グレーブス病

出典: meddic

Graves' disease, Graves disease
バセドー病 バセドウ病 (国試)Basedow病 Basedow disease Basedow's diseaseグレーヴス病 Graves病、exophthalmic goitre、中毒性びまん性甲状腺腫 toxic diffuse goiterパリー病 Parry disease
morbus Basedowii

概念

病因

  • 自己抗体の出現
  • 甲状腺刺激免疫グロブリン thyroid stimulating immunoglobulin
  • 甲状腺増殖刺激免疫グロブリン thyroid re-growth-stimulating immunoglobulin (TGI)
  • TSH結合阻害免疫グロブリン TSH-binding inhibitor immunoglobulin (TBIIs)
自己抗体であるTSH受容体抗体の産生 → 甲状腺濾胞上皮細胞のTSH受容体に結合して活性化 → 甲状腺ホルモン分泌↑
  • 抗TSH受容体抗体は95-98%の症例で出現する。

疫学

病変形成&病理

  • 自己抗体により、濾胞のホルモン産生が刺激され、甲状腺は瀰漫性に腫大(正常の数倍から200gまで)。

症状

メルゼブルク三徴 Merseburg triad(Merseburgの三主徴)

  • 1. 甲状腺中毒症状
頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等
心臓肥大、リンパ組織過形成、真皮の肥厚
  • 2. びまん性甲状腺腫大(やわらか、血管雑音)
  • 3. 眼球突出または特有の眼症状


ハシトキシコーシス Hashitoxicosis

  • 未治療or適切な治療が行なわれていなかった状態、感染、外傷などの誘因が加わった時に機能亢進症が急速に増悪する状態。頻脈、ショック。

合併症


検査

  • 1. FT4、FT3のいずれか一方または両方高値
  • 2. TSH低値
  • 3. TSH受容体抗体陽性、または甲状腺刺激抗体陽性
  • 4. 放射線ヨード甲状腺摂取率高値 ← 甲状腺ホルモンの生合成が亢進

エコー

  • カラードプラ:全体的に著明な血流増加

診断

治療

抗甲状腺薬

の二種類である。薬効の高さや作用持続時間の長さの利点からMMIを第一選択とするが、胎盤移行や乳汁移行、副作用の出現頻度を考慮しPTUを用いることもある。治療中止の時期は甲状腺機能の正常化はもちろんのこと、抗TSH受容体抗体が陰性であることも必要である。

  • 治療期間:長い。1-2年維持量でコントロールし、TSH受容体抗体が陰性化したら減量し、さらに6ヶ月したら休薬(YN.D-31)

治療の中止

4点がそろえば中止。中止後、10-25%が再発する。
  • 1. メルカゾール1錠/日-1錠/隔日で甲状腺機能が正常 (TSH, FT4の両方が正常)
  • 2. 投薬継続期間が2年以上
  • 3. 甲状腺腫が小さくなった
  • 4. TSH受容体抗体が陰性

