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心身医学(しんしんいがく、英語:psychosomatic medicine)は、患者の身体面だけではなく心理・社会面を含めて、人間を統合的に診ていこうとする全人的医療を目指す医学の一分野である。心身医学を実践している診療科が心療内科(しんりょうないか)である。
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心身医学は元来ドイツで誕生した医学である。その後アメリカにわたり、精神科医を中心に発展していった。諸外国では精神医学の一分野という認識であり、大半の国では精神症状がある時点で精神科の受診となる。1940年代から1960年代までは、フロイト派の精神分析や力動精神医学などを学んだ者が扱うものと考えられていたが、近年の潮流は行動医学へとシフトしている[1]。 現在のドイツではリエゾン医学として、全医学生に心身医学の教育が義務づけられており、国家試験にも必須の問題が出題されている[2]。
一方、日本の心身医学は、病気の発症や進行に心理的要因が大きく関わる器質性疾患を中心に扱う分野として主に内科学から発展していった。初期の頃は「精神身体医学」と称されていた[3]。
心身医学の主な対象は心身症である。内科疾患を主な対象とする場合は「心療内科学」と呼ぶこともある。心理面を含めた身体疾患の治療にあたるのが心身医学の専門医であるが、近年の医療技術の進歩によって、身体科の専門医との連携なしでは治療を進めえないことも多く、その場合、コンサルテーション・リエゾン精神医学との明確な区別はできない[1]。
心身症の診断には「明らかな身体疾患である」「負荷となる環境変化により身体症状が憎悪する」の2つの条件が不可欠であり、他には「社会適応は比較的良好である」「身体治療をしても症状が改善しない、あるいは再燃を繰り返す」などの特徴があることが多い[1]。
心療内科は主に心身症やストレスからくる身体症状を扱う。最初に心療内科が誕生したのは、九州大学病院で、現在心療内科の講座・診療科を持つ医科大学は、九州大学、東京大学、東邦大学、関西医科大学、鹿児島大学の5大学のみである[2]。他に診療科を持つ医科大学としては近畿大学、日本大学、東北大学、東京医科歯科大学(歯学部)などがある[4]。
「心療内科」という名称は日本にしか存在せず(ドイツでは「心身医学科」という名称の診療科になる[2])心身医学を専門とする心療内科は、精神科と多少の競合分野となっている[1]。
現在では一般的に精神科と心療内科の区別は曖昧で、ほぼ同一と見なされてきており、心身医学の専門医や心療内科医が、身体症状を有する神経症性障害や軽症うつ病などの診察にあたることは珍しくなくなったが、専門性に関しては議論の対象となっており[1]、心療内科医が最新の精神医学を修得しているかは個人差があるといわれる[5]。
日本においては1996年に「心療内科」が厚生省に標榜科として認められて以降、精神科を含む多くの医療機関で「心療内科」の標榜が掲げられるようになり、心身症の治療が受けやすくなった。患者側に精神科通院に対する偏見がある場合、精神科ではなく心療内科の受診を希望することも多い。しかし、そのような患者でも実際に心療内科で診るべき心身症であることは少ないという[6]。
なお心療内科医が開業している場合「心療内科・内科」、精神科医が開業している場合は「心療内科・精神科・神経科」などと標榜している場合が多い。総合病院などに精神科がなく心療内科のみが存在しているケースなどでは、精神科医が診察を行っていることもある[6]。
厚生労働省の2008年統計によると、国内の心療内科医(内科医を除く)の数は883人で、精神科医の数は13534人である[7]。
東邦大学医学部附属大森病院心療内科では、「心療内科は純粋な心身症だけを見るべきではない。本来の心身症の患者は、心療内科受診者の15%にすぎない」とコメントしている[要出典]。
心理状態が身体の状態に影響を与えるという実証的な研究が進んでいる。日本では1995年前後に、笑いやストレスがNK細胞の活性度をはじめとする免疫状態に影響を与えるという発表が行われた。癌の場合には、末期がんの患者にカウンセリング治療を行った場合と、行わなかった場合とで、平均生存期間や生活の質 (QOL) に大きな違いが生じたことが、1978年に米国のカール・サイモントンによって報告された。
癌の場合に、患者の精神面のカウンセリングなどを行って治癒の促進を図る療法がある。同じような病状の患者に同じ治療を施しても、患者の心理状態によって治療結果が大きく変わるとして、1970年代に米国のカール・サイモントンによって始められたサイモントン療法がある。精神腫瘍学、精神神経免疫学に基づく。日本へは1999年に導入され、認定セラピストによる治療が行われている。
日本では、森田療法に基づく生きがい療法の実践が、1980年代から続けられている。
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