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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』「2015/09/17 09:48:24」(JST)

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習慣性医薬品（しゅうかんせいいやくひん、habit-forming drugs^[1]）とは、依存性の強い医薬品として「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第50条第10号の規定に基づき習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品」（昭和36年厚生省告示第18号）で指定された医薬品である。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や、オピオイド系の鎮痛薬が多い。乱用が流行した未成年者への販売を禁じ、処方せんを必要とする措置をとったということである^[1]。同時に、日本の麻薬及び向精神薬取締法の向精神薬に指定されたものが多いが、その指定がなくとも同じように管理されることが望まれている医薬品である^[2]。

乱用の懸念のある薬物の規制に関する前後関係は以下のとおりである。

1946年1月22日、連合軍最高司令部からの日本政府に対する麻薬統制に関する指令を受け、麻薬取締規則を制定した^[3]。1948年に旧麻薬取締法が、1953年に後続の新麻薬取締法が制定され、1948年に大麻には繊維産業があることから別個に大麻取締法で規制し、1951年には戦後に社会問題化した覚醒剤についてこれも別個で覚醒剤取締法が制定される^[4]。

睡眠薬の乱用が国外で問題となり、1956年の世界保健機関による「第7回耽溺性薬物に関する専門委員会」が開催され、日本でも1957年のメプロバメートの発売以来問題となった睡眠薬の依存や乱用に対処するために、この習慣性医薬品に関する薬事法の改正が行われた^[5]。トランキライザーの類の薬物が、急速に使用が増加しており、バルビツール酸系に似た離脱症状があるため、バルビツール酸系と同様に処方薬とすべきということである^[6]。世界保健機関は報告書の同じページにて、薬物嗜癖が使用量増加の傾向があり身体依存を生じる状態であり、習慣（habituation）^[7]をそのような傾向が欠如したものと定義し、バルビツール酸系薬を習慣性とした^[6]。ベンゾジアゼピン系を含むバルビツール型依存は、アルコールの振戦せん妄同様に身体的依存を生じさせる薬物であると認識されている^[7]。

習慣性医薬品の本指定は、公布が1960年8月10日、施行が1961年2月1日である^[5]。

1 用語の破棄
2 その後の国際条約
3 指定されている医薬品成分
- 3.1 鎮静催眠
  - 3.1.1 ベンゾジアゼピン系
  - 3.1.2 非ベンゾジアゼピン系
- 3.2 オピオイド
- 3.3 その他の麻酔鎮痛剤
- 3.4 覚醒剤
- 3.5 不明
4 脚注
5 参考文献
6 関連項目

用語の破棄

「嗜癖」も参照

1960年代には世界保健機関によって嗜癖（Addiction）と習慣（Habit）の2つの用語は破棄され、依存（Dependence）の用語に変わった^[8]。

その後の国際条約

乱用のおそれのある物質を管理下に置く目的の、1971年の国際条約である向精神薬に関する条約には、日本は1990年に批准しており遅れた理由は条約の付表III-IVの規制の難しさである^[9]。条約の付表III-IVは、バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系がほとんどである^[10]。こうして、1990年には麻薬と向精神薬を規制管理下に置く麻薬及び向精神薬取締法が制定された^[4]。以下に、習慣性医薬品について、日本の麻薬及び向精神薬取締法にて重複して指定のあるものはその種別も記載した。

指定されている医薬品成分

鎮静催眠

抱水クロラール坐剤以外の外用剤を除く。
ブロムワレリル尿素の催眠剤。
トリブロムアセトアルデヒド
ブロムジエチルアセチル尿素の催眠剤。
アリルイソプロピルアセチル尿素の催眠剤。
N-フタリルグルタミン酸イミドの催眠剤（イソミン）販売中止
グルテチミド（ドリデン）第2種向精神薬^[11]。
メチプリロン
メチルパラフィノール
プロポフォール
エスクロルビノール
スルホナール
リルマザホン（リスミー）

