出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/11 13:27:36」(JST)
光ディスク(ひかりディスク)とは光学ドライブ装置を使い、光(半導体レーザー)の反射により情報を読み書きする情報媒体(電子媒体/ディスクメディア)である。
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光ディスクは厚さ数ミリ程度の円盤であるが、保護層・記録層・反射層などそれぞれ役割の異なる複数の層が重なる形で作られている。規格により多少異なる要素はあるが、レーザー光を光ディスクに照射するとレーザーは保護層を通り抜けて記録・反射層に到達する。ここでレーザー光は記録層に設けられたピットと呼ばれる凹みにより性質が変えられたうえで反射される。この反射されたレーザー光を光センサーにより解析することで情報を読み取る仕組みである。
光ディスクには、生産工場であらかじめ情報が書き込まれているもの(所謂プレス版、市販の音楽CDやDVD-Videoなど)と、ユーザーが任意に情報を記録できるもの(記録型メディア)の大きく分けて2種類が存在する。また、プレス版ディスクと記録型ディスクでは記録層(情報を記録する面)に用いられる材質および記録方式に違いがある。(詳しくは#記録の可否による分類を参照)
材料として保護層や基盤にポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリ乳酸などが、反射層には銀やアルミニウムなどが主に用いられている。
光を使って読み書きするので、埃や指紋の付着によるデータの読み出しに対する悪影響が磁気ディスクよりは少なく、磁気によるデータ損失の影響もない。こうした特性からリムーバブルメディアとしての利用に優れており、オーディオ・ビジュアル分野の機器で使用するための音楽や映像作品の供給媒体として、あるいはパーソナルコンピュータやゲーム機用のソフトウェア供給媒体として幅広く利用されている。
最初に市場に登場した光ディスクは、1960年代から研究が進められ1980年に発売されたレーザーディスクである。レーザーディスクにはビデオ信号をアナログデータのまま記録されていて、デジタルデータを記録する後発の光ディスクとは性質が異なる。
光ディスクはソフトウェア(音楽や映像なども含む)の供給媒体としては非常に優秀であり、取り扱いの便利さ、大量生産の容易さ、製造コストの安さなどで幅広い分野において従来の媒体を置き換える形で普及してきた。レコード→CD、カセットテープ→MD、ゲーム機のROMカセット→CD-ROM、VHS→DVDなどがその例である。
しかしその一方で光ディスクの特性が足枷となり従来媒体からの置き換えには至っていない、あるいは光ディスクから別方式のストレージへの転換を見せている分野もある。
光ディスクは大容量化が難しい。記録密度の限界が半導体レーザーの波長で決まるからである。ブルーレイディスクやHD DVDの世代で既に可視光線の中でも最も短い波長である青紫光の半導体レーザーを使用している。光ディスクの原理をそのままにさらに記録密度を高めるにはそれより短い波長光、すなわち紫外線を使うことになるが、現在の光ディスクの材質に使用しているポリカーボネートなどでは紫外線を吸収し表面劣化を引き起こすため扱えない。記録面の多層化によりある程度の大容量化は実現でき、ブルーレイディスクでは最大で1枚200GB〜400GB程度まで引き上げることができるが、2010年現在一般に入手できるのは片面3層の100GBまでである。こうしたことから、大規模なサーバや汎用機用バックアップ装置では最大で数百GBの容量を持つ磁気テープ(DAT)を置き換えるにはいたっていない。
光ディスクは書き込みが容易ではない。書き込みあるいは書き換え可能な光ディスクであっても一部の規格を除いてフロッピーディスクやハードディスク、MO、USBメモリなどと同様の扱いでは書き込むことはできず消去もできない。パソコンでCD-RやCD-RWなどのブランクメディアに情報を書き込むためには書き込みに対応した光学ドライブのほか、ライティングソフトウェアが別途必要になる。一度だけ記録可能なメディア(CD-RやDVD-Rなど)を使用した場合は書き込んだ内容を消去することはできず、書き換えを視野に入れる場合はCD-RWなどの書き換え可能なメディアを使用する必要がある。書換え可能なメディアを用意しかつパケットライト方式で記録することによってハードディスクなどと同様の扱いができるようになるが多くのデメリットがあり、パソコンの補助記憶装置やビデオレコーダーでは磁気ディスクであるハードディスクが主に用いられている。
ディスク型記録媒体は機械的にディスクを回転させるので読み込みにおいて信頼性が低く時間がかかる。光ディスクも例に漏れずこの影響を受ける。また光ディスクの主要な規格(12cmまたは8cmのディスク、あるいはMD)は機器小型化の足枷になる。衝撃に強く小型化が要求されるポータブル音楽プレーヤーやデジタルカメラ、携帯ゲーム機等には内蔵型あるいはカード型のフラッシュメモリの方が相性がよく、こうした分野の一部(ポータブル音楽プレイヤーなど)では光ディスクからフラッシュメモリへの転換が起こっている。
光ディスクの寿命は製造時の品質にも左右されるが適切な取り扱いおよび保存行為をしていれば最長で100年、多少雑に取り扱っても劣化を進める要素(直射日光(紫外線)、高い温度、強い湿気など)に積極的に晒さなければ10〜30年は保存しておくことが可能とされている。ただし、規格や製造された時代によりディスクの素材が異なる場合があるので一概には言えない(寿命は使用する素材にも左右されるからである)。CD-Rなどの有機色素を利用した記録用メディアはその有機色素が紫外線の影響を受けやすいので、保存方法にもよるが前述の寿命より若干縮む傾向にある。