βブロッカー

  • 脈拍、動悸、振戦を軽減 ← 甲状腺ホルモンの「心筋細胞のカテコールアミン受容体を増加させる作用」に対して

放射性ヨード療法

  • 131Iのβ線により甲状腺組織を破壊
  • 効果は2-3週後に出現し、最大効果は6-12週後。

外科的治療法

  • 甲状腺亜全摘術

比較

  放射性ヨード療法
131療法
外科的治療法 抗甲状腺薬
長所 治療法が簡単   どの年代の患者でも可能(妊娠・妊娠中も可能)
成人合併例でも治療可能   通院での治療可能
比較的短期間で寛解 短期間に治癒  
永続寛解率が高い 高い寛解率  
侵襲が少ない   不可逆的な甲状腺機能低下は稀
短所 特別な施設が必要 手術侵襲 副作用(無顆粒球症・肝障害)
永続的甲状腺機能低下症が年ごとに増加 永続的甲状腺機能低下症  
妊娠、授乳期では禁忌 瘢痕 治療期間が長い
  術後合併症(反回神経麻痺、テタニー) 永続寛解率が低い
  術後再発  
回避・禁忌 30歳以下は避ける    
妊娠予定、妊娠中、授乳中は禁忌    
適応 欧米の第一選択   日本の第一選択
老人で早期治療を望む場合 早期治癒を望む場合(社会的・妊娠希望) 小児、妊婦
抗甲状腺薬で副作用の例 抗甲状腺薬で副作用の例 外科的療法、放射性ヨード療法の明らかな適応外
抗甲状腺薬で永続治癒の可能性低 抗甲状腺薬で永続治癒の可能性低 FT4軽度上昇例
服薬・治療コンプライアンス低 服薬・治療コンプライアンス低  
手術適応だが合併症、患者の意志により回避される場合 通院が困難  
手術後再発例 甲状腺腫が大 甲状腺腫が小

病理

  • 組織像
  • 濾胞上皮の著明な過形成、上皮細胞の丈が増して円柱上となる、濾胞上皮が乳頭状に濾胞腔に突出する、間質の軽度の線維化、リンパ球集簇、リンパ濾胞、腫大した上皮細胞は濾胞中央部のコロイドを活発に吸収するため、コロイドの辺縁部に空泡が見える。



グレーブス病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎の比較

YN.D-40改変
  破壊性甲状腺炎 グレーブス病 備考
無痛性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎
病態 橋本病
(慢性甲状腺炎)の
経過中に濾胞の
崩壊を示す
甲状腺の炎症による
濾胞破壊
TSHRの過剰刺激
炎症 mild severe [-]  
末梢fT3 甲状腺機能亢進もしくは濾胞の破壊で上昇
123I uptake 健全な甲状腺濾胞が存在し、甲状腺ホルモン合成能が高い
血清TSH fT3上昇のため
血清サイログロブリン 甲状腺機能亢進もしくは濾胞の破壊で上昇
TSH受容体抗体 [-] [-] [+]  
抗TPO抗体 [+] [-]/トキニ[+] [+]  
抗サイログロブリン抗体 [+] [-]/トキニ[+] [+]  

参考

  • 1. D.産科疾患の診断・治療・管理 8.合併症妊娠の管理と治療 - 日産婦誌60巻3 号
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6003-041.pdf





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和文文献

  • グレーブス病に対する抗甲状腺剤, ^<131>I治療, 甲状腺亜全摘術の費用効果分析
  • 矢野 文月,渡邊 定弘,林 克己,喜多 保,山本 真由,小須田 茂,田中 祐司
  • Radioisotopes 56(2), 65-76, 2007-02-15
  • NAID 10018547385
  • グレーブス病に対する抗甲状腺剤,131I治療,甲状腺亜全摘術の費用効果分析
  • 矢野 文月,渡邊 定弘,林 克己 [他]
  • Radioisotopes 56(2), 65-76, 2007-02
  • NAID 40015332444
  • 深部静脈血栓症を合併したグレーブス病の一例
  • 伊藤 朝子,桑田 雅雄,川口 美佐男 [他]
  • 医療 60(10), 648-651, 2006-10
  • NAID 40015147020
  • 9.発症年齢はグレーブス病における放射線治療の予後と関連する(学位論文抄録,第480回広島大学医学集談会)
  • 山下 裕代
  • 広島大学医学雑誌 52(1/2/3), 40-41, 2004-06-28
  • NAID 110004684056

関連リンク

バセドウ病またはバセドー病(-びょう、独:Basedow-Krankheit)とは、甲状腺自己抗体 によって甲状腺が瀰漫(びまん)性に腫大する自己免疫疾患(V型アレルギー)。英語圏 ではグレーブス病(グレーブスびょう、英:Graves' disease)と呼ばれる。
バセドウ病(別名:グレーブス病). どんな病気? 甲状腺というホルモン産生組織が、 必要以上にホルモン(甲状腺ホルモン)を作ってしまい、そのために動悸や手のふるえ など様々な症状(後述)を起こしてしまう病気です。 また、甲状腺自体も大きくなってき ます。
グレーブス病は、原因不明の病気ですが、自己免疫によるものとされています。自己 免疫とは、感染などに体する身体の防御反応が、自分自身の身体の組織を攻撃する ことを意味します。グレーブス病の場合、身体が甲状腺ホルモンを過剰に分泌する抗体 を作る ...