ベンゾジアゼピン系

フルニトラゼパム（サイレース、ロヒプノール）第2種向精神薬^[11]。
ロルメタゼパム（エバミール、ロラメット）第3種向精神薬^[11]。
トリアゾラム（ハルシオン）第3種向精神薬^[11]。
ミダゾラム（ドルミカム）第3種向精神薬^[11]。
フルラゼパム（ダルメート）第3種向精神薬^[11]。
エスタゾラム（ユーロジン）第3種向精神薬^[11]。
クアゼパム（ドラール）第3種向精神薬^[11]。
クロバザム（マイスタン）第3種向精神薬^[11]。
ニトラゼパム（ベンザリン）第3種向精神薬^[11]。
ブロチゾラム（レンドルミン）第3種向精神薬^[11]。
ハロキサゾラム（ソメリン）第3種向精神薬^[11]。
ニメタゼパム（エリミン）第3種向精神薬^[11]。

非ベンゾジアゼピン系

ゾピクロン（アモバン）
エスゾピクロン（ルネスタ）
ゾルピデム（マイスリー）第3種向精神薬^[11]。

オピオイド

ペンダゾシン第2種向精神薬^[11]。
エプタゾシン（セダペイン）
ブプレノルフィン（ザルバン）第2種向精神薬^[11]。

その他の麻酔鎮痛剤

デクスメデトミジン　麻酔
ブコローム非ステロイド系消炎鎮痛剤

覚醒剤

マジンドール（サノレックス）

不明

エチニルチクロヘキシルカルバミン酸エステル
トリクロルエチルホスフェイト
2-メチル-3-オルトトリルキナゾロン

脚注

^ ^a ^b Masamutsu Nagahama (1968). "A review of drug abuse and counter measures in Japan since World War II". U.N. Bulletin on Narcotics 20 (3): 19–24.
^ 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 2012, p. 4.
^ “麻薬は免許制に”. 読売新聞: p. 2面. (1946年6月23日)
^ ^a ^b 松下正明(総編集) 1999, p. 120.
^ ^a ^b 松枝亜希子 2010, pp. 391-392.
^ ^a ^b 世界保健機関 1957, pp. 9-10.
^ ^a ^b 保崎秀夫（編集）、武正健一（編集）『医師国家試験のための精神科重要用語事典』金原出版、1982年、185頁。ISBN 4-307-15004-x。にて、従来の用語として、薬物嗜癖（drug addiction）と薬物習慣性（drug habituation）の語があり、同様の説明をしている。
^ 世界保健機関 (1994) (pdf). Lexicon of alchol and drug term. World Health Organization. pp. 6. ISBN 92-4-154468-6. （HTML版 introductionが省略されている）
^ 松下正明(総編集) 1999, pp. 112,118-119.
^ 松下正明(総編集) 1999, pp. 115-117.
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l ^m ⁿ ^o ^p 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 2012, p. 5.

参考文献

世界保健機関 (1957) (pdf). WHO Expert Committee on Addiction-Producing Drugs - Seventh Report / WHO Technical Report Series 116 (Report). World Health Organization.
厚生省, “薬事法第50条第10号の規定に基づき習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品” (プレスリリース), 厚生労働省 2014年12月18日閲覧。一覧において参照。
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 (2012-02) (pdf). 病院・診療所における向精神薬取扱いの手引 (Report) 2013年3月10日閲覧。.
松枝亜希子「トランキライザーの流行―市販向精神薬の規制の論拠と経過」 (pdf) 、『Core Ethics』第6巻、2010年、 385-399頁。
松下正明(総編集) 『薬物・アルコール関連障害』編集：牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文、中山書店〈臨床精神医学講座8〉、1999年6月。ISBN 978-4521492018。

UpToDate Contents

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1. アルコールおよびその他の薬物の有害な使用のスクリーニング screening for unhealthy use of alcohol and other drugs
2. リウマチ性疾患を有する男性における抗炎症剤および免疫抑制剤が性腺機能に及ぼす影響 effects of antiinflammatory and immunosuppressive drugs on gonadal function in men with rheumatic diseases
3. 統合失調症に対する薬物療法：持効性抗精神病薬注射製剤 pharmacotherapy for schizophrenia long acting injectable antipsychotic drugs
4. I群抗不整脈薬の主な副作用 major side effects of class i antiarrhythmic drugs
5. 抗マラリア剤：概要 antimalarial drugs an overview

Japanese Journal

習慣性医薬品の弊害とその取締について

近藤光治
法政思潮 7(2), 24-27, 1954-02
NAID 40003486571

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