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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/29 13:56:20」(JST)
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ターン(Turn)はタンパク質の二次構造を形成する要素の1つである。
一般的な定義では、ターンとは2つの原子が7Å以内に近づき、それらの残基がαヘリックスやβシートなど通常の二次構造を取らなかった場合のことをいう。
目次
- 1 ターンのタイプ
- 2 ヘアピン構造と分岐ターン
- 3 タンパク質の折り畳みへの関与
- 4 参考文献
ターンのタイプ
ターンは、水素結合と二面角によっていくつかのグループに分けられる。
- β-ターンは最も良く見られるもので、3つ離れた残基同士で水素結合を形成している。
- -ターンは2つ離れた残基同士で水素結合を形成している。
- α-ターンは4つ離れた残基同士で水素結合を形成している。
- -ターンは5つ離れた残基同士で水素結合を形成している。
- -ループは内部に水素結合を持たない長いループの総称である。
厳密に言うと、ターンとはが7Å以内にあればよく、水素結合の有無は関係ないが、実際にはターンの種類はどの位置にある原子同士が水素結合を形成するかによって決まっている。
それぞれのタイプの中で、ターンはさらに二面角によって分類される。ターンは、その二面角の符号を入れ変えることによって逆ターン(鏡像ターン)になる。例えば-ターンは二面角(φ, ψ)の値が(75°, -65°)であるが、符号を入れ替えた(-75°, 65°)が逆ターンとなる。β-ターンだけでも少なくとも8つの形が確認されている。
ヘアピン構造と分岐ターン
ヘアピンとは、側鎖同士が相互作用して折り返す、ターンの特別の場合である。例えばβ-ヘアピンは逆平行βシートが2つの水素結合で繋がっている。しかしターンの場合はそれほど劇的に方向が変わることはなく、側鎖同士が相互作用することもない。このようなターンは分岐ターンと呼ばれる。
タンパク質の折り畳みへの関与
タンパク質の折り畳みへのターンの関与については2つの説が提唱されている。1つの説では、ターンは分子内相互作用を促進する決定的な役割を担っているとしている。この説は、いくつかのタンパク質のターンが特定の残基に対して決定的な影響を示すという突然変異の研究により支持されている。またX-プロリンの非天然型のペプチド結合がいくつかのタンパク質で折り畳みを完全に阻害することも分かっている。もう1つの説では、ターンはタンパク質の折り畳みに関してそれほど大きな役割は持たないとしている。この説は、多くのターンで、それほどアミノ酸配列の保存性が高くないという事実から支持されている。またX-プロリンの非天然型のペプチド結合は折り畳みの形そのものにはあまり影響を与えないことも分かっている。
参考文献
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- Lewis PN, Momany FA and Scheraga HA. (1973) "Chain Reversals in Proteins.", Biochim. Biophys. Acta, 303, 211-229.
- Toniolo C. (1980) "Intramolecularly Hydrogen-Bonded Peptide Conformations", CRC Crit. Rev. Biochem., 9, 1-44.
- Richardson JS. (1981) "The anatomy and taxonomy of protein structure", Adv. Protein Chem., 34, 167-339.
- Rose GD, Gierasch LM and Smith JA. (1985) "Turns in peptides and proteins", Adv. Protein Chem., 37, 1-109.
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- Rajashankar KR and Ramakumar S. (1996) "-Turns in proteins and peptides: Classification, conformation, occurrence, hydration and sequence", Protein Sci., 5, 932-946.
タンパク質の二次構造 |
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ヘリックス |
310ヘリックス - αヘリックス - ωヘリックス - πヘリックス - βヘリックス - ポリプロリンヘリックス - コラーゲンヘリックス
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平面構造 |
βシート - ターン - βヘアピン - βバルジ - αシート
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超二次構造 |
コイルドコイル - ヘリックスターンヘリックス - EFハンド
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←一次構造
三次構造→
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Japanese Journal
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- 応用糖質科学 : 日本応用糖質科学会誌 4(2), 167-172, 2014-05-20
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