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発作性夜間血色素尿症(ほっさせいやかんけっしきそにょうしょう、英: Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria、略称: PNH)とは、溶血性貧血の一つ。発作性夜間ヘモグロビン尿症とも呼ばれる。
疫学
厚生労働省指定の難病特定疾患であり、日本での患者数は、約500人程度と言われている。
病因
グリコシルホスファチジルイノシトール(Glycosyl phosphatidylinositol:GPI)アンカーの生合成に必須な遺伝子である「PIG-A遺伝子」の変異が造血幹細胞に生じて、赤血球膜上のGPIアンカー型補体制御因子である「CD55(decay-accelerating factor:DAF)」や「CD59(membrane inhibitor of reactive lysis:MIRL)」が欠損することで、補体(C3/C5:CD55にて制御 C9:CD59にて制御)活性が強くでることで血管内溶血が生じてくる。
臨床像
旧来より病名の由来でもある特徴的兆候として「夜間早朝の赤褐色尿(ヘモグロビン尿)」があるが、実際には約50%程度と言われている。基本的に感染・睡眠・妊娠・手術等によって、補体活性が強くなることで「溶血」が生じ以下の一連の症状が起きる。
- 溶血性の貧血を生じることで、一般的な貧血の症状を呈する。
- 高血圧・肺高血圧 / 消化器症状 / 勃起不全(ED)
- 溶血に伴う遊離ヘモグロビンに、血液中の一酸化窒素(NO)が吸着し血液内のNOが枯渇によることで、血管や腸管平滑筋の収縮が生じ、高血圧や肺高血圧等の血圧異常や、腹痛・嚥下障害等の消化器症状、さらには男性であれば勃起不全(ED)を生じる。
- 病態は明確では無いが深部静脈血栓症や脳梗塞・心筋梗塞といった血栓症を多く生じる。本疾患での重要な生命予後規定因子でもある。
- 溶血に伴う遊離ヘモグロビンのため、ヘモジデリンが腎臓へ沈着することで、慢性腎不全を呈してくる。
検査
- 1937年に米国のThomas Hale Hamが報告した検査で(N Engl J Med 1937; 217:915-917)、酸化血清(pH6.5~7.0)に患者血球を入れると溶血するというもの。
- 1966年に米国のRobert C. Hartmannが報告した検査で(N Engl J Med 1966; 275:155-157)、砂糖水(高イオン液)に患者血球を入れると溶血するというもの。
- フローサイトメトリー(FCM)で赤血球や顆粒球の「CD55」「CD59」陰性細胞数の割合を検査する。日本では、赤血球検査のみ保険適応のため、赤血球のCD55/CD59検査が一般的であるが、溶血や輸血の影響を受けるため、顆粒球(白血球)の測定がより的確であり海外では一般的である。
- 高感度なFLAER (fluorescent-labeled inactive toxin aerolysin) 法を用いて、直接「GPI-AP欠損血球」の検出と定量が診断基準とされている。
- NAP score低値、赤血球膜AchE活性低下、クームス試験陰性
治療
軽症例では経過観察を行っていく。基本的に生命予後に大きく影響する血栓症に対する抗凝固療法と溶血に対する対症療法が中心とされ、以下の分子標的治療薬投与が行われている。本疾患では脾臓摘出術は行われない。
- 対症療法
- 溶血治療:ステロイド(溶血発作予防)、ハプトグロビン(溶血による腎機能低下予防)、赤血球輸血等
- 抗凝固療法:ワーファリン等
- 分子標的治療
- エクリズマブ(Eculizumab ソリリス Soliris)
- 補体「C5」を阻害するヒト化モノクローナル抗体で、溶血防止としての効果は非常に大きいと言われている。「C3」は阻害しない。偶発症としては髄膜炎菌等の感染症の増悪の危険性がある。
- 唯一の根治的治療であるが、上記の分子標的治療での治療成績が比較的良好であり、近年では若年者において等で十分に検討された上で行われる。
微少PNH血球
GPIアンカータンパク質の欠失している血球を「PNH血球」という。再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の不応性貧血の患者でしばしばPNH型血球を認めることがある。PNH血球陽性再生不良性貧血や不応性貧血の患者は免疫抑制療法に反応しやすく、奏効率がよいことが知られている。ただし、これら患者におけるPNH血球の陽性率は通常1%未満であり、上記の通常のFCM法では偽陰性とされる恐れがある。そこで、0.01%程度まで検出できる高感度FCM法の使用が推奨されている。
リンク
- 日本PNH研究会(血液学専門医師の研究会)
- NPO法人PNH倶楽部(患者会)
- PNHSource.jp(PNH-発作性夜間ヘモグロビン尿症に関する情報サイト)
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62) - 難病情報センター
UpToDate Contents
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- 1. 発作性夜間血色素尿症の臨床症状および診断clinical manifestations and diagnosis of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria [show details]
…Episodes of jaundice and pink/red or "cola-colored" urine from hemoglobinuria may also occur during periods of intravascular hemolysis. Hemoglobinuria may be nocturnal, as the disease name implies, or it may …
- 2. 腎疾患の診断における尿検査urinalysis in the diagnosis of kidney disease [show details]
…has either hemoglobinuria or myoglobinuria. If a urine dipstick of the red supernatant is negative for heme, the patient may have one of a variety of unusual conditions. Hemoglobinuria is the presence …
- 3. 小児における溶血性貧血の概要overview of hemolytic anemias in children [show details]
