テラプレビル
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テラプレビル
|
IUPAC命名法による物質名 |
(1S,3aR,6aS)-2-[(2S)-2-[[(2S)-2-Cyclohexyl-2-(pyrazine-2-carbonylamino)acetyl]amino]-3,3-dimethylbutanoyl]-N-[(3S)-1-(cyclopropylamino)-1,2-dioxohexan-3-yl]-3,3a,4,5,6,6a-hexahydro-1H-cyclopenta[c]pyrrole-1-carboxamide
|
臨床データ |
商品名 |
Incivek, Incivo |
AHFS/Drugs.com |
Consumer Drug Information |
MedlinePlus |
a611038 |
ライセンス |
US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
|
投与方法 |
Oral[1] |
薬物動態データ |
血漿タンパク結合 |
59–76% [2] |
半減期 |
9–11 hours [2] |
識別 |
CAS番号 |
402957-28-2 |
ATCコード |
J05AE11 |
PubChem |
CID: 3010818 |
ChemSpider |
2279948 |
UNII |
655M5O3W0U |
KEGG |
D09012 |
ChEBI |
CHEBI:68595 |
ChEMBL |
CHEMBL231813 |
NIAID ChemDB |
213006 |
化学的データ |
化学式 |
C36H53N7O6 |
分子量 |
679.85 g/mol |
InChI
-
InChI=1S/C36H53N7O6/c1-5-10-25(29(44)34(48)39-23-15-16-23)40-33(47)28-24-14-9-13-22(24)20-43(28)35(49)30(36(2,3)4)42-32(46)27(21-11-7-6-8-12-21)41-31(45)26-19-37-17-18-38-26/h17-19,21-25,27-28,30H,5-16,20H2,1-4H3,(H,39,48)(H,40,47)(H,41,45)(H,42,46)/t22-,24-,25-,27-,28-,30+/m0/s1
-
Key:BBAWEDCPNXPBQM-GDEBMMAJSA-N
|
テラプレビル(Telaprevir、商品名:テラビック、開発コード:MP-424、VX-950)は、田辺三菱製薬が創薬したC型肝炎の治療薬である。セリンプロテアーゼ阻害作用を持つ抗ウイルス薬に分類される[3]。テラプレビルはC型肝炎ウイルスのNS3.4Aセリンプロテアーゼ(英語版)への選択性が高い[4]。遺伝子型1型(1a、1b)又は2型(2a、2b)のウイルスに対してのみ有効性・安全性が確認されており[5]、他のタイプのウイルスへの効果は明らかではない。標準治療であるペグインターフェロン(英語版)とリバビリンの併用療法は1型C型肝炎には効果が弱い。
目次
- 1 効能・効果
- 2 臨床試験から承認まで
- 3 遺伝子多型
- 4 副作用
- 5 注
- 6 参考資料
効能・効果
- 日本
- 血清型1群(遺伝子型 1a、1b)ウイルスに対して
- 血中HCV RNA量が高値の未治療患者又はインターフェロンを含む治療法が無効又は再燃となった患者でのウイルス血症の改善
- 血清型2群(遺伝子型 2a、2b)ウイルスに対して
- インターフェロン製剤の単独療法又はリバビリンとの併用療法で無効又は再燃となった患者でのウイルス血症の改善
- 米国
- 遺伝子型1型の慢性C型肝炎の治療
臨床試験から承認まで
無作為化比較臨床試験(PROVE3)は、ペグインターフェロンα-2a(英語版)・リバビリン併用療法が無効となった患者を対象にして、テラプレビルを追加する事でウイルス学的著効(SVR)が得られるかどうかを追加しない群と比較した試験である[6]。ペグインターフェロンα-2a・リバビリンを1年間継続した患者では、テラプレビルの追加24週間でSVR率53%であり、テラプレビル非追加群では14%であった。同試験では治療期間を短縮し3ヶ月のテラプレビル投与及びペグインターフェロンα-2a・リバビリン6ヶ月を投与した際のSVR率は51%であった。2つ目の無作為化比較臨床試験(REALIZE)は、再燃又はPR[注 1]の患者を対象に実施され、テラプレビル治療群のSVR率83〜88%、対照群24%であった[7]。3つ目の無作為化比較臨床試験(ADVANCE)は前治療歴の無い患者を対象としたもので[8]、テラプレビル投与群のSVR率は69〜75%、対照群は44%であった。
