出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/01 19:29:34」(JST)
磁気回転比(じきかいてんひ)とは、物理学において、角運動量に対する磁気双極子モーメントの割合である。
磁気回転比は一般にで表記される。国際単位系での単位は、s−1·T -1、もしくはC·kg−1である。
磁気回転比は、g因子と同じ意味で使われることがある[1] 。しかし、g因子は磁気回転比とは異なり、無次元量である。
目次
|
詳細は「ラーモア歳差運動」を参照
磁気モーメントと揃っていない磁場 B(テスラ単位)中に置かれた、ある一定の磁気回転比を持った系は、外場に比例した周波数 f (ヘルツ単位)で歳差運動をする。
このため、 γ/(2π)という量は、(Hz/T) を単位にして、γの代わりによく使われる。
対称軸まわりに回転する帯電体を考える。古典物理学によると、帯電体は回転によって磁気双極子モーメントと角運動量を持つ。電荷と質量は一様に分布しているならば、磁気回転比は、
ここで q は電荷、m は質量である。
(導出)
微小な円形リングにおいてこのことを証明すれば、それを積分することで一般的な結果が得られる。この微小リングは半径 r、面積 A = πr2、質量 m、電荷 q、角運動量 L=mvr を持つと仮定する。このとき、磁気双極子モーメントの大きさは、
よって、磁気回転比は上記のようになる。
孤立電子は、スピンによって角運動量と磁気モーメントを持っている。
電子のスピンは、軸の周りを古典的に回転しているように描写されることがあるが、実際はそれは根本的に異なる。古典物理学には類似するようなものは無く、量子力学的な現象である[2]。
よって、上記のような古典的における関係が得られるとは考えづらい。実際、ge (もしくは、混同する恐れがない場合は単に g)と記述する 「電子のg因子」と呼ばれる無次元量を用いて、先ほどとは異なった結果を与える。
ここで、μBはボーア磁子である。上で述べたように、古典物理学によるとg因子は であると予想される。しかし、相対論的量子力学によると、
となる。ここで、 は微細構造定数である。
相対論的な結果 への小さな補正が場の量子論によって成された。実験的に、電子のg因子は小数第12位まで測定された[3]。
電子の磁気回転比は NIST によって以下のように与えられている[4]。
g因子と磁気回転比は理論と極めてよく一致している(QEDを参照)。
ディラック方程式から得られる磁気回転比は「2」であるが、g因子が「2」であることは相対性による結果であるという誤解がしばしば見られるが、それは間違いである。「2」という因子はシュレディンガー方程式と相対論的なクライン-ゴルドン方程式の両方の線形化から得られる。どちらのケースでも、4元スピノルが得られ、どちらの線形化でもg因子は「2」に等しくなる。それゆえ、2という因子は、波動方程式の空間と時間についての一次(二次ではない)導関数に対する依存性の結果である[5]。
プロトン、中性子、多くの核は核スピンを持ち、上記の磁気回転比を生じさせる。磁気回転比は、通常は簡単のために中性子や他の核においてもプロトンの質量と電荷で記述される。
ここで、 は核磁子、gは考えている中性子や核のg因子である。
核の磁気回転比は、核磁気共鳴 (NMR) や核磁気共鳴画像法 (MRI) で重要な役割を果たすので、特に重要である。NMRやMRIは、核スピンは磁場中でラーモア周波数と呼ばれる速さで歳差運動をしているという事実に基づいている。ラーモア周波数は、磁場の強さと磁気回転比の積である。
いくつかの核種での近似値を以下の表に示す[6][7]。
核種 | γ / 106 rad s−1 T−1 | γ/2π / MHz T−1 |
---|---|---|
1H | 267.513 | 42.576 |
2H | 41.065 | 6.536 |
3He | -203.789 | -32.434 |
7Li | 103.962 | 16.546 |
13C | 67.262 | 10.705 |
14N | 19.331 | 3.077 |
15N | -27.116 | -4.316 |
17O | -36.264 | -5.772 |
19F | 251.662 | 40.053 |
23Na | 70.761 | 11.262 |
31P | 108.291 | 17.235 |
129Xe | -73.997 | -11.777 |
[ヘルプ] |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「magnetogyric ratio」 |
関連記事 | 「回転」「比」 |
.