出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/13 13:49:22」(JST)
ミルクアレルギー | |
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分類及び外部参照情報 | |
加熱殺菌された牛乳
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ICD-9 | 995.3, V15.02 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 | |
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牛乳アレルギー(ミルクアレルギー)は、動物(牛に限らない)の乳に含まれる成分に対するアレルギー反応である。多くの場合、牛乳に含まれるタンパク質の一種であるアルファS1-カゼインが原因である。このアレルギー反応はアナフィラキシーを発症し、生命に危険がある場合もある。
牛乳アレルギーは、乳糖不耐症とは異なる。
以下、特に断らない限り牛を含む動物の乳をミルクと表記する。
ミルクアレルギーはミルクに含まれる多くのタンパク質が引き起こしている。主な原因は、ミルクに含まれるタンパク質の1種のアルファS1-カゼインである[1]。
アルファS1-カゼインは動物ごとに異なる。このため、羊乳にアレルギーを持つ人がヤギ乳を飲めないにもかかわらず、母乳が飲めるということがある[2]。
主な症状は消化器、皮膚、呼吸器にあらわれる。皮疹、蕁麻疹、嘔吐、下痢、便秘、鼻炎、胃の痛みや屁という症状になってあらわれる。さらに以下の症状もあらわれることがある。アナフィラキシー、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、赤ん坊の夜泣き、胃食道逆流症、逆流性食道炎、大腸炎、頭痛/片頭痛、口の炎症。
これらの症状は即時反応として飲んでから数分で発症することもあれば、数時間ときには数日で発症する遅延反応としてあらわれることもある。
ミルクアレルギーは、食物アレルギーの1種であり、通常個々には無害なタンパク質によって引き起こされる。これに対して乳糖不耐症は食物不耐性の1種であり、アレルギー反応ではない。乳糖不耐症は腸管においてラクターゼなどの酵素の欠乏していることで引き起こされ、ミルク中の乳糖の消化が十分行えないことが原因である。したがって、乳糖を予め分解したミルクであれば、乳糖不耐症ならば問題は起こらないのに対し、ミルクアレルギーの場合は抗原となり得るタンパク質が存在する限り問題が起こるのである。
なお、ミルクアレルギーは病的な状態であるのに対し、乳糖不耐症は元々成長と共に発現するものなので、成人に現れた乳糖不耐症は病的な状態であるとは考えられていない。ただし、乳児に現れた乳糖不耐症は病的な状態である。
ミルク中のタンパク質の不耐(Milk protein intolerance : MPI)は通常個々にはアレルギーも不耐も起こさない食物タンパク質への遅延反応である。MPIは non-IgE抗体を生成し、アレルギーの血液検査では発見されない。MPIはミルクアレルギーとよく似た症状を発症し、対処方法もミルクアレルギーと同じである。MPIは豆乳にも当てはまる(milk soy protein intolerance : MSPI)。
MPIのミルクは、ミルクだけでなくその派生商品(パンやケーキ)も含まれる。さらに「non-dairy」つまり乳成分を含まないとラベルされた商品でも引き起こされることもある。non-dairyは乳成分が0.5%未満のことを指すためである。[3] これらにはカザミノ酸のようなワクチンが存在する。
加熱処理(例:パンのトースト、目玉焼き)によってタンパク質を変性させることができる。ただし、原材料への加熱が必要である。
ミルクが使用されていない製品であっても、乳成分入りの材料を含む場合があり注意が必要である。状況によっては深刻な結果になってしまう。
ミルク中のタンパク質は母乳を通じて幼児が摂取してしまうため、ミルクアレルギーの幼児の母親は授乳を行う場合、乳製品を食べてはいけない。[4] 母乳以外をアレルギーを持つ幼児に与える場合、ミルク代替製品が利用される。 ミルク代替品には、大豆製品や加水分解を利用した低アレルギー性製品、そして遊離アミノ酸ベースの製品が含まれる。
ミルク由来でないアミノ酸ベースのミルク代替品は授乳できない状況での最良の製品であると考えられている。
加水分解ミルク代替品というのは、一部加水分解されたモノから大部分加水分解されたモノまである。部分的に加水分解されたミルク代替品は長鎖ペプチドのタンパク質が特徴的で、口当たりが良い。しかし、このような製品は口当たりを考慮して作られたのであって、ミルクアレルギーの幼児にむけて作られた製品ではない。ほぼ加水分解されたミルク代替品はタンパク質を遊離アミノ酸と短鎖ペプチドに分解する。カゼインと乳清は、高い栄養価とアミノ酸成分の質の良さから加水分解ミルク代替品の元として利用されている。
豆乳ベースのミルク代替品は、危険性を伴う可能性がある。ミルクアレルギーの幼児は同時に大豆に対してもアレルギーを持つ可能性があるためである。また6ヶ月以下の幼児には豆乳ベースのミルク代替品は推奨されていない[要出典]。しかし、アレルギーを持つ幼児のための米乳やエンバクなどのミルク代替品は飲むことができる。
多くの製品が市販されている。生乳、米乳、豆乳、エンバクミルク、ココナッツミルク、アーモンドミルクはミルク代替品として利用されることがあるが、栄養的には幼児には向かない。しかし、大豆、米、イナゴマメから作られる特別な幼児向けミルク代替品は広く市販されている。
長期的にミルクを摂取しない場合、カルシウム欠乏症と骨粗鬆症に対して注意が必要である。この場合、カルシウムやビタミンDのサプリメントを利用することでリスクを減らすことができる。ただし、骨粗鬆症への効果が常に明確にあるというわけではない。フルーツ液のサプリメント(カルシウム、ゴマ、麻の種、豆腐入り)もあるが、健康への別の影響も存在する。
アレルギー体質の人が誤飲してしまった場合、症状の重さによって様々な対処方法が存在する。エピペン、抗ヒスタミン薬、ジフェンヒドラミンなどの薬を頻繁に飲むことが必要である。ミルクアレルギーはアナフィラキシーを発症し、生命の危険が存在する。
ミルクアレルギーは幼児には多く見られるが、2-3歳で自然に消えていくことが多い。
ミルクアレルギーは幼児期の食物アレルギーの中で最も多いアレルギーである。先進国の幼児の2%から3%が発症するが、その85%から90%が3歳を超えると発症しなくなる[5]。成人の発症は0.1%から0.5%である[6]。
13%から20%のウシのミルクに対するアレルギーを持つ子供は、牛肉にもアレルギーを持つ[7]。
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免疫反応の主体 | IgE | IgM, IgG | 免疫複合体 | Th1細胞 | Th2細胞 | Tc細胞 | IgG |
抗原 | 水溶性抗原 | 細胞や マトリックスに 結合している抗原 |
水溶性抗原 | 水溶性抗原 | 水溶性抗原 | 細胞関連の抗原 | 細胞表面レセプター |
エフェクター機構 | 肥満細胞の活性化 | 補体 (CDC)|NK細胞、好中球 (ADCC) | 補体、好中球 | マクロファージの活性化 | IgE産生、好酸球と肥満細胞活性化 | 細胞障害 | 抗体の結合 |
アレルギー疾患の例 | 気管支喘息 アレルギー性鼻炎 花粉症 喘息 蕁麻疹 アトピー性皮膚炎 ラテックスアレルギー |
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