使用する素材を見直すことで、寿命を飛躍的に高めることができる。基盤をガラス製にしたガラスCDや、記録・反射層に使用されている金属箔に金を使ったゴールドディスクなどがその代表例である。金銀反射膜の採用は生産コストの問題もあってあまり一般的ではないが近年記録媒体としてCD-RやDVD-Rが一般化したことでその信頼性が問われるようになったため、金銀反射膜を採用して寿命が延びたことを宣伝文句とし差別化を図る商品も登場している[1][2]。
音楽用CDが出回り始めた当時は半永久的に保存が可能とされていた事もあったが、前述の通り寿命は確実にある。しかしディスクを雑に扱わず、紫外線や高温多湿を避けて保存するなど細かい配慮をすることでその寿命は大きく延ばすことができる[3]。
光ディスクは数多くの規格が存在し、また規格の登場時期や特性により以下のような世代分けができる。
主に1980年代に登場し、記録・再生に赤外線半導体レーザーを使用する。12cmディスクの場合で最大700MB程度の容量がある。
主に1990年代に登場し、記録・再生に赤色半導体レーザーを使用する。片面1層の12cmディスクの場合で最大4.7GB程度の容量がある。映像記録用途では、SDTV画質に適する。
主に2000年代に登場し、記録・再生に青紫色半導体レーザーを使用する。片面1層の12cmディスクの場合で最大25GB程度の容量がある。映像記録用途では、HDTV画質に適する。
Blu-ray Discなどに対して次世代以降となる光ディスクはホログラム技術(光ディスクの記録面の多層化などではなく、立体的に記憶することにより記憶容量を増やす試み)等を使った大容量化が模索されており、いくつかは動画記録と再生に成功している。また、ソニーは東北大学との共同研究により、これまでの100倍となる高出力(100ワット)の青紫色半導体レーザーの開発に成功したと発表。多層技術との併用により、「テラバイト級の記憶容量の実現も可能」としている[4]。
光ディスクには、生産工場であらかじめ情報が書き込まれたもの(読み込み専用の所謂プレス版)とユーザーが任意に情報を書き込むことができる記録型ディスクに大別できる(記録型ディスクもまた二種に大別することができる)。レーザー光の反射により記録された情報を読みこむ点ではどちらも共通してはいるが、その仕組みや構造は細部で異なる。
生産時において記録・反射層の薄い金属箔にピットと呼ばれる無数の小さい凹みを設け、このピットの並ぶパターンにより情報を記録したものである。ユーザーが任意に情報を消去したり改変したりすることはできないが、読み取りは可能である。著作権者による映像や音楽作品などの供給媒体として利用されている。CDでは市販のCD-ROMや音楽CD、DVDでは市販のDVD-ROMやDVD-Video、その他BD-ROMやHD DVD-ROMなどがこれに当たる。
CDやDVDは、元来は読み込み専用メディアとして開発されたものである(記録型のCD-RやCD-RWなどは後から追加導入された)。Blu-ray DiscやHD DVDは規格策定当初から記録型メディアを視野に入れて開発されたメディアであるが、このタイプが存在する。
記録型メディアには大きく分けてライトワンス(WORM)とリライタブルの2種類が存在する。
ライトワンスは一度しか書き込みができずその書き込んだ情報は消去も改変も不可(空き容量がある限りは追記が可能)なメディアで、人為的ミスや誤動作による情報の消去や改変といった事故は起こらない。ゆえに、長期に渡り改変予定のない情報を保存する用途に向く。CD-R、DDCD-R、DVD-R、DVD+R、BD-R、HD DVD-R、UDO WORMがこれに当たる。
ライトワンス型のメディアは金属箔に有機色素が塗布されており、これをレーザー照射によって化学変化させることで情報を記録している(ただし、BD-Rのように無機系の素材が利用されているものもある)。
リライタブルは複数回に渡って書き込みができ、書き込んだ情報の消去も改変もできるメディアで、書き換え可能回数(メディアの規格や個体差、保管方法、使用方法によって上下する)を上回らない限りは再利用が効くので、ライトワンスメディアに書き込む前の試し書きや情報の一時保管メディアとしての利用など短期的に情報を記録しておく用途に向く。CD-RW、DDCD-RW、PD、DVD-RW、DVD-RAM、DVD+RW、MVDISC、BD-RE、HD DVD-RW、HD DVD-RAM、Professional Disc、UDO RWがこれに当たる。
リライタブル型メディアはアモルファス材を使っており、レーザー照射でアモルファス材を結晶化させることで情報を記録している(結晶化をレーザー照射で解くことにより、記録された情報は消去される)。この技術は相変化記録技術と言われる。
詳細は「光磁気ディスク」を参照
光磁気ディスクは光を使って読み出す部分は光ディスクと共通だが、磁気を使って記録する点で異なる。音楽用途で使われるミニディスク(MD)は光磁気タイプの録音用ディスクが主に流通しているが、盤面の一部若しくは全部が再生専用の光ディスクとなっているものも存在する。
光ディスクはMO・PD・DVD-RAMなどデータメディアの一部を除いてキャディ(カートリッジ)に収納されておらず、傷・指紋・ホコリを避けるためにケース(パッケージ)に入れて保管する必要がある。ケースは殆どがプラスチック製で、本のように見開き型の形状となっている。
ジュエルケース・スリムケース・トールケースはサンワサプライ・エレコム・バッファローコクヨサプライなどのサプライ品メーカーからケース単体が家電量販店などで市販されているが、それ以外のケースは殆ど市販されておらず小ロットでの入手は困難である。
新世代の光ディスクが市場に登場する際は、ライセンス収入などをめぐって大手メーカー同士で激しい規格争いが生じる場合が多い。Blu-ray Disc 対 HD DVDがその典型例である。ただし2007年には両メディアに対応する再生機種も発表されている(「ユニバーサルプレーヤー」を参照)。
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