関連画像

バセドウ病は青年・壮年に多い バセドウ病 グレーブス 病 は バセドウ病(Graves病)|日本 かもしれません。グレーブス  (グレーブス病)とは米国や英国では別の医師の名前 バセドー病 ( その他の病気


★リンクテーブル★
先読み中毒性びまん性甲状腺腫」「パリー病
国試過去問101A048
リンク元甲状腺機能亢進症」「甲状腺」「甲状腺ホルモン」「亜急性甲状腺炎」「100Cases 55
関連記事」「グレー

中毒性びまん性甲状腺腫」

  [★]

toxic diffuse goiter
バセドウ病


パリー病」

  [★]

Parry disease
バセドウ病


101A048」

  [★]

  • 25歳の女性。動悸と手の震えとを主訴に来院した。2か月前から疲れやすくなり、動悸を感じるようになった。食欲は旺盛であるが体重は変化していない。汗が多く、イライラするようにもなった。10日前から安静時の手の震えを感じる。意識は清明。身長158cm、体重50kg。体温37.2℃。脈拍112/分、整。血圧156/42mmHg。眼裂は大きく、上眼瞼縁と角膜との間に強膜が認められる。う歯と歯槽膿漏とを認める。びまん性甲状腺腫を認める。血清生化学所見:総コレステロール100mg/dl、AST30IU/l、ALT22IU/l、ALP380IU/l(基準260以下)、γ-GTP 42IU/l(基準8~50)、TSH 0.01μU/ml以下(基準0.2~4.0)、FT3 12pg/ml(基準2.5~4.5)、FT4 7.6ng/dl(基準0.8~2.2)。
  • 治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
[正答]


※国試ナビ4※ 101A047]←[国試_101]→[101A049

甲状腺機能亢進症」

  [★]

hyperthyroidism
同?
甲状腺中毒症 thyrotoxicosis
甲状腺甲状腺ホルモン甲状腺腫甲状腺機能低下症

定義

  • 甲状腺においてホルモンの合成と分泌が増加し、そのために甲状腺ホルモン過剰の症状が出現している病態

分類

  • グレーブス病 :びまん性 :fT3↑、fT4↑、TSH↓
  • 甲状腺機能性結節 toxic multinodular goitar
  • 甲状腺ホルモン産生癌
  • 甲状腺外
  • TSH産生下垂体腫瘍 :fT3↑、fT4↑、TSH↑
  • 下垂体型甲状腺ホルモン不応症 :fT3↑、fT4↑、TSH↑
  • 胞状奇胎、絨毛腫瘍
  • ヒト絨毛性ゴナドトロピンhCGがTSH様甲状腺刺激物質として作用するため、甲状腺でのホルモン分泌、合成が亢進する。血中甲状腺ホルモンは高値となるが、TSHは低値を示す。hCGは妊娠初期にも分泌され、一過性の甲状腺機能亢進状態になることもある。
  • 卵巣甲状腺腫
  • 卵巣の奇形腫(teratoma)で、腫瘍内に過機能性甲状腺腫が存在し、甲状腺中毒症状を呈す。
  • 外因性甲状腺ホルモン中毒症
  • 甲状腺ホルモンの過剰投与、痩せ薬としての服用などにより、甲状腺中毒症状が出現する。血中TSH値は抑制され、サイログロブリンは低値を示すことが特徴的。

