出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/16 19:56:18」(JST)
n 桁の有効数字(ゆうこうすうじ)で丸めるとは、端数処理での一形式である。
n 桁の有効数字で丸めるという作業は、単に n 桁に丸めるというだけではなく、異なるスケールの数字を統合して取り扱う点でより重要な技法である。
浮動小数表示というのは、コンピュータ上での有効数字表現に丸める典型例であるが、2進数である点がポイントである。
0ではない数字に挟まれた0は有効である。例えば、
0ではない数字より前に0がある場合、その0は有効ではない。例えば、
小数点より右にある0は有効である。例えば、
小数点がない数の最後にある0については、有効であるとも有効でないとも受け取れ、曖昧である。例えば、1 000 の有効数字は1桁から4桁のどれとでも受け取れる。このように、整数(小数点がない数)の末尾で続いている0を有効数字と見るかどうかは、その文脈によってまちまちである。
この曖昧さは数の後に小数点を置くことで解決できる。例えば、"1 000." と記せば、有効数字4桁であることを意味する[1]。
また、有効数字が何桁であるかを明示するためには、科学的記数法を用いることもできる。
なお、有効と見なさない数字というのは非常に重要である。例えば、'0.005' に用いられている0は有効数字とは見なさないが、その桁を表すためには依然として不可欠なものである。
2桁の有効数字に丸める場合、
n 桁の有効数字に丸める際の問題点は、n 桁目の数字が必ずしも明確とは限らない点である。これは、整数部にある0(小数点より左にある0)について発生する問題である。上記の最初の例では、12 300 を丸めれば 12 000 になるのだが、丸めた後の 12 000 だけを見れば、有効数字は2桁から5桁までのいずれにも受け取れるため、何桁目の数字を丸めたのか不明確となる。
丸めのレベルを明示する際は科学的記数法を用いれば、あいまいさを減らすことができる。例えば、先の例で 1.2 × 104 とすれば、有効桁数は2桁であると明示されるのである。
丸めのレベルは、例えば、"20 000 to 2 s.f."(significant-figures の略語)のように有効桁数が2桁であると特別に明示することも可能である。さほど一般的でない方法ではあるが、最後の有効数字に下線を引く("20000" など)という方法もある。
とはいえ、いかなる場合にも最良なアプローチは、不確かさと明確さをわけて記述することである。例えば、 20 000 ± 1% という書き方をすれば、有効数字のルールを適用せずとも明瞭な記載とできる。
もし、短距離走者が100mを11.71秒で走ったら、平均速度はいくらになるだろうか? 計算機で距離を時間で割ると、8.539 709 65 m/s という値が出てくる。
精度を表すための最もストレートな方法は、その正確さと不確かさを分けて記すことである。例えば、不確かさの範囲を ±0.085 m/s と定め 8.540±0.085 m/s または同じ意味で 8.540(85) m/s と記すのである。これは、不確かさそのものが重要で明確になっている場合に適している。この場合、有効数字のルールで言われるよりも多くの桁数を記したほうが安全でより望ましい。
もし答えの精度が重要でないならば、正確にわかっていない桁も続けて 8.5397 m/s のように記すのが安全である。
しかしながら、有効数字のルールを厳格に適用すれば、8.539 709 65 m/s という表記は 10 nm/s の桁まで速度が分かっていることを意味する。このような表記は、測定精度に比べて不適切な書き方である。この場合、有効数字3桁 (8.54 m/s) で結果を報告すれば、速度は 8.535 から 8.544 m/s の間であるのだとわかってもらえる。2桁 (8.5 m/s) で報告してしまうと、測定精度に対して丸め誤差が無視できないほど大きくなってしまう。
数値は、読みやすいように丸められることが良くある。『18.148% と 35.922% を比べよ』というよりも、『18% と 36% を比べよ』というほうが、相手に通じやすいものである。
同様に、予算を眺める際に、
部署A: $185 000 部署B: $ 45 000 部署C: $ 67 000
となっているほうが、次のように書かれているよりも理解するにも比べるにも簡単である。
部署A: $184 982 部署B: $ 44 689 部署C: $ 67 422
曖昧さを減らすには、一番近い桁数の単位にしてデータを記すこともよく行われる。
収益(単位: 千ドル): 部署A: 185 部署B: 45 部署C: 67
有効数字に注意して計算する際には、重要なポイントがある。有効桁数は、あくまでも測定値の中で一番有効桁数が少ないものに合わせるという点である。
以下のように厳密に求まっていたり定義されている値については、有効桁数を少なくとも気にすることはない。あくまでも、測定の不確かさが存在する測定値の有効桁数を生かすのが、有効数字の概念(不確かさの桁の明示)だからである。
なお、上述のような定数とは違い、アボガドロ定数のような物理定数には有効桁数がある。なぜなら、これらは物理的に測定された値から求められた数値だからであり、有効数字のルールが適用される対象となる。
応用分野の科学者は、不確かさを表現するのに一般的に 1.234±0.055 または同じ意味で 1.234 (55) という表現を用いる。ポイントは、不確かさが別個の数値 (0.055) として表される一方で、公称値 (1.234) も分けて表現されているところにある。これら2つのことを正確に分離して表現するのは、公称値と不確かさを有効数字のルールに頼って1つの数字に盛り込もうとするよりも繊細な取り扱い方である。
この記事の冒頭に述べたように、有効数字というのは丸めの一種として受け止められており、最終的な答えを丸めたものが、不確かさに比べて支配的であってこそ意味がある。一方で、不確定さに比べて丸めた結果が支配的にならない場合には、これは重大な問題となる。とはいえ、測量学のように実験的な研究においては、丸め誤差が支配的になるのはよほどひどい実験方法であるから、それを避けて丸め誤差を減らすのは容易である。それでもなお丸め誤差が支配的であったとしても、それを示すために 1.24(½) または同じ意味で 1.24(⁄) と明示するのがよい。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
関連記事 | 「数字」「有効」 |
.