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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/04/02 19:36:51」(JST)
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ピネン |
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IUPAC名
(1S,5S)-2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]-2-ヘプテン
(1S,5S)-6,6-ジメチル-2-メチレンビシクロ[3.1.1]ヘプタン
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識別情報 |
CAS登録番号 |
80-56-8 , (混合物)
[7785-70-8] (1R-α)
[7785-26-4] (1S-α)
[2437-95-8] ((±)-α)
[18172-67-3] (β) |
特性 |
化学式 |
C10H16 |
モル質量 |
136.24 g/mol |
外観 |
液体 |
密度 |
0,86 g·cm−3 (α, 15 °C)[1][2] |
融点 |
−62–−55 °C (α)[1]
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沸点 |
155–156 °C (α)[1]
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水への溶解度 |
Practically insoluble in water |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ピネン(pinene)は、化学式がC10H16で表される有機化合物で、モノテルペンの1種。名称はマツ (pine) に由来し、その名の通り松脂や松精油の主成分であるほか、多くの針葉樹に含まれ特有の香りのもととなる。香料や医薬品の原料となる。
ピネンは六員環と四員環からなる炭化水素で、二重結合の位置が異なるα-ピネンとβ-ピネンの2つの構造異性体が存在する。さらにそれぞれが2種の鏡像異性体をもつことから、ピネンには合計4種の異性体が存在する。
目次
- 1 性質
- 2 生合成
- 3 異性体
- 4 用途
- 5 参考文献
- 6 脚注
性質
各異性体ともに分子量 136.24。常温常圧では無色の液体で特有の香りをもつ。水に不溶であるが、酢酸・エタノール・アセトンには任意に混和する。
生合成
α体、β体ともにゲラニル二リン酸を出発原料とし、リナロイル二リン酸の環化を経て骨格が完成する。最終段階で脱離するプロトンの位置によってα体とβ体に分かれる。
異性体
構造式
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透視図
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X
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X
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球棒モデル
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X
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X
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名称
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(1R)-(+)-α-ピネン
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(1S)-(−)-α-ピネン
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(1R)-(+)-β-ピネン
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(1S)-(−)-β-ピネン
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CAS番号
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[7785-70-8]
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[7785-26-4]
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[19902-08-0]
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[18172-67-3]
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α-ピネン
融点 -57 ℃、沸点155-156 ℃、比重 0.8584-0.8600。α-ピネンの四員環は反応性が高く、特に酸性条件ではワーグナー・メーヤワイン転位が容易に進行する。希硫酸または無水酢酸条件ではテルピネオール誘導体やテルピンが、塩酸条件ではボルネオールまたはリモネンの骨格をもつ塩化物が生成する。ヨウ素や三塩化リンでは芳香化が起こりシメンとなる[3]。
α-ピネン(
1)を原料とする誘導体の例。テルピネオール(
2-4)、テルピン(
5)、ボルネオール(
6b・6c)、リモネン(
7)、シメン(
10)など多様な骨格へと変換される。
β-ピネン
融点 -60 ℃、沸点164 ℃、比重 0.8740。ローズマリーやパセリ、バジル、イノンド、バラなどに含まれている。
用途
ピネンを適当な触媒を用いて酸化することで、様々な医薬品や香料などが成分が生産される。最も簡単な酸化生成物はベルベノンであり、空気酸化によっても生成するが、酢酸鉛(IV)を触媒として使うこともある [4]。
α-ピネンとボランから得られるイソピノカンフェニルボラン類は、有機合成分野において不斉還元剤として用いられる。
参考文献
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ウィキメディア・コモンズには、ピネンに関連するカテゴリがあります。 |
- 物性値は、市岡ほか 『山地森林の快適性(第1報)-測定方法の検討を中心に-』 三重県保健環境研究所(環境部門)年報第1号(通巻第20号)、2000年[2] によった。
脚注
- ^ a b c Record of alpha-Pinen 労働安全衛生研究所(IFA)(英語版)発行のGESTIS物質データベース
- ^ Record of beta-Pinen 労働安全衛生研究所(IFA)(英語版)発行のGESTIS物質データベース
- ^ Richter, G. H. (1945) Textbook of Organic Chemistry, 2nd ed., John Wiley & Sons., New York, PP 663-666.
- ^ Organic Syntheses, Coll. Vol. 9, p.745 (1998); Vol. 72, p.57 (1995). [1]
テルペンとテルペノイド |
ヘミテルペン |
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モノテルペン |
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セスキテルペン |
- ファルネシル二リン酸
- アルテミシニン
- ビサボロール
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ジテルペン |
- ゲラニルゲラニル二リン酸
- レチノール
- レチナール
- フィトール
- パクリタキセル
- ホルスコリン
- アフィジコリン
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トリテルペン |
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テトラテルペン |
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- 主要な生体物質
- 炭水化物
- アルコール
- 糖タンパク質
- 配糖体
- 脂質
- エイコサノイド
- 脂肪酸/脂肪酸の代謝中間体
- リン脂質
- スフィンゴ脂質
- ステロイド
- 核酸
- 核酸塩基
- ヌクレオチド代謝中間体
- タンパク質
- タンパク質を構成するアミノ酸/アミノ酸の代謝中間体
- テトラピロール
- ヘムの代謝中間体
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Japanese Journal
- 森林大気中イソプレンと関連物質のオンサイト多成分分析
- 戸田 敬,廣田 和敏,徳永 航,須田 大作,具志堅 洋介,大平 慎一
- 分析化学 = Japan analyst 60(6), 489-498, 2011-06-05
- … これに対し同じ植物起源のα-ピネンは夜間濃度のほうが高く,α-ピネン放出の常時性と日中の高い分解速度に起因していると考えられる.このほかホルムアルデヒド,オゾン,窒素酸化物,有機・無機酸についても測定を行い,日内変化の追跡や季節変動の考察を行った.また,発生・消失のモデル構築を行い,日内変動よりイソプレンやα-ピネンの森林内発生のシミュレーシ …
- NAID 10029140396
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