  • 甲状腺破壊による甲状腺中毒症

疫学

参考1
  • 甲状腺機能亢進によるもの
  • 甲状腺機能亢進によらないもの

症状

YN.D-30

  • 全身症状:全身倦怠感、易疲労感、体重減少、体重増加もあり、微熱
  • 消化器症状:食欲亢進、排便回数の増加、軟便、下痢
  • 循環器症状:動悸、息切れ、頻脈、心房細動、高血圧(収縮期血圧上昇、拡張期血圧低下、脈圧増大)
  • 神経筋症状:手指振戦、下肢近位筋の筋力低下、筋萎縮
  • 皮膚症状:発汗過多、皮膚湿潤、色素沈着、脱毛、皮膚掻痒感、手掌紅斑、爪甲剥離(Plummer爪)
  • 精神症状:神経過敏、易刺激性、不眠、多動
  • 性腺症状:月経異常(月経過少、無月経)

甲状腺機能亢進症と褐色細胞腫

  • 血圧:収縮期血圧↑/収縮期血圧↓ ⇔ 収縮期血圧↑/収縮期血圧↑
  • 消化器症状:下痢 ⇔ 便秘

眼症状

  • 甲状腺眼症においては、球後軟部組織の炎症性病変すなわち眼窩症が眼症発症の背景にある。
  • したがって、球後脂肪織炎による眼球突出と、外眼筋炎を伴う眼球突出がある。
  • Basedow病発症のピークを示す20歳前後の世代では脂肪織炎のみによる眼球突出のみによる眼球突出が高頻度に見られるのに対して、もう一つの山である40歳代の中高年層では外眼筋肥大を伴う例が多い。
  • 薬物治療:副腎皮質ステロイドホルモンのパルス療法あるいは漸減法を行う。
  • 特徴的所見:眼瞼後退、Graefe徴候(下方視の際に上眼瞼の下方への動きが遅れる)、Kocher徴候(目が凝視または驚いたように見える状態)

合併症

検査

  • 血液生化学(IMD)
  • Cho:低値
  • ALP: 高値
  • ChE 高値

など

  • Ca:高値  → 甲状腺ホルモンによる骨吸収・骨形成亢進のため? 骨粗鬆症が出現する症例はない、あるいは少ないのか?
  • P: 高値
  • 食後:高血糖
  • AST:上昇
  • ALT:上昇

治療

ICU.762
  • β遮断薬
  • 抗甲状腺薬:メチマゾール(MMI)(PTUより早く血漿fT4濃度を低減させるし、顆粒球減少の頻度がより低い)、プロピルチオウラシル(PTU)
  • ヨウ素剤:重症の場合は抗甲状腺薬に加えて使用する。ヨウ素は甲状腺からのT4放出を抑制する。

参考

  • 1. 甲状腺疾患と 抗TSHレセプター抗体
http://www.thyroid.jp/pdf/dr_TRAb.pdf

uptodate

  • 1. [charged] 成人における甲状腺機能亢進症の臨床症状の概要 - uptodate [1]
  • 2. [charged] 潜在性甲状腺機能亢進症 - uptodate [2]
  • 3. [charged] 甲状腺機能亢進症の原因となる疾患 - uptodate [3]
  • 4. [charged] 小児期および思春期における甲状腺機能亢進症の臨床症状および診断 - uptodate [4]
  • 5. [charged] 甲状腺機能亢進症およびバセドウ病の神経学的症状 - uptodate [5]
  • 6. [charged] 甲状腺機能亢進症の心血管系への影響 - uptodate [6]
  • 7. [charged] 甲状腺機能亢進症の診断 - uptodate [7]
  • 8. [charged] バセドウ病(グレーブス甲状腺機能亢進症)の治療 - uptodate [8]




甲状腺」

  [★]

thyroid gland
glandula thyroidea
甲状腺ホルモン副甲状腺(上皮小体)
喉頭
  • 図:N.24(全面の筋),25(全面の筋),70(血管),71(血管)

解剖学

部位

性状

  • 成人の正常重量15-25g、女性の方が少し重い。妊娠中や性周期で重量が変化する。分泌期初期(early secretary phase排卵後2-5日目)には50%も重量が増加する。

