テレビ、テレビ朝日、讀賣新聞)は被疑者の遺体発見後から顔写真と実名を報道した。これに対して杉浦法相は「死亡後も保護の対象から除外されない」とし、「報道の際は慎重に対応していただきたい」と述べた。
旧少年法(大正11年法律42号)の下では少年の定義は18歳未満(第一条)、死刑適用限界年齢は16歳以上(第七条)[注 1]と[13]いずれも2歳低かった。また、戦時中は戦時刑事特別法があり、たとえ少年法に当てはめれば少年であっても裁判上は少年扱いせずに裁く事も可能だった。
現行少年法は昭和23年、GHQの指導の下、米国シカゴの少年犯罪法を模範として制定された。当時は第二次大戦後の混乱期であり、食料が不足する中、孤児などが生きていくために窃盗や強盗などをする少年が激増し、また成人の犯罪に巻き込まれる事案も多く、これらの非行少年を保護し、再教育するために制定されたものであって、少年事件の解明や、犯人に刑罰を加えることを目的としたものではなかった[14]。
少年法等の一部を改正する法律(平成19年法律68号)が施行される2007年11月1日以前は、少年院送致の対象年齢は14歳以上とされていた。少年犯罪の凶悪化や低年齢化に伴い、少年院送致の対象年齢を「おおむね12歳以上」に引き下げる “少年法等の一部を改正する法律案” は自民党・公明党の賛成によって可決成立した。同法案に対し、日本弁護士連合会や自由法曹団などは反対していた。[要出典]
大正14年4月17日法律第42号。本法において少年とは18歳未満の者である(1条)。少年に対しては保護処分と刑事処分をなし得る。保護処分は刑事法令に触れる行為をなし、または刑事法令に触れる行為をなすおそれがある少年に対してなされる。保護処分の種類は、(1) 訓誡、(2) 校長の訓誡、(3) 書面による改心の誓約、(4) 保護者に対する引渡、(5) 寺院、教会、保護団体または適当な者への委託、(6) 少年保護司の観察、(7) 感化院送致、(8) 矯正院送致、(9) 病院送致または委託であり、各処分は適宜併せてなすことができる(4条)。保護処分は少年審判院において掌る(15条)。刑事処分は少年に対して特例が設けられ、罪を犯すとき16歳未満の者に対しては死刑、無期刑を科せず、死刑または無期刑をもって処断すべきときは10年以上または15年以下において懲役または禁錮を科す。ただし旧刑法75条または200条の罪についてはこの限りでない(7条)。少年に対して長期3年以上の有期の懲役または禁錮をもって処断すべきときはその刑の範囲内において短期と長期とを定めた不定期刑を言い渡す。ただし短期5年を超える刑をもって処断するときは短期を5年に短縮する。この不定期宣告刑の刑期は5年、長期は10年を超えることを得ない(8条)。検事が少年に対する刑事事件について保護処分をなすのを適当と思料したときは事件を少年審判所に送致することを要する(62条)。少年審判所は少年に対して刑事訴追の必要があると認めたときは事件を管轄裁判所の検事に送致することを要する(47条)。
職員は、少年審判官、少年保護司および書記の3種である(旧少年法3条)。少年審判所の設立、廃止および管轄に関する規程は勅令で定める(16条。大正11年勅令第488号少年審判所設置の件)。審判機関は単独制で1人の審判官によって行なわれる。もし2人以上の少年審判官を1少年審判所に配置してあるときはこの管理および監督は上位の審判官においてこれをおこなう(20条)。少年審判所の監督は司法大臣に属し、司法大臣は控訴院長および地方裁判所長に監督を命じることを得る(17条)。少年審判官は少年審判所の事務を管理し、所属職員を監督する。少年審判官は判事とはことなり俸給を受けるほかの公務を兼務することができるし、判事としての資格を有する少年審判官は判事を兼ね得る。少年審判官は判事の裁判とはことなり少年のため保護処分を加えるが、審判官と審判を受ける少年との関係上、公平な審判をなし得ない疑を受けるような場合は、職務の執行を避けることになっている(22条)。少年審判官は奏任官である。少年保護司は少年審判官を輔佐し、審判の資料を提供し、少年に対する観察保護をおこなう。少年保護司は奏任官と判任官とがある。書記は少年審判官または少年保護司の指揮を受け、審判に関する書類の調製を掌り、庶務に従事する(24条)。書記は判任官である。少年審判所は公務所または公務員に対して必要な補助を求めることができる。
少年法で、少年の保護または教育に経験を有する者らすなわち宗教家、教育家または児童保護事業の経験家を多く任じることに定められ、有給の者と無給嘱託の者とある。主な任務は、少年審判所が審判をなす以前に少年審判官を輔佐して、審判の資料を蒐集提供する調査事業と、判決によって少年が保護処分に付された場合、これを観察する保護事業である。調査事業は、事件関係、性行、境遇、心身の状況、生立、教育、職業、家族、血族、保護者、非行に対する感想等につき精査する要があり、必要に応じて審判の席上意見を陳べ得る。いったん判決によって保護処分に付せられた際は「少年保護司執務心得」によって少年の師匠となり、少年の家庭、保護者等周囲の者と連絡を取って健康、品性、職業等万般に関し常に指導誘掖してもって善良な少年たらしめる。
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