出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/24 10:12:45」(JST)
カフェイン中毒(カフェインちゅうどく、 英語: caffeine addiction または caffeine intoxication)はカフェイン(C8H10N4O2)によって引き起こされる中毒。カフェインの引き起こす症状は、カフェイン自体が持つ神経毒性によって引き起こされるものである。 長期に亘りカフェインを摂取し続けることによって起きる慢性中毒と、一度に多量のカフェインを摂取したために起きる急性中毒がある。うち急性のものはDSM-IV-TRではcaffeine intoxicationとして305.90に分類される[1]。
コーヒー、コーラ、栄養ドリンク、緑茶、紅茶、ココアなどカフェインを含む食品の常用によることが多い。また、カフェイン錠剤などの過剰摂取によっても急性中毒を起こす。
一般的な成人で1時間以内に 6.5 mg/kg 以上のカフェインを摂取した場合は約半数が、3時間以内に 17 mg/kg 以上のカフェインを摂取した場合は 100 % の確率で急性症状を発症する。後者の場合、重症になる確率が高い。ただしこの症状は一時的に起きるものであり、麻薬や覚醒剤のように不可逆性ではない(後遺症をきたさない)。カフェインが体内から分解・代謝され、効力を失えば症状は改善する。ただし、神経圧迫による視覚異常や聴覚異常は確認されている。カフェインを分解する酵素(CYP1A2やモノアミン酸化酵素)を阻害する薬物などと併用した場合、カフェインの代謝が遅れ、症状が長引いたり悪化することがある。また、200 mg/kg 以上摂取した場合は最悪、死に至る可能性がある。
慢性中毒は常習的にカフェイン飲料やカフェイン製剤を摂取し続けた場合に起こる。250mg/day以上の摂取では、焦燥感、神経過敏、興奮、睡眠障害、顔面紅潮、悪心、頻尿、頻脈などの症状が現れることがある。100mg/day程度の摂取でも依存が起こることがある。摂取を中断した場合の離脱症状としては頭痛が一般的であり、12~48時間以内に出現し、2~4日以内に消退する。他の症状としては眠気、集中力の減退、疲労感、不安・抑うつ、運動遂行能力の低下、発汗、嘔気、カフェイン摂取の渇望などがある[2] 。
まず、重篤な状態に陥るのは過量摂取などによって急性中毒を起こした場合である。カフェインには特異的な解毒剤や拮抗薬、血清がないため、対症療法を行って時間と共に回復を待つしかない。重症に至らず、中毒者の心身から不快感が消失したならば経過観察と休養で良い。多くの場合、精神的・肉体的に過労状態となっていることが多いため、栄養を取って心身を休ませることが第一である。重症で緊急を要する場合は救急病院に搬送後、集中治療室又は冠疾患集中治療室にて全身管理を行い、各致死的症状に対応しなければならない。胃洗浄が有効な場合もある。危機的中毒量を摂取している場合、全身痙攣や重度の不整脈、精神運動の過剰亢進で錯乱や過呼吸を起こしていることが多い。まず横隔膜の痙攣による呼吸不全を防ぐため、筋弛緩剤や抗けいれん薬(バルビツレート)の投与と酸素吸入で急速対応する。また、重い不整脈に対しては心拍をモニターし、心室細動に注意を払う。また、各精神症状を緩和する。中毒患者にとってこの症状が最も不快であることが多い。興奮、不安などの症状にはジアゼパム静注などで緩和すると良い。それでも十分な効果を得られない場合は、ベンゾジアゼピンなどの追加投薬などで対応する。この際、ドパミン拮抗型の鎮静剤(抗精神病薬)は使用しない。バイタルが正常に戻り、医師が大丈夫と判断した場合は対処療法は終了するが、入院して十分に体を休め、点滴静注で栄養補給や心身のバランスを整えたほうが良い。
慢性中毒者(依存者)に対しては、カフェイン飲料を断つのが一般的。アルコールや覚せい剤と違ってカフェイン飲料の中断は比較的容易に行える。禁断性の片頭痛に対しては対処薬で対応できるが通常短期間(数日)のうちに全て治まる。
カフェインはアデノシン受容体に拮抗するために覚醒作用を起こす。神経細胞へ直接刺激するのではなく、脳中枢の抑制回路を弱めることで覚醒作用を起こすため、覚醒剤と違って間接的である。心筋や骨格筋を刺激し、運動機能を亢進する働きがある。腎血管を拡張させ、尿細管での水分の再吸収を抑制するので利尿作用を起こす。また膀胱括約筋に取り付いてその作用を抑制しているアデノシンの働きを、カフェインが妨害するために頻尿になるという説もある。カフェインを摂取してから血中濃度が最高に達するまでは0.5〜2時間、血中消失半減期は4.5〜7時間である。
カフェインの半数致死量 (LD50) は一般に約200mg/kgと言われているが、個体差があり、年齢やカフェイン分解酵素(CYPやモノアミンオキシダーゼ)の活量や肝機能に違いがあるため、5g〜10gが致死量と考えてよい。中毒症状発現量と致死量の差が狭く、生物に対する毒性は強いとされるが、ごく普通に身近に存在し、様々な用途や場面で人体に摂取されている。これは一部の生物や哺乳類に対する毒性は極めて強いが、ヒトに対しての毒性は低いためである(選択毒性)。
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