大きさ

よくわかる甲状腺疾患のすべて 永井書店 (2004/01) ISBN 481591673X
単位はmm?
  n 峡部 横断厚 横径 縦経(右) 縦経(左)
男性 34 1.8±0.6 18±3.0 48±4.8 49±3.7 49±3.8
女性 16 1.3±0.8 16±2.2 46±3.6 45±6.0 46±3.0

血管

動脈

静脈

神経

声帯を支配する神経が甲状腺の裏側を通過 N.71

画像

  • 超音波検査
  • (高エコー)筋肉>甲状腺>気道(低エコー)  ← 要確認
  • びまん性腫大、等エコー~低エコー:グレーブス病
  • 低エコー・高エコーの混在:甲状腺癌
  • 不均一な粗い低エコー:橋本病
  • 炎症部位は低エコーとなる:亜急性甲状腺炎

組織学

濾胞上皮細胞 follicular cell

  • 甲状腺ホルモンを産生、分泌。

C細胞 C cell

  • 成人甲状腺全体の0.1%を占める
  • カルシトニン産生細胞、HEでは判別困難。
  • 銀染色(Glimerius)、免疫組織化学(chromogranin A、synaprophysin, carcitoninなど)により明らかとなる。
  • 電顕では、electron dense な顆粒を有する(神経内分泌顆粒)。

機能

発生

神経支配

  • 上頚部交感神経節、中頚部交感神経節。交感神経神経線維は濾胞近傍に終末し、分泌に影響を及ぼす。

臨床関連

非腫瘍性疾患

  • 1. 遺伝疾患、発達傷害
  • mynocyclineによるblack thyroid:消耗性色素リポフスチンと他の物質(lipid-drug complexによりlysosomeに色素が沈着する)。
  • 4. 感染
  • 5. 自己免疫性甲状腺疾患

腫瘍性疾患 (甲状腺腫瘍)

  • 1. 良性腫瘍
  • a) 濾胞腺腫 follicular adenoma
  • 2. 悪性腫瘍 悪性腫瘍中の頻度)
  • a) 乳頭癌 papillary carcinoma 88%
  • b) 濾胞癌 follicular carcinoma 4.2% 甲状腺濾胞癌 thyroid follicular carcinoma
  • c) 低分化癌 poorly differentiated carcinoma
  • d) 未分化癌 undifferentiated carcinoma 1.5%
  • e) 髄様癌(C細胞癌) medullary carcinoma, C-cell carcinoma 1.4%
  • f) 悪性リンパ腫 malignant lymphoma 3.5%


Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.

分類






甲状腺ホルモン」

  [★]

thyroid hormone, thyroid hormones
甲状腺サイログロブリンカルシトニン甲状腺ホルモン製剤
胎児の発育・新生児の生理と適応


  • SP.915-

種類

分類

性状

  • 疎水性アミノ酸

産生組織

標的組織

受容体

  • 核内甲状腺受容体(甲状腺ホルモン受容体ファミリー)
ステロイドレセプタースーパーファミリーに属する → 核内受容体スーパーファミリー

作用

代謝系別

  • 1. 熱産生
  • 脳、脾臓、睾丸をのぞくすべての組織で酸素消費を高める ← 甲状腺クリーゼによる発熱の原因
  • 2. 自律神経系
  • カテコラミンの作用を増強する
  • 心筋細胞のカテコールアミン受容体を増加 ←証明されていない?
  • 3. 内分泌
→甲状腺ホルモンの投与によりコルチゾールが減少し副腎クリーゼを誘発
  • 4. 呼吸器系
  • 5. 造血器系
  • エリスロポエチン産生促進 → 赤血球増加
  • ヘモグロビンからの酸素解離を促進 → 末梢組織での酸素利用↑
  • 6. 骨格筋系作用
  • 骨代謝回転を高め、骨形成・骨吸収を促進 (閉経後女性で甲状腺ホルモン多 → 骨塩量減少 → 骨粗鬆症
  • グレーブス病では筋肉蛋白の代謝亢進、筋肉量の減少、筋力低下、筋脱力、四肢麻痺
  • 7. 糖代謝
  • 糖代謝の亢進
  • グレーブス病では耐糖能異常を引き起こしうる
  • 8. 脂質代謝
  • 肝臓におけるコレステロール産生を促進
  • 肝臓のトリグリセリドリパーゼ活性を亢進し、コレステロールの代謝を促進
コレステロールが減少 ← 総じて分解系の法が作用が強い
  • 9. その他

