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反響定位(はんきょうていい)とは、音の反響を受け止め、それによって周囲の状況を知ることである。エコロケーションあるいはエコーロケーション(echolocation)ともいう。
反響定位とは、動物が自分が発した音が何かにぶつかって返ってきたもの(反響)を受信し、その方向と遅れによってぶつかってきたものの位置を知ることである。各方向からの反響を受信すれば、周囲のものと自分の距離および位置関係を知ることができる[1]。したがって、音による感受法でありながら、音を聞くだけの受動的な聴覚よりも、むしろ視覚に近い役割を担っている。
光は伝達速度が速く、到達距離が長く、波長が短いので、素早く遠くから多量の情報を得るには適している。ただし、光が遠くまで届くのは空気中のことである。水中では、光は強く水に吸収されるので、100m先も見通せない。土中ではそもそも光は通らない。
夜や水中など、光が十分に利用できない条件下では、遠くの情報を得るのに音波が用いられる。音は水中では空中よりはるかに速く伝達する。空気中での音の伝達速度は340m/s程度だが、水中では1500m/s近くに達し、土中ではさらに速い。また、波長が短いほうが情報量は多いので、高い音ほど有用であり、人の可聴域以上の音、すなわち超音波が用いられることが多い。
人間が海洋で水深を測定するときも、音波が利用される。また、魚群探知機は、音波の反射によって魚の群れの位置を探す装置であり、その原理は反響定位そのものである。
最も有名なのは、哺乳類でありながら空を飛べるコウモリである。コウモリ類には大きく2つの群があり、昆虫食が中心の小型コウモリ類が反響定位を用いる。大型で果実食のオオコウモリ類は大きな目をもち、視覚に頼って生活する。
小型コウモリ類は目がごく小さく、耳は薄くて大きい。多くのものは、空を飛んでいる昆虫を捕獲して生活している。空中を高速で飛ぶものや、木の枝の間をひらひらと飛びながら虫を探すものもいて、いずれの場合も反響定位に頼って飛行する。実験的に室内に針金を張り巡らせ、その中を飛ばせると、針金にぶつからずに飛び回る。コウモリに目隠しをしても飛び方は変わらないが、耳をふさぐと飛べなくなる。
コウモリは口から間欠的に超音波の領域の音を発して、それによってまわりの木の枝や、虫の位置を知る。虫を捕らえる直前には、音を発する頻度が高くなる。コウモリの餌のひとつであるガの中には、コウモリの発する音を聴くための耳をもち、コウモリの反響定位音をとらえると、羽を閉じてストンと落下するなどの回避行動をとるものがある。
夜行性の鳥にも、反響定位を行うものがある。南アメリカの洞窟に暮らすアブラヨタカは、反響定位に可聴域の音を使っているので、洞窟内に入るとやかましくてたまらないという。ただし、この鳥は目もよく発達しており、夜に洞窟外に出て果実を食う。
アナツバメ類にも洞窟に栄巣するものがあり、反響定位を利用している。
水中では、一部のクジラ類が反響定位を行うことが知られている。ハクジラ類は頭部にメロンという脂肪組織のかたまりをもち、これが鼻腔で発した音波を屈折し収束させるレンズとして機能し、指向性の高い音波の発信にかかわるといわれる。音波の受信は、眼の後方にある耳孔ではなく下顎骨を用いて行い、ここから骨伝導で内耳に伝えられる。クリック音といわれる超音波を発し、これによって反響定位や、仲間との交信を行っている。一説によれば、1,000km離れた仲間ともやり取りできるともいわれる。
土中で生活するモグラなども聴覚が発達しているが、反響定位のような使い方はしないようである。
視覚障害者は、杖がコンクリートをたたく音や舌を鳴らした音などの反響で、周囲の状況、例えば横にブロック塀があるといったことがわかるという[2]。阪神・淡路大震災では、町中のブロック塀がことごとくくずれ、そのため、普段歩いていた道の反響が全く変わって、困惑した視覚障害者が多かったとのことである[要出典]。
米国には、視覚障害者に対する反響定位トレーニングを推進する団体がある[2]。
ウィキメディア・コモンズには、反響定位に関連するメディアがあります。 |
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