2011年4月、FDA諮問委員会は賛成18票vs反対0票で遺伝子型1型の慢性C型肝炎の治療へのテラプレビルの使用を承認した。委員会は臨床試験のデータ(ADVANCE、ILLUMINATE[9]、REALIZE試験を含む)を精査し、テラプレビルをペグインターフェロン・リバビリンと併用する事で標準治療に比べてより速くより高い治癒率が得られるとした。この改善は、遺伝子型1型HCV感染者、肝硬変患者、インターフェロン治療が奏効しなかった患者にとって注目すべきものである。テラプレビルは2011年5月にFDAに承認された[10]。
日本でも血清型1群のC型肝炎について第III相臨床試験を実施[11]:19し、2011年9月に未治療の血清型1群C型肝炎について承認された[12]後、血清型1群C型肝炎の無効・再燃についての第III相臨床試験2本と血清型2群のC型肝炎についての第III相臨床試験2本を実施し、2014年9月に承認された[13]。
遺伝子多型
宿主の遺伝子が、急性C型肝炎ウイルス感染からの回復の際だけでなくインターフェロン療法でウイルス学的著効(SVR)を達成する際にも重要な役割を担う事が19番染色体の2ヶ所の単一塩基の遺伝的多型の発見から裏付けられた。インターロイキン-28B遺伝子の3kb上流に有る劣性の対立遺伝子rs8099917と隣接する多型rs12979860は内在性抗ウイルスサイトカインIFN-λをコードするが、自然免疫がウイルスを排出してSVRとなる過程に関係する。この対立遺伝子の存在率には人種差が有り、それを人種間のSVR率の差の説明とする事が出来る。この遺伝子多型の一つを検出する臨床検査が有り、患者がSVRとなるか否かを良い精度で予測する事が出来る。恐らくより重要な事は、その臨床検査が慢性・急性の個々の患者に対して最適な治療法と治療期間を選択する一助になり得る事であろう。
副作用
テラプレビル・ペグインターフェロン・リバビリン併用時に発現し得る重大な副作用は、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)、急性腎不全、貧血、ヘモグロビン減少、敗血症、汎血球減少、無顆粒球症、好中球減少、血小板減少、白血球減少、肺塞栓症、血栓塞栓症、失神、譫妄、意識消失、躁状態、抑鬱、呼吸困難、網膜症、白内障、自己免疫現象、糖尿病、重篤な肝機能障害、横紋筋融解症、間質性肺炎、消化管出血(下血,血便等)、消化管潰瘍である。
5%以上に発現する副作用は、発疹、脱毛症、薬疹、瘙痒症、湿疹、紅斑、貧血、白血球数減少、血小板数減少、好中球数減少、発熱、倦怠感、インフルエンザ様症状、頭痛、味覚異常、不眠症、浮動性めまい、食欲減退、悪心、嘔吐、腹部不快感、下痢、口内炎、便秘、口渇、口唇炎、血中ビリルビン増加、血中クレアチニン増加、関節痛、筋肉痛、背部痛、咳嗽、血中尿酸増加、血中トリグリセリド増加、高尿酸血症、脂質異常症、ヒアルロン酸増加、注射部位紅斑、注射部位反応、血中リン減少、血中カリウム減少である。
重篤な皮膚反応は時に致死的となるので、FDAは製造業者に対して添付文書への黒枠警告設置を指示した。業者は警告欄を設置したが、FDAは、2名が皮膚障害で死亡し、計112名の患者で2種類の何れかの皮膚反応が発現していると報告した[14]。
注
- ^ ウイルス量は1⁄100以下に低下するが完全消失はしていない状態。
参考資料
- ^ Kim, Jenny; Culley, Colleen; Mohammad Rima, Telaprevir (2012). “An Oral Protease Inhibitor for Hepatitis C Virus Infection”. Am J Health Syst Pharm 69 (1): 19–33. doi:10.2146/ajhp110123.
- ^ a b Kiser JJ, Burton JR, Anderson PL, Everson GT (May 2012). “Review and Management of Drug Interactions with Boceprevir and Telaprevir”. Hepatology 55 (5): 1620–8. doi:10.1002/hep.25653. PMC 3345276. PMID 22331658. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3345276/.
- ^ Revill, P., Serradell, N., Bolos, J., Rosa, E. (2007). “Telaprevir”. Drugs of the Future 32 (9): 788. doi:10.1358/dof.2007.032.09.1138229. http://journals.prous.com/journals/servlet/xmlxsl/pk_journals.xml_summaryt_pr?p_type=1959f8821565c34e42a0f67c3fe47e&p_JournalId=2&p_RefId=1138229.