薬理学的作用 (SPC.321)

  • 成長と発育
全ての生体の活動に関わる-(不足)→成長停止、身体的・精神的発育停止
  • 熱産生と体温調整
組織の酸素消費を高め、基礎代謝を亢進させる。Na+,K+-ATApaseの活性刺激や、核内クロマチンに作用してDNA転写を促進する作用による
  • 代謝亢進作用
上記の通り
  • TSH分泌抑制
ネガティブフィードバック

分泌の調節

  • 分泌の制御系
視床下部--(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)-→下垂体前葉--(甲状腺刺激ホルモン)-→甲状腺濾胞細胞-→T3, T4-→T3, T4下垂体前葉・視床下部に作用し甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制

分子機構

臨床関連

過多

  • グレーブス病

欠乏

  • 甲状腺機能検査値の異常を来す病態。ほとんどの場合TSHは正常
  • free T3↓、rT3↑(重症ではT4↓、TSH
  • 低栄養、外傷、感染症、手術、腎不全、肝不全、心不全、悪性腫瘍
  • エネルギー消費を減らすための適応かもしれない
以上2007後期生理学授業プリント内分泌(3)

生合成 (SP.916)

亜急性甲状腺炎」

  [★]

subacute thyroiditis
ドゥ・ケルヴァン甲状腺炎
甲状腺

概念

  • 有痛性の甲状腺腫脹がみられ、ときに発熱が認められる甲状腺炎である。病気によって甲状腺中毒症や甲状腺機能低下症を呈する。全身倦怠感や感染による上気道炎が、数週間くらい甲状腺にまつわる特徴(thyroid-related features)に先行する。(HIM.2238)
  • 全身性ウイルス性感染(mumps、coxsackie, adenoviruses, measles, Influenza, echoviruses)に伴うが、患者からウイルスを同定する試みはしばしば不成功に終わり、病原体同定することは本疾患の管理に影響を及ぼさない。(HIM.2238)
  • 症状は咽頭炎に似ており、しばしば見落とされる。(HIM.2238)

疫学

  • 30-50歳 (HIM.2238)
  • 男女=1:3 (HIM.2238)

病期~

  • 3 phase:
  • 1) destructive phase:濾胞破壊によるhyperthyroid。甲状腺中毒症(T3,T4高値。TSH低値)。123I uptakeは低値か検出下限以下。
  • 2) phase of hypothyroidism:数週間の経過で甲状腺機能低下症となる。unbound T4低値、軽度TSH高値。123I uptakeは正常化やや高値
  • 3) recovery phase:正常化

病理

  • 斑状に炎症細胞の浸潤が認められ、甲状腺濾胞のdisruptionを伴う。甲状腺濾胞には多核巨細胞が認められるものがある。濾胞の変化は線維化を伴う肉芽腫に進展する。発症から数ヶ月で甲状腺は通常正常に回復する。
  • マクロ:非対称性腫大。
  • 組織像:多核巨細胞、リンパ球、形質細胞、組織球、急性炎症を示す箇所、線維化巣、肉芽腫形成。

