出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/19 11:45:02」(JST)
食品衛生監視員(しょくひんえいせいかんしいん)とは、行政警察活動として、食品衛生法に規定された職務及び食品衛生に関する指導を行う技術系公務員。主に国の検疫所と地方自治体の保健所に所属し、食品の検査や食中毒の調査、食品製造業や飲食店の監視(英語:inspectionの訳語[1])、指導及び教育を行っている。通称「食監(しょっかん)」。
食品衛生法第30条に
第28条第1項に規定する当該職員の職権及び食品衛生に関する指導の職務を行わせるために、厚生労働大臣又は都道府県知事等は、その職員のうちから食品衛生監視員を命ずるものとする。
とあり、食品衛生監視員は次のいずれかの条件(任用資格)を満たす公務員の中から、厚生労働大臣または都道府県知事等により任命される。
任用資格は上記のとおりであるが、実際には獣医師、薬剤師の資格を持つ者が多数を占めており、医師など他の資格者は少ない。また、主要な役職である本庁の食品衛生主管課長級ポストも、獣医師の資格を持つ者が占めることが多い[要出典]。
日本国内の監督を行う食監は地方公務員であり、港湾において輸入食品の検疫を行う食監は国家公務員である。
食品衛生監視員になるには任用資格に加え、さらに公務員試験にも合格しなければならない。国家公務員の食品衛生監視員の採用試験の倍率は11.7倍(申込者数828人、合格者数71人)と狭き門となっている[2]。
食品衛生法第28条第1項に、
第28条 厚生労働大臣又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、当該官吏吏員に営業の場所、事務所、倉庫その他の場所に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装、営業の施設、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。
とあり、営業施設への立入調査、食品の収去検査などを行う。
検疫所の食品衛生監視員は、輸入食品の収去検査を行っている。
保健所の食品衛生監視員は、管内で製造、流通する食品の収去検査を行うとともに、
に係る業務を行っている。
この他に、卸売市場の検査所で衛生監視や検査を行ったり、厚生労働省や各都道府県・政令指定都市・中核市・保健所設置市・特別区の本庁で、食品衛生行政に関する業務を担当している食品衛生監視員もいる。
因みに、食品衛生法第28条第3項に
「第28条第1項に関する権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」
との規定があるため、食中毒が起きた時に「食品を使った毒殺及び未遂等」の疑いがある場合は、犯罪性の有無が確定するまで警察の捜査が優先され、保健所は調査することができない。
日本の食料自給率は約40%で、世界最大の食料輸入大国であるにもかかわらず、検疫を行う食品衛生監視員が不足している。国防を担う自衛隊は23万人を超える人員をもっていることと比較しても、輸入食品の安全性の脅威から日本国民を守っている食品衛生監視員はわずか399人(平成24年度)と非常に少なく、国の検査体制を支える人員が不足していると指摘されている[3]。
実際、輸入品が多すぎて輸入時の検査は1割しかできおらず、残りの90%は検査を受けずに輸入され、日本国内に流通してしまっている。今後、TPPに入れば輸入はさらに増えるため、検査体制を充実させないと食の安全を守れないと危惧されている[4]。
人員不足の原因のひとつは、全国規模の転勤である。検疫所は全国に13か所の本所の他、14か所の支所と83か所の出張所があり、配属先は北海道から沖縄まで日本全国に及ぶ。また、概ね約2年から3年ごとに異動があり[5]、転居(引越し)を伴う。 異動辞令は通常数週間前にしか出ないため、本人すら、自分の次の住居地となる都道府県が分からないことが多々ある。配偶者の勤務先や子の通学区域が頻繁に変わってしまうことから、家族の負担を考慮し、転職する者も多い[6]。
また、監視指導計画に基づく検査件数(ノルマ)が課せられており、業務内容は非常にハードである。平均して、1日に2,000~2,500件にも及ぶ届出書を審査[7]しなければならす、事務的な作業に追われる。審査結果を輸入者に説明するには、コミュニケーション能力が必要[8]と言われ、食品衛生に関する専門知識や技術は生かせる職場環境ではない。薬剤師等の本来の資格を生かした職へ転職する者が多い。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
関連記事 | 「監視」「食品衛生」「衛生」 |
.