- ^ Lin C, Kwong AD, Perni RB (March 2006). “Discovery and development of VX-950, a novel, covalent, and reversible inhibitor of hepatitis C virus NS3.4A serine protease”. Infect Disord Drug Targets 6 (1): 3–16. doi:10.2174/187152606776056706. PMID 16787300.
- ^ “テラビック錠250mg 添付文書” (2015年2月). 2015年3月3日閲覧。
- ^ McHutchison JG, Manns MP, Muir AJ, et al. (2010). “Telaprevir for previously treated chronic HCV infection”. N Engl J Med 362 (14): 1292–303. doi:10.1056/NEJMoa0908014. PMID 20375406. http://content.nejm.org/cgi/pmidlookup?view=short&pmid=20375406&promo=ONFLNS19.
- ^ Zeuzem S, Andreone P, Pol S, et al. (2011). “Telaprevir for retreatment of HCV infection.”. N Engl J Med 364 (25): 2417–28. doi:10.1056/NEJMoa1013086. PMID 21696308.
- ^ Jacobson IM, McHutchison JG, Dusheiko G, et al. (2011). “Telaprevir for previously untreated chronic hepatitis C virus infection.”. N Engl J Med 364 (25): 2405–16. doi:10.1056/NEJMoa1012912. PMID 21696307.
- ^ Sherman KE, Flamm SL, Afdhal NH, Nelson DR, Sulkowski MS, Everson GT, et al. (2011). “Response-guided telaprevir combination treatment for hepatitis C virus infection.”. N Engl J Med 365 (11): 1014–1024. doi:10.1056/NEJMoa1014463. PMID 21916639. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1014463.
- ^ “FDA Approves Telaprevir for HCV” (2011年5月23日). 2015年3月3日閲覧。
- ^ “テラビック錠250mg インタビューフォーム” (2014年9月). 2015年3月3日閲覧。
- ^ “新しい作用機序を有するC型慢性肝炎治療薬抗ウイルス剤「テラビック®錠250mg」の国内における製造販売承認取得について”. 田辺三菱製薬 (2011年9月26日). 2015年3月3日閲覧。
- ^ “抗ウイルス剤「テラビック®錠250mg」ジェノタイプ2型C型慢性肝炎に係る追加適応の承認取得のお知らせ”. 田辺三菱製薬 (2014年9月14日). 2015年3月3日閲覧。
- ^ Staff, Boston.com. December 19, 2012. Vertex updates label of hepatitis C drug after reports of a ‘small number of fatal skin reactions’
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- Industrial Info. C型慢性肝炎患者におけるテラビック(テラプレビル)の国内臨床試験成績
- 新薬くろ~ずあっぷ(136)テラビック錠250mg(テラプレビル)
- 新薬レビュー テラプレビル Telaprevir : テラビック錠 田辺三菱製薬株式会社
Related Links
- テラビック製品情報:田辺三菱製薬の医療関係者向け製品情報サイト。添付文書、インタビューフォーム、薬価、使用期限検索、製剤写真、患者用資材など。 ... 表紙 タイトル 内容 ダウン ロード C型慢性肝炎と上手につきあうために ...