…disorders are caused by a combination of intrinsic and extrinsic mechanisms (eg, paroxysmal nocturnal hemoglobinuria [PNH]): Intrinsic hemolytic anemias generally result from inherited or congenital hemoglobinopathies …
- 4. 成人における血尿の原因および評価etiology and evaluation of hematuria in adults [show details]
…subjects. A red to brown supernatant that is positive for heme is due to myoglobinuria or hemoglobinuria. How these disorders can be distinguished is discussed elsewhere. Gross (visible) hematuria …
- 5. 発作性寒冷血色素尿症paroxysmal cold hemoglobinuria [show details]
… Paroxysmal cold hemoglobinuria (PCH, also called Donath-Landsteiner hemolytic anemia or Donath-Landsteiner syndrome) is an uncommon type of autoimmune hemolytic anemia (AIHA) in which autoantibodies to …
Japanese Journal
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)診療の最前線 (特集 溶血性貧血up to date)
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を中心としたGPI欠損症の分子遺伝学・生物学 (特集 溶血性貧血up to date)
- PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)に関するアンケート
- PNH frontier : frontiers in paroxysmal nocturnal hemoglobinuria (6), 52-58, 2019
- NAID 40021969684
Related Links
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は、PIGA遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大した結果、補体による血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患である。再生不良性貧血を
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症とは「PIGA」という遺伝子の変異によって、血液中の赤血球が壊される「溶血」や、免疫細胞が自身の造血幹細胞を攻撃してしまうことによって起こる「骨髄不全」を引き起こす希少疾患です。 今回は発作性夜間ヘモグロビン尿症の症状や原因、溶血が起こる ...
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症( p aroxysmal n octurnal h emoglobinuria :以下PNH)は、補体による血管内溶血、骨髄不全および血栓症を主徴とする後天性かつ進行性の血液疾患です 1)。PNHは、後天的に PIG-A 遺伝子に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより発症します。
★リンクテーブル★
[★]
発作性夜間血色素尿症
[★]
- 英
- hemoglobin, Hb
- 同
- 血色素
- 関
- 酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、赤血球。グロビン鎖、ヘモグロビン濃度
生化学
血液内科学
- 2種類のグロビンタンパク質が各2個集まりヘテロ4量体を形成したもの。
- 発生段階によってできるヘモグロビンが異なる
- α鎖系はζ→α
- β鎖系はε→γ→β δ
- 発生初期:ζ2ε2
- 胎児期 :α2γ2
- 乳児期 :α2β2(HbA), α2δ2(HbA2), α2γ2(HbF)
- 成人
- α2β2(HbA) :Hbの97%
- α2δ2(HbA2) :Hbの2%
- α2γ2(HbF) :Hbの2%
発生初期:ZE
成人 :B > D > G , Aは共通
機能
CO2運搬
- 血液中に溶解する :排泄されたCO2の5%(Kaplan Q book p.101)、9%(SP.655)
- ヘモグロビンのN末のアミノ基でカルバミン酸を形成して :排出されたCO2の15%(HBC.45)、11%(SP.655) カルバミノヘモグロビン
- 赤血球中のCAによりbicarbonateを産生し、血漿により運搬される :排泄されたCO2のほとんど(HBC.45)、80%(SP.655)
臨床検査
- 臨床検査では、血液1dl中のヘモグロビンの量(g)を定量する。略号はHb
- -2007前期生理学授業プリント
- 男性:14 - 18 (g/dl) 16±2 (g/dl)
- 女性:12 - 16 (g/dl) 14±2 (g/dl)
- 異常値の出るメカニズム第5版 p.79
- 男:13~19 g/dl
- 女:12~18 g/dl
- HIM. A-2
- 男:13.3-16.2 g/dl
- 女:12.0-15.8 g/dl
- 出典不明
輸液によるヘモグロビン濃度の上昇
- 予測方法(1):予測されるヘモグロビン上昇(g/dl) = 投与ヘモグロビン量(g) / 循環血液量(dl)
- 予測方法(2):濃厚赤血球2単位でおよそヘモグロビン上昇は1(g/dl)
国試
[★]
- 英
- hemoglobinuria
- 同
- ヘモグロビン尿、血色素尿症
- 関
- ヘモグロビン尿性腎症、赤いおむつ症候群
[show details]
- 赤色あるいは赤褐色調の尿が認められ、その成分がヘモグロビン*由来である場合をいう。
病因
-
[★]
- 関
- 一方、インター、~の中で
[★]
- 英
- sis, pathy
[★]
- 英
- globin
- 同
- グロビン蛋白質 globin protein
- 関