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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/10/28 15:54:32」(JST)
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マルピーギ管(Malpighian tubule)は昆虫・多足類・クモ・緩歩動物[1]で見られる浸透圧調節・排出器官である。
この器官は消化器から伸びる分岐した管から構成され、血リンパから水や代謝産物などを排出する。17世紀の解剖学者マルチェロ・マルピーギにちなんで命名された。
マルピーギ管はクモ類にも単枝亜門(Uniramia)にもあるが、これが相同か収斂進化の結果かは不明である。
構造
通常は消化管の後方に開く細い管として見られる。管の数は種によって異なるが、ほとんどの場合2の倍数である。単細胞層から構成され、近位末端は中腸と後腸の間に開くが遠位末端は閉じ、入り組んでいるのが普通である。血リンパに浸かっており、脂肪体組織と近接している。アクチンが全体の構造を支え、管に沿って物質を輸送するための微絨毛を持つ。ほとんどの昆虫では筋肉組織が付随するが、これには内容物を混合したり血リンパをかき混ぜたりする役割があると考えられる。シミ目・革翅目・総翅目の昆虫はこの筋肉組織を持たず、アブラムシ科・トビムシ目の昆虫はマルピーギ管を欠く。
機能
電解質や窒素代謝物を管の外から中に輸送し、原尿を作る。K・Naなどのイオンは能動輸送されるが、尿素・アミノ酸などは受動輸送されると考えられ、水もそれに伴って輸送される。これは管の遠位末端で行われ、原尿は弱塩基性である。管の近位末端ではCO2が原尿に吸収され、これに伴って尿酸が析出する。そして、吸収したCO2に相当する量のK・Naなどのイオンが炭酸塩として再吸収され、尿は弱酸性となる[2]。その後尿は後腸の中で消化された食物と混合され、尿酸は糞中に排出される。
付加的な機能
他の昆虫ではさらに高度な機能が明らかになっている。半翅目の昆虫は腸内の液体を管に逆流させ、水や電解質を直接血リンパに再吸収することができる。
鞘翅目・鱗翅目では管の遠位末端が直腸周辺の脂肪体に潜り込み、隠腎管複合体(cryptonephridial arrangement)という構造を形成する。ここで一旦排出されたイオンを選択的に吸収・排出することで、体内のK・Naのバランスをとることができる[3]。
別の機能
この管が全く違う役割を持っている昆虫もいる。ニュージーランドのヒカリキノコバエArachnocampa luminosaの幼虫は膨潤したマルピーギ管を青緑に発光させ[4]、獲物をおびき寄せるために使う。
有害なアレロパシー物質を含む植物を食べる昆虫もいるが、このような昆虫では血リンパからの有害物質の急速な排出にマルピーギ管を用いる。
出典
- ^ NADJA MØBJERG, CHRISTINA DAHL, Studies on the morphology and ultrastructure of the Malpighian tubules of Halobiotus crispae Kristensen, 1982 (Eutardigrada), doi:10.1111/j.1096-3642.1996.tb02335.x
- ^ J. A. RAMSAY (1952), “THE EXCRETION OF SODIUM AND POTASSIUM BY THE MALPIGHIAN TUBULES OF RHODNIUS”, J Exp Biol 29: 110-126, http://jeb.biologists.org/content/29/1/110.full.pdf
- ^ http://ocw.kyoto-u.ac.jp/faculty-of-agriculture-jp/department-01/5195000/pdf/01/132.pdf
- ^ Green, L.B.S. (1979) The fine structure of the light organ of the New Zealand glow-worm Arachnocampa luminosa (Diptera: Mycetophilidae). Tissue and Cell 11: 457-465.
- Gullan, P.J. and Cranston, P.S. (2000) The Insects: An Outline of Entomology. Blackwell Publishing UK ISBN 1-4051-1113-5
- Romoser, W.S. and Stoffolano Jr., J.G. (1998) The Science of Entomology. McGraw-Hill Singapore ISBN 0-697-22848-7
- Bradley, T.J. The excretory system: structure and physiology. In: Kerkut, G.A. and Gilbert, L.I. eds. Comprehensive insect physiology, biochemistry and pharmacology. Vol.4 Pergamon Press New York ISBN 0-08-030807-4 pp. 421-465
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