- テラビック製品紹介:田辺三菱製薬株式会社の提供するテラビック製品紹介サイトです。テラビックの特徴(特性)、開発の経緯、作用機序、警告・禁忌を含む使用上の注意などを医療関係者の皆さまに向けてご紹介しています。
- テラビックとは?テラプレビルの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 概説 C型慢性肝炎を治療するお薬です。インターフェロンとリバビリンと併用し、原因ウイルスを排除します。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
テラビック錠250mg
組成
有効成分・含量(1錠中)
添加物
- ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート,ラウリル硫酸ナトリウム,無水リン酸水素カルシウム,クロスカルメロースナトリウム,結晶セルロース,軽質無水ケイ酸,フマル酸ステアリルナトリウム
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 本剤の服用により重篤な皮膚障害が発現したことのある患者
- コントロールの困難な心疾患(心筋梗塞,心不全,不整脈等)のある患者〔貧血が原因で心疾患が悪化することがある.〕
- 異常ヘモグロビン症(サラセミア,鎌状赤血球性貧血等)の患者〔貧血が原因で異常ヘモグロビン症が悪化することがある.〕
- 下記の薬剤を使用中の患者(「相互作用」の項参照)
抗不整脈薬のうち次の薬剤
- キニジン硫酸塩水和物,ベプリジル塩酸塩水和物,フレカイニド酢酸塩,プロパフェノン塩酸塩,アミオダロン塩酸塩
麦角アルカロイド
- エルゴタミン酒石酸塩,ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩,エルゴメトリンマレイン酸塩,メチルエルゴメトリンマレイン酸塩
HMG-CoA還元酵素阻害剤のうち次の薬剤
- ロバスタチン(国内未承認),シンバスタチン,アトルバスタチンカルシウム水和物
PDE5阻害剤のうち次の薬剤
- バルデナフィル塩酸塩水和物,シルデナフィルクエン酸塩(肺高血圧症を適応とする場合),タダラフィル(肺高血圧症を適応とする場合)
その他
- ピモジド,トリアゾラム,アルフゾシン(国内未承認),ブロナンセリン,コルヒチン(肝臓又は腎臓に障害のある患者に使用する場合),リファンピシン
効能または効果
- セログループ1(ジェノタイプI(1a)又はII(1b))のC型慢性肝炎における次のいずれかのウイルス血症の改善
- 血中HCV RNA量が高値の未治療患者
- インターフェロン製剤の単独療法,又はリバビリンとの併用療法で無効又は再燃となった患者
- 本剤の使用に際しては,HCV RNAが陽性であることを確認すること.
- 血中HCV RNA量が高値の未治療患者に用いる場合は,血中HCV RNA量がRT-PCR法で5.0Log IU/mL以上に相当することを確認すること.
- C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善への本剤の使用にあたっては,自己免疫性肝炎,アルコール性肝炎等その他の慢性肝疾患でないこと,肝硬変を伴う慢性肝炎でないこと及び肝不全を伴わないことを確認する.また,組織像又は肝予備能,血小板数等により慢性肝炎であることを確認すること.
- 通常,成人には,テラプレビルとして1回750mgを1日3回食後経口投与し,投与期間は12週間とする.
本剤は,ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンと併用すること.
- 本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない.
- 本剤は12週間を超えて投与した際の有効性及び安全性は確立していない.(「臨床成績」の項参照)
- 本剤,ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンを併用する場合には,3剤併用投与で治療を開始し,本剤投与終了後,引き続きペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンによる2剤併用を実施する.なお,本剤と併用するペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンは24週間を超えて投与した場合の有効性及び安全性は確立していない.(「臨床成績」の項参照)
- 本剤を空腹時に服用した場合は,十分な血中濃度が得られないため,必ず食後に服用するように患者に指導すること.また,投与間隔等を調節するよう,以下の内容も踏まえて患者に指導すること.(「薬物動態」の項参照)
- 低脂肪食の食後に本剤を投与した場合,高脂肪食の食後に投与した場合に比べて血漿中濃度が低下するとの報告がある.
- 臨床試験において本剤の有効性及び安全性は食後にて8時間間隔投与で検討されている.
- ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)は,通常,成人には,1回1.5μg/kgを週1回皮下投与する.
- リバビリンは,通常,成人には,下記の用法・用量で経口投与する.
リバビリンの投与に際しては,患者の状態を考慮し,減量,中止等の適切な処置を行うこと.特に,投与開始前のヘモグロビン濃度が13g/dL未満の患者には,リバビリンの投与量を200mg減量し,下記の用法・用量で経口投与する.
- 本剤とペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンを併用するにあたっては,ヘモグロビン濃度が12g/dL以上であることが望ましい.また,投与中にヘモグロビン濃度の低下が認められた場合には,下記を参考にリバビリンの用量を調節,あるいは本剤,ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンの投与を中止すること.なお,リバビリンの最低用量は200mg/日までとする.
上記の基準に加えて,ヘモグロビン濃度が1週間以内に1g/dL以上減少し,その値が13g/dL未満の場合は,リバビリンを更に200mg減量する.
- 本剤とペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンを併用するにあたっては,白血球数が4,000/mm3以上又は好中球数が1,500/mm3以上,血小板数が100,000/mm3以上であることが望ましい.また,投与中に白血球数,好中球数又は血小板数の低下が認められた場合には,下記を参考にペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)の用量を調節,あるいは本剤,ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンの投与を中止すること.
- 投与開始前のヘモグロビン濃度が14g/dL未満,好中球数が2,000/mm3未満あるいは血小板数が120,000/mm3未満の患者,高齢者及び女性ではペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンの減量を要する頻度が高くなる傾向が認められるので,投与開始から2週間は原則入院させること.