症状

  • 局所の圧痛と自然痛、発熱、全身倦怠感、数カ月で回復。

身体所見

  • 全身症状:(ときに)発熱
  • 甲状腺:疼痛、腫大

検査

  • 甲状腺機能:病期による。
  • 超音波検査:炎症部位・腫瘤部に一致して低エコーとなる。


グレーブス病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎の比較

YN.D-40改変
  破壊性甲状腺炎 グレーブス病 備考
無痛性甲状腺炎 亜急性甲状腺炎
病態 橋本病
(慢性甲状腺炎)の
経過中に濾胞の
崩壊を示す
甲状腺の炎症による
濾胞破壊
TSHRの過剰刺激
炎症 mild severe [-]  
末梢fT3 甲状腺機能亢進もしくは濾胞の破壊で上昇
123I uptake 健全な甲状腺濾胞が存在し、甲状腺ホルモン合成能が高い
血清TSH fT3上昇のため
血清サイログロブリン 甲状腺機能亢進もしくは濾胞の破壊で上昇
TSH受容体抗体 [-] [-] [+]  
抗TPO抗体 [+] [-]/トキニ[+] [+]  
抗サイログロブリン抗体 [+] [-]/トキニ[+] [+]  

参考

  • 1. [charged] 亜急性甲状腺炎 - uptodate [9]

国試


100Cases 55」

  [★]

ヒントタイトルに騙されるな!
45歳 女性
主訴肺炎
現病歴過去6ヶ月の間、咳、発熱、および膿性痰をともなう3回のエピソードがあった。このうち1回のエピソードでは、右側の胸膜炎性胸痛があった。一連エピソードgeneral practitioner外来治療していた。これらのエピソードに加え、5年間嚥下困難既往がある。嚥下困難最初中等度であったが、だんだんと増悪している。食べ物が胸骨後部の下方に刺さる様だと言っている。どういう固形物であってもこのような症状がでる。体重過去2ヶ月で5kg減少した。嚥下困難は食事中に改善することがあるようだ。最近、形のはっきりとした食物嘔吐する問題を抱えている。
 3年前外来施行した上部消化管内視鏡では問題は認められなかった。器質的問題がないことが保証されたが、症状はひどくなってきた。排尿障害はない。便秘傾向があるが、最近少し悪くなってきた。
既往歴:無し
家族歴:無し
社会歴:10年前まで4年間アメリカ合衆国の北西の沿岸部にすんでいた。店員として働いている。
嗜好歴:喫煙なし。飲酒は週に5units以下。
服用薬:
身体所見 examination
 やせて見える。右の肺底部crackleを認める。心血管系消化器系、およびそのほかの臓器系に異常を認めない。
検査所見 investigations
 胸部単純X線写真(供覧)
問題
 診断名は?
 どうやって診断をつけるの?
答え
 噴門部アカラシア
嚥下障害の鑑別疾患
DIF.125
嚥下というのは喉頭咽頭食道機能で、1)機械的閉塞(ex. 腫瘍)、2)生理的閉塞(ex. 偽球麻痺)により機能障害される。
機械的閉塞 喉頭咽頭、あるいは食道自体の内的な疾患と周辺臓器の外的な疾患を考える。VINDICATEが有効。
V vascular 大動脈瘤、心拡大
I inflammatory 喉頭炎扁桃炎食道炎縦隔炎。 infection シャーガス病
N neoplasm 食道と気管の癌腫(carcinoma)、縦隔の皮様嚢腫
D degenerative and deficiency Plummer-Vinson syndrome(鉄欠乏性貧血)
I intoxication アルカリ狭窄(lye stricture)
C congenital and acquired 食道閉鎖症(esophageal atresia)、食道憩室
A autoimmune 強皮症
T trauma 食道破裂
E endocrine 甲状腺腫大(endemic goiter(風土病としての甲状腺腫)、グレーブス病)
生理的閉塞 神経から筋肉にいたるまでの障害であり、この経路を想像しながら鑑別を上げていく。
1. end organ 緊張性ジストロフィー、皮膚筋炎アカラシアびまん性食道痙攣
2. 神経筋接合部 重症筋無力症
3. 下位運動ニューロン 急性灰白髄炎ジフテリア性神経炎、脳幹における感染症もしくは腫瘍
4. 上位運動ニューロン 偽性球麻痺(脳梗塞脳塞栓脳出血多発性硬化症認知症、びまん性脳動脈硬化症)、パーキンソン病や他の錐体外路症状を呈する疾患


病」

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diseasesickness
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