- 英
- Pascal principle
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/22 15:18:25」(JST)
[Wiki ja表示]
流体のはいった容器の一点に力を及ぼすと容器表面のすべての単位面積の面素に、垂直で同じ大きさの内部の力(接触力)が発生する。この図では重力の影響は無視している。
パスカルの原理(パスカルのげんり、英語:Pascal's principle)は、ブレーズ・パスカルによる「密閉容器中の流体は、その容器の形に関係なく、ある一点に受けた単位面積当りの圧力[1]をそのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。」[出典 1]という流体静力学における基本原理である。
目次
- 1 応用例
- 2 現代的な表現
- 3 導出
- 4 脚注
- 5 出典
応用例
ピストンの面積を変えると増力するのにつかうことができる。
右図のような水を注いでピストンで密閉したU字型の管を用意する。一方のピストンに押し下げるように力を加えると、もう一方のピストンに押し上げるような力が発生する。このとき、水がピストンを押す力とピストンの面積の比は二つのピストンにおいて等しいことが、パスカルの原理から導かれる。
これにより、ピストンにかかる力の大きさは面積に比例することがわかる。たとえば、2つのピストンの面積比を2:1にすると、大きいピストンには小さいピストンの2倍の重量の物体をおいて吊り合わせることができる。
この考えを用いて以下のような力を増幅する装置が得られる。
- 油圧ジャッキ - ジャッキの一種。大きな持ち上げ力を得られる。
- 油圧ブレーキ - 自動車のブレーキの一種。ブレーキペダルを踏む力を増幅して車輪の回転を止める。
現代的な表現
パスカルの原理は
静止流体において微小な面で互いに接触した二つの微小な流体要素A、Bを考える。流体要素Aが接触面を介して流体要素Bから受ける力(接触力)は、
- 方向は接触面に垂直であり、
- 大きさは接触面の方向によらず、面積に比例する。
と表現できる。[出典 2]
これを式で表すと
- : 接触力ベクトル
- : 比例定数
- : 接触面の面積
- : 接触面の単位法ベクトル(A→Bの向き)
となる。負符号は流体要素Aを圧縮する方向を正にとったからである。この比例定数 が圧力である。定義により圧力の大きさは面の方向には依存しないが、位置に依存して変化してもよい。
静水圧平衡
体積 の微小体積要素 に、表面 を介して作用する全ての接触力の合力 は、ガウスの定理を援用して
であることが導かれる。[出典 2] よって、流体の密度を、流体にはたらく単位質量あたりの外力を とすると、静止流体における力の釣り合い(静水圧平衡)
が得られる。これが流体静力学における基本方程式である。
外力が無視できる場合、 であるから圧力は一定、すなわち、
- 流体が容器を押す力の単位面積あたりの値は場所によらず等しいこと、および、
- 流体の一点に印加された力は流体によって伝播され遠方の地点へと伝わること、
というオリジナルのパスカルの原理の内容が再現される。
導出
力は釣合うのでベクトルを順に繋ぐと閉じる(力の三角形A'B'C')。力は側面に垂直なので、90度回転した力の三角形の各辺は側面に平行。よって、力の三角形は△ABCに相似となる。
パスカルの原理は流体の定義「静止状態においてせん断応力が発生しない連続体」(=流動性)から導出できる。
せん断応力が発生しないと静止流体の任意の断面に作用する力は常に面に垂直である。そして単位面積当たりの力の大きさは面の方向によらないことが以下のように導かれる。
静止した流体から小さい三角柱を切り出すと、その表面に働く圧力の総和は0になるはずである。2つの端面ABCおよび DEFに働く力は互いに消し合い、三つの側面に働く力は、端面に平行な平面にある力の三角形を構成する。この力の三角形は、三角形ABCと相似になるから、力の大きさは側面の面積に比例し、したがって単位面積あたりの力である圧力は、どの面でも同じ大きさを持つことになる。[出典 3]
このように、パスカルの原理、さらには「圧力」という概念は、流体の基本的な特徴である「流動性」から導出される。
脚注
- ^ ここでの「圧力」は容器に垂直で圧縮する向きの「力」という意味であり、本来の「圧力」(単位面積当たりの力の法線成分)ではない。
出典
- ^ パスカル「液体の平衡及び空気の質量の測定についての論述」の紹介 http://www.kanazawa-it.ac.jp/dawn/166301.html
- ^ a b 恒藤敏彦 『弾性体と流体力学』岩波書店、1983年9月14日発行、ISBN 4000076485
- ^ 谷一郎『流れ学』岩波全書、1967年5月30日発行、ISBN 4000214314
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 水谷編集長の宇宙工房(第22回)水中を浮き沈みするおもちゃで パスカルの原理を実感しよう
- Yチューブを用いた左右上腕同時血圧測定法の妥当性の検討
- 村上 裕亮,古川 勉寛,花野 雄司,星 建二郎,天野 優子,半田 健壽,藤原 孝之
- 日本理学療法学術大会 2009(0), A4P1060-A4P1060, 2010
- … があり高血圧境界域の場合では左右によって診断が変わる場合があるため,個人の血圧左右差を十分認識したうえで血圧測定することが望ましい.<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究の装置は,パスカルの原理で左右同時に測定可能である.しかし,検査者が2名必要であり,測定技能によって差が生じることが懸念された.しかし今回,経験1年の理学療法士と作業療法士でも検査者間に有意な誤差は認められなかった …
- NAID 130004581808
- 1M-17 浮沈子を教材として生かす工夫 : 水流入型浮沈子と密閉型浮沈子について(一般研究発表(口頭発表),日本理科教育学会第58回全国大会)
Related Links
- 油圧ジャッキ・油圧爪付ジャッキならイーグルへ 単品からのイージーオーダー・カスタムメイド品を短納期でお届けします | EAGLE 株式会社今野製作所 ... l 油圧ジャッキはパスカルの原理を応用した道具です。「水のテコ」と ...
- パスカルの原理 ・密閉された容器の中に液体を入れ、ピストンの上面にW(Kg) の重さの物体を置いた時、ピストンの下面及び容器の壁面 底面には等しくPという圧力が発生する。 液体は圧縮されても体積自体は減らないので ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- principle、rationale、philosophy、fundamentals
- 関
- 基本、信条、理論的根拠、原則