慎重投与
- 本剤の服用により皮膚障害が発現したことのある患者
- インターフェロン製剤やリバビリンの使用により,高度の副作用(発疹等)が発現したことのある患者〔本剤を併用投与することにより副作用が増強する可能性がある.〕
- 腎機能障害のある患者〔腎機能障害の悪化を来すことがある.〕
- 高血圧のある患者〔腎機能障害の発現リスクが高くなるおそれがある.〕
- 糖尿病のある患者〔腎機能障害の発現リスクが高くなるおそれがある.〕
- 投与開始前のヘモグロビン濃度が14g/dL未満,好中球数が2,000/mm3未満あるいは血小板数が120,000/mm3未満の患者及び女性〔投与中止あるいは減量を要する頻度が高くなる傾向が認められている.〕
- 中枢・精神神経障害又はその既往歴のある患者〔中枢・精神神経症状が悪化又は再燃することがある.〕
- 心疾患又はその既往歴のある患者〔貧血により心機能の異常,冠状動脈疾患が悪化又は再燃する可能性がある.過量投与によりQT延長が報告されている.(「過量投与」の項参照)〕
- 痛風又はその既往歴のある患者〔血中尿酸値の上昇が報告されている.〕
- アレルギー素因のある患者
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 中等度の肝機能障害患者〔Cmax及びAUCが低下することが報告されている.(「薬物動態」の項参照)〕
- ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)あるいはリバビリンにおいて慎重投与とされている患者
重大な副作用
- 本剤とペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)及びリバビリンの併用で認められた重大な副作用は以下のとおりである.
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)(頻度不明),皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(1%未満),多形紅斑(1%未満)
- 中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,多形紅斑があらわれることがあるので,観察を十分に行い,発熱,水疱,表皮剥離,粘膜のびらん・潰瘍,眼病変等があらわれた場合には,投与を中止し,適切な処置を行うこと.
薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)(1%未満)
- 初期症状として発疹,発熱がみられ,更に肝機能障害,リンパ節腫脹,白血球増加,好酸球増多,異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがあるので,観察を十分に行い,このような症状があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.なお,ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く,投与中止後も発疹,発熱,肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること.
急性腎不全(頻度不明)
- 急性腎不全等の重篤な腎機能障害があらわれることがあるので,定期的に腎機能検査を行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.(「重要な基本的注意」の項参照)
貧血(1%〜5%未満),ヘモグロビン減少(頻度不明)
- 定期的に血液検査を行うなど観察を十分に行い,異常の程度が著しい場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
敗血症(1%未満)
- 易感染性となり,感染症及び感染症の増悪を誘発し敗血症に至ることがあるので,患者の全身状態を十分に観察し,異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
血液障害(汎血球減少(1%未満),無顆粒球症,好中球減少,血小板減少,白血球減少(頻度不明))
- 高度な血球減少が報告されているので,定期的に臨床検査(血液検査等)を行うなど,患者の状態を十分に観察すること.異常の程度が著しい場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
肺塞栓症,血栓塞栓症(1%未満)
- 肺塞栓症が報告されているので,観察を十分に行い,息切れ,胸痛,四肢の疼痛,浮腫等が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと.
失神,せん妄(1%未満),意識消失(頻度不明)
- 観察を十分に行い,異常があらわれた場合には,本剤による治療継続の可否について検討すること.症状の激しい場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
躁状態(1%未満),抑うつ(頻度不明)
- 観察を十分に行い,不眠,不安,焦燥,易刺激性等があらわれた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.
呼吸困難(頻度不明)
- 観察を十分に行い,異常の程度が著しい場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.
網膜症(頻度不明)
- 網膜症があらわれることがあるので,網膜出血や糖尿病網膜症の増悪に注意し,定期的に眼底検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.また,視力低下,視野中の暗点が出現した場合は速やかに医師の診察を受けるよう患者を指導すること.
自己免疫現象(頻度不明)
- 自己免疫現象によると思われる症状・徴候(甲状腺機能異常,甲状腺炎,溶血性貧血,関節リウマチ等)があらわれることがあるので,定期的に検査を行うなど観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと.
白内障(1%未満)
- 白内障があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常があらわれた場合には本剤による治療継続の可否について検討すること.症状の程度が著しい場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.
糖尿病(頻度不明)
- 糖尿病が増悪又は発症することがあるので,定期的に検査(血糖値,尿糖等)を行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと.
重篤な肝機能障害(頻度不明)
- 重篤な肝機能障害があらわれることがあるので,定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い,黄疸や著しいトランスアミナーゼの上昇を伴う肝機能障害があらわれた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.(「重要な基本的注意」の項参照)
横紋筋融解症(頻度不明)
- 横紋筋融解症があらわれることがあるので,脱力感,筋肉痛,CK(CPK)上昇等に注意し,このような症状があらわれた場合には投与を中止するなど,適切な処置を行うこと.
薬効薬理
作用機序
- テラプレビルはHCV NS3-4Aセリンプロテアーゼの基質ペプチドから創製された,直鎖状のα-ケトアミド構造を有する阻害剤である.HCV NS3-4AプロテアーゼはHCV NSポリ蛋白質からHCV遺伝子複製複合体へのプロセシングを担っており,HCV複製に必須である.テラプレビルは,酵素学的には,可逆的で,かつ共有結合性の,強固で遅い結合様式を有する阻害剤である.阻害作用はHCV NS3-4Aセリンプロテアーゼに選択的であり,生体側の血液凝固・線溶系セリンプロテアーゼに影響を与える懸念はないと考えられた34).
抗ウイルス作用(in vitro)
- テラプレビルのHCVジェノタイプ1a NS3-4Aセリンプロテアーゼに対する見かけの酵素阻害定数は44nmol/Lであり,定常状態における阻害定数は7nmol/Lであった34).
HCVジェノタイプ1bレプリコンRNA複製に対するテラプレビルの阻害活性を測定したところ,50%阻害濃度及び90%阻害濃度はそれぞれ0.29及び0.75μmol/Lであり,50%細胞障害濃度及び90%細胞障害濃度はそれぞれ27及び57μmol/Lであった.テラプレビルは細胞内におけるHCVレプリコンRNA複製を阻害した.また,インターフェロン アルファとの併用効果は相加的であった.
抗ウイルス作用(in vivo)
- HCVジェノタイプ1b感染ヒト肝キメラマウスにおいて,テラプレビルの1日2回強制経口投与(100,300mg/kg,5日間)により,投与開始1日目からプラセボ比較で有意な血清中HCV RNA量の減少を認め,その低下作用は1〜4日目で100mg/kgより300mg/kgの方が有意に強かった35).
薬剤耐性
- HCVジェノタイプ1型を対象としたテラプレビルの臨床試験において,HCV NS3プロテアーゼ領域のアミノ酸置換によるテラプレビル耐性HCVの出現が観察されている.テラプレビルに対する耐性獲得に必要なアミノ酸置換部位として,NS3プロテアーゼ領域の36番目のバリン(V36),54番目のスレオニン(T54),155番目のアルギニン(R155),及び156番目のアラニン(A156)が同定されている.HCVジェノタイプ1bではA156がスレオニン,バリン,フェニルアラニン,又はチロシンに変異すると,酵素系におけるテラプレビルの50%阻害濃度は100倍以上となり,V36がアラニンに,T54がアラニンに,又はA156がセリンに変異すると,テラプレビルの50%阻害濃度は7.83〜34.2倍となった.
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- (1S,3aR,6aS)-2-((2S)-2-{(2S)-2-Cyclohexyl-2-[(pyrazin-2-ylcarbonyl)amino]acetylamino}-3,3-dimethylbutanoyl)-N-[(3S)-1-cyclopropylamino-1,2-dioxohexan-3-yl]octa-hydrocyclopenta[c]pyrrole-1-carboxamide
分子式
分子量
性状
- 白色から微黄白色の粉末で,ジクロロメタンに溶けやすく,メタノールにやや溶けやすく,アセトンに溶けにくく,1%ラウリル硫酸ナトリウム液,ポリエチレングリコール400又はプロピレングリコールに極めて溶けにくく,水にほとんど溶けない.
融点
分配係数(Log P)
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- simeprevir
- 商
- ソブリアード
- 関
- 抗ウイルス薬、テラプレビル(テラビック)(皮膚障害多)、C型肝炎
- C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬で機序はプロテアーゼ阻害による。NS3/NS4Aプロテアーゼ阻害薬に分類される。
[★]
- 英
- telaprevir
- 商
- テラビック Telavic
- 関
- C型肝炎。抗ウイルス剤
参考
- http://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/2011/pdf/MTPC110926